シュタイナー教育4
出典: Jinkawiki
2012年2月3日 (金) 00:38の版
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概要
シュタイナー教育(Waldorf education)とはドイツの教育者ルドルフ・シュタイナーが提唱及び実践した教育思想のことである。1919年にシュトゥットガルトにて開校した自由学校から始まったとされる。主に子どもの自主性を尊重した教育手法。
シュタイナー教育を小中高一貫教育として実践するのがシュタイナー学校である。世界各国のシュタイナー学校では基本理念を共有してはいるが、その国の文化や民族性に合った形でカリキュラムを組むことが要求されている。
シュタイナー教育の理念・思想
4つの構成体
人間は以下の4つの構成体によって成り立っていると考えられている。
・物質体……0歳に生まれる。体そのもので、引力によって上から下に落ちる。
・生命体……7歳ごろに生まれる。引力に逆らって下から上に伸びたり、起き上がったり、成長や繁殖したりする力。
・感情体……14歳ごろに生まれる。快感および不快感といった感情の結びついた動き。
・自我……21歳ごろに生まれる。自分で考えたり、会話したりなど、「私」を持っていること。
シュタイナー教育では以上の4つを前提として実現される。
七年周期説 人間は7年を1つの周期とし、その各々に特徴が見られると考えられている。
・第1七年期……0~7歳
この7年間ではしっかりと体を動かし、肉体を作っていくことが課題である。またこの時期は周囲の大人などの影響を受けやすいので、大人は模倣されることを自覚して行動する必要がある。さらにきれいなものを見せたり、美味しいものを食べさせるなど子どもに良い環境を与えることも大切である。
・第2七年期……7~14歳
この時期には芸術的な感性・感情が形成されるので、様々な芸術的刺激を与えることが重要。ただし、あくまでも芸術を体験として吸収させることが大事で、世の中は美であふれていることを目指す。
・第3七年期……14~21歳
この時期によって思考力、判断力などが形成されてくる。つまり自我がはっきりしてくる時期である。大人はより鮮明な世界観を持って子どもと接することが大切。世の中の真実をはっきり理解させることを目指す。
4つの気質 人間が生まれながらにして持っている個性のこと。上記で説明した「4つの構成体」のうちの優劣を見ることによって子どもの気質を4つのタイプに分ける。
・胆汁質
特徴……非常に生き生きとして活発。周囲との衝突が激しい。物事に明瞭な概念をつけることを好む。
対策……子どもの行うことに興味・関心を持つ。高難度の課題を与えることで自信過剰になるのを防ぐことができる。
・憂鬱質
特徴……冷静で内向的。物事を悲観的に考えやすい。一度始めたものは長く続ける。
対策……大人が子どもに興味を持ち、様々なことに気付いてあげることが重要。
・多血質
特徴……一つのことにじっくり取り組むことが出来ず、外部からの刺激を受けやすい。社交的で、広範囲に渡って関心を抱く。
対策……せかせかした一面を持つので、大人がそれを導いてやる必要がある。
シュタイナー教育の実践・手法
ここでは具体的なシュタイナー教育の実践・手法について例を挙げていく。
・子どもが安心できるような環境を作り出すべく、シュタイナー学校では淡いピンク色を基調とした学校づくりを行っている。先生もピンク色を元にエプロンやスカートを身につける。
・教師による自由性および自主性が問われる。教科書をそのまま使用するのではなく、時代や地域などに会わせた授業を行い、教師自身が授業をその都度創造していくことが目指される。そのため、教師は授業の準備に多くの時間を費やすことが特徴である。
・幼稚園では年齢を問わないクラス編成、小学校以上は担任教師を変えずに8年間続け、12年制の一貫した教育を行っている。
・言葉(音楽)を身体で表すといったオイリュトミーの授業や、フォルメンを積極的に取り入れている。
・「テスト」という概念そのものが一切存在しない。
・その日のはじめに2時間程度設け、その時間に数週間続けて同じ学科を学習するといったエポック授業を取り入ている。
・基本的に鉛筆ではなくクレヨンを使う。
シュタイナー教育への批判
日本ではシュタイナー教育に対する批判を聞くことは少ない。むしろその教育手法に感銘を受けたとする体験談などが出版されている。しかし、ドイツではシュタイナー教育を批判的にとらえた本が数々存在する。その一つとして、ドイツ人で3人の子どもをシュタイナー学校に入学させた母親の例がある。
(以下「保険毎日新聞 2003年8月28日号掲載」を抜粋)
「僕たちをひどい学校へどうして入れたのだ!」と子供たちから罵倒されるまでになり、母親の期待は見事に裏切られた。この母親は子供たちをシュタイナー学校に入れるまでは、既成の学校に幻滅したのでシュタイナー学校に大いなる希望を抱いていた。成績をつけることもなく、落第もなく、情緒教育で子供たちの個性を伸ばし、両親にとっても安心できるはずの学校であった。
だが子供は怒った。「シュタイナー学校は本当の勉強ができる環境ではない」と。シュタイナー学校ではなによりも、普通の教科はさておき、オイリトミーという、「意識の芸術」が重視される。創設者ルドルフ・シュタイナー(1862-1925)の言葉によれば、これは体操でも演技でも発声練習でもなく(実際はこれらの混合)、言葉と音が持っている霊的かつ精神的な空間上の動きによって、自分と世界とのあいだにある調和を身体で表現する、つまり一種のパーフォーマンスにほかならない。これを毎日、練習する。子供たちは家に帰っても練習しなければならない。
シュタイナー学校から“脱退した”親によると、この学校では常に「シュタイナー教育」のことを考えさせられ、少しでも疑問を呈したり批判したりすると非難されるので、交友関係もシュタイナー学校に通う子供たちの親に限られてきた。それだけでなく、テレビはだめ、ウオークマンまで禁止。親は洋服についてまで指示を受け、家庭生活のすみずみまで監視されたというから、一体、シュタイナーとは自由な教育どころか、“不自由な全体主義思想”ではないかとも思ったのだそうだ。
(以上)
この記事から、シュタイナー教育に対する痛烈な批判を感じ取ることができる。自由な教育を掲げているシュタイナー教育が、結果的に保護者からは不自由であると感じられている。こういった課題をどう解決していくかが今後のポイントになるだろう。
参考文献
大辞泉 小学館
All About シュタイナー教育の理念 http://allabout.co.jp/gm/gc/184257/
All About シュタイナーの具体的手法 http://allabout.co.jp/gm/gc/184258/
多様な教育を推進するためのネットワーク http://altjp.net/
シュタイナー教育という幻想(上) 保険毎日新聞 2003年8月28日号掲載 http://www.tkumagai.de/Steiner%201.htm
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