フェミニズム

出典: Jinkawiki

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最新版

■ 概要

従来の政治制度や政治理論が前提としている「公」と「私」の二分法に、別の角度から鋭い批判を加えたものがフェミニズムだ。 リベラル・デモクラシーの政治理論においては、自由で平等な権利をもつ個人が自己利益を追求する領域が私的領域であり、各人に共通の政治的意思決定を行う領域が公的領域であると考え公私が区分されてきたが、フェミニズムはこのような議論にはある欺瞞が隠されていると見る。自由で平等な権利の主体である個人とは、実際には成人(白人)男性のことを指すにすぎず、そこからはすべての女性や幼い子供は巧妙に排除されているからだ。フェミニズムはすべての人間がそこで生まれ、養育される家の中の人間関係の重要性に着目し、家の中における活動(私)と家の外における活動(公)、すなわち経済・社会・政治の場において展開する活動と厳然と区別する発想こそが、西洋社会において長期にわたり女性を抑圧していた。これがフェミニズムが問題視する男性中心社会における「公」と「私」の二元論である。


詳細

たとえば、日本でもよく耳にする議論であるが、夫は外で働き一家の大黒柱として収入得る一方、妻は主婦として家で家事・育児に専念すべきであるといった性別役割分業の考えが存在する。これはフェミニズムの議論者からは、男性による女性の抑圧典型例であるとされる。 男性と女性との自然的な相違をことさらに強調し(「女性は子供を産むという大事な仕事がある」「女性には母性本能がある」)女性の社会進出に結果として消極ていな姿勢を示すケースはいまもしばしば見られる。さらに、表向き女性の社会進出に賛同しても、一切の家事負担を女性に担わせたり、乳幼児や介護の必要な家族を安心して託せる施設等の設備に無関心であるという社会の風潮も、間接的に女性の社会活動を妨げていると言えよう。

アメリカのフェミニズム理論家の間で大きな論争になったのはフェミニズムが目指すのは「女性が男性と平等になる社会の実現」かそれとも「女性が男性との違いを発揮できる社会の実現」かというものがあった。前者はもともとフェミニズムは平等な法的権利を追求する運動として出発した歴史的経緯をもつ。これをさらに推し進めて、性別の違いによる一切の差別のない状態を実現しようとする考えである。後者は女性にいわば「男性並み」になることを強いているにすぎず、現存するリベラル・デモクラシー体勢がもつ男性支配の構造に無自覚であるという批判が投じられている。男性のみで築き上げられてきた政治や社会の根本から見直すべきだ、という考えを出したのが後者だ。 こういった論争に対し、大さんの波と呼べるような議論も登場する。それは、差異や支配の構造は、男性と女性との間にのみ存在するわけではなく、女性と女性の間にも存在することに注目する議論である。そこでは、同じく女性とは言っても、社会的地位、経済的状態、人種や民族、文化や宗教、または国の違いを超えて「女性」というカテゴリーに一括できるのか、という問いかけがなされる。また異性愛者と同性愛者との間にも、男女のあいだ以上に深刻な抑圧の構造が存在することも指摘されるようになった、さらには、「女性」というジェンダー・アイデンンティティの自明性が大胆n相対化され、女性であるという一点だけで共通の利害をもつわけではないという主張すら展開される。 一方フェミニズムの主張ではいくつかの政策として実現してきている。

アメリカでは1960年代末から70年代にかけて、社会的に差別されてきた者の地位向上のために、雇用や教育においての一定の優先枠を設けるなどのアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)が広がった。この措置に関しては、白人男性への「逆差別」であるといった批判も出され、90年代後半にはカリフォルニア州のように廃止する州も出てきたが、空くナウとも女性の職場進出に果たした役割は大きかったと言われている。またノルウェーを先駆として北欧諸国では80年代に男女平等のためにクオータ制が広がった。さらにフランスでは2000年に、選挙に際してすべての政党が男女同数の候補者を立てることを義務付ける法律が成立した。そして多くの精神国では、職場や学校におけるセクシャル・ハラスメントや家庭内での暴力を取り締まるための法律や規則な行われてきた。

日本の場合も1997年に改正された男女雇用機会均等法において、ポジティブ・アクション促進規定が挿入されたものの、一般に、積極的な不平等是正のための施策の導入に関しては消極的である。その一方で、内閣府に設置された男女共同参画局が中心となって、女性の社会進出促進のためのキャンペーンや、女性に対する一切の暴力を防止するための施策が講じられている。


■ 参考文献

政治学 著者:久米郁夫・川出良枝・古城佳子・田中愛治・真渕勝 出版社:株式会社有斐閣 出版日:2003年


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