国会の権限
出典: Jinkawiki
2012年2月3日 (金) 23:43の版
==国会の権限==
国会とは、日本国憲法の定める国の議会である。国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である。国会は、国民の意志を反映しやすい衆議院と、安定した審議の継続を行う衆議院の二院制をとっている。国会は、「立法機関」であるが、その機能は、立法でだけではない。主に11の国会の権限がある。
一つめは、憲法改正の発議権である。憲法改正については、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が発議し、国民の提案してその承認を得なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とするため、憲法改正の最終的決定権者は主権を有する国民であるが、改正の発議は国会によってなされる。この場合、憲法改正の発議の原案(憲法改正原案)について国会において最後の可決をもって、国会が憲法の決める憲法改正の発議をし、国民に提案したものとされる。憲法改正の発議については、衆議院と参議院では権限上対等であり、衆議院の優越は認められていない。
二つめは、法律案の議決権である。法律案の議決は、衆議院・参議院の両院一致の議決で法律を制定することができる。法律案は、議員が発議できるのは、国会が「唯一の立法委機関」であることから当然であるが、議員が法律案を発議するのには、衆議院において議員20人以上、参議院において議員10人以上(予算を伴う法律案の場合には、衆議院において50人以上、参議院において20人以上)の賛成を必要とする。また、内閣も法律案を提出することができる。 国会の衆議院・参議院のいずれかに提出又は発議された法律案は、両院で可決したとき法律となる。ただし、衆議院の再議決の場合・参議院の緊急集会で法律が制定される場合・特定の地方公共団体のみに適応される特別法廷の場合を除いて可決されるのである。 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした場合は、出席議員の3分の2以上の多数で衆議院で再び可決し、参議院の意に反して法律を成立させることができる。衆議院・参議院の両院の意思が合致しない場合、国会法の定めるところにより、衆議院が、両院議会を開くことを求め、両者の妥協を図ることができる。なお、参議院が衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に議決は、参議院が否決したものとみなすことができる。
三つめは予算の議決権である。予算については、憲法は国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならず、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」とされており、予算を作成して国会に提出することは内閣の再現又は事務とされている。議員に予算発議権はない。内閣によって予算が作成され、衆議院に先議権があるため、先に衆議院が提出しなければならない。提出された予算は、両議院で可決されたときに成立する。しかし、参議院が衆議院と異なった議決をした場合には、国会で定めるところにより両院協議議院と異なった議決をした場合には、国会法で定めるところにより両議会を開いて妥協が図らなければならない。両院協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないときは、衆議院の国会の議決とされ衆議院の予算だけで予算は成立する。なお、予算が成立しなかった場合において最小限度の必要経費にあてるため、暫定予算の制度が認められているが、この暫定予算についても、もちろん国会の議決が必要である。国会の予算の議決権は、予算を可決又は否決することの権限のほか、増額、減額いずれの修正をなし得る権限を含むと解される。政府は、「国会の予算修正については、それがどの範囲で行い得るかは、内閣の予算修正案権と国会の審議権の調整の問題であり、憲法の規定からみて、国会の予算修正案権は、内閣の予算提案権をそこなわない範囲において可能と考える」(昭和52年2月23日政府統一見解)としている。
四つめは条約の承認権である。条約の承認権は内閣にある。しかし、条約は、国会間の合意であるとともに、国内法的効力を持つものが多く、時として国民を拘束する命令や権利・義務に関する法規範を内容とすることがあり、また、国家に重大な影響を及ぼすものであることもあり、内閣の意思だけで条約を成立せしめることは問題であり、国会との共同責任で条約を成立せしめることとし、締結の前又は場合によっては後に国会の承認を経なければならないこととした。すなわち、内閣が条約を締結するときは、国会の承諾が必要になるということだ。条約についての国会の承認手続きは、衆議院先議の点を除き予算の場合と同じである。なお、国会に条約の修正権があるかは問題であるが、可分的性質の条約について一部不承認の意味の修正を加えることはできるが、条約は、相手国との合意があって初めて成立するものなので、国会の修正は、相手国の意思を拘束するものではないので、本来的に国会に修正権はないと解する説が有力である。
五つめは内閣総理大臣の指名権である。内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名される。この場合、他のすべての案件に先だって行わなければならない。内閣総理大臣の任命は、天皇によって行われるが実質的には、国会の議決による指名で決定される。衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合には、国会法の定めるところにより、両院協議会が開かれなければならない。それでも両議院の意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後国会休会中の期間を除いて10日以内に参議院が指名の議決をしないときは、衆議院の議決が国会の議決とされ、衆議院の議決のみで指名され、衆議院の参議院に対する権限上の優越が認められている。なお、指名の手続きは、両議院の規則で、それぞれ記名投票を行い、投票数の過半数を得たものを指名された者とする旨定めている。
六つめは皇室財産授受の議決権である。皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け若しくは贈与することは、国会の議決に基づかなくてはならない。
七つめは財産権に関する議決権である。憲法は、国の財産を処理する権限は、国会の議決に基づいてこれを行使しなければならない旨定めている。これは、財政国会議決主義の基本原則を宣言したものであるが、この場合の「国会の議決」とは、具体的には法律と予算を指すものと解されている。
八つは予備費支出の承諾権である。予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。予備費は、予算のうちに設けられるものであり、一応国会の議決を経たものであるが、具体的に支出された場合は、後で国会の承諾を必要とする。
九つめは決算の審査権である。国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。提出は各院別々になされ、支出がその予算の目的に従って、適法かつ適切に行われたかについて審査される。
十番めは、裁判官弾劾裁判所の設置権である。裁判官は、裁判において心身の故障のための職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によるのでなければ罷免されないが公の弾劾機関として、国会に、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するために裁判官裁判弾劾所と、裁判官の罷免の訴追を行う機関として裁判官訴追委員会が設置されている。
十一番めは法律に基づく機能である。国会は、その他、諸法で次のような機能が認められている。警察法による緊急事態の布告の承認、災害緊急事態の布告の承認、自衛隊の防衛出動等についての承認、自衛隊の実地する後方地域支援等の対応措置の承認、国の地方行政機関の承認、日本放送協会の予算の承認が認められている。
==参考文献・引用文献==
『新・国会辞典』浅野一郎・河野久 株式会社有斐闇 第二版2008年
『国会入門』浅野一郎 信山社出版株式会社 2003年
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