北欧の福祉国家
出典: Jinkawiki
2012年12月17日 (月) 20:24の版
学校教育
北欧諸国は、教育に力を入れている。基本的に高等教育も含めて全ての教育費は無料である。 学校教育費 北欧4ヶ国は、いずれも公的負担の割合が95%を上回っており、9ヶ国中ではトップから4位までを独占している。(ノルウェーは98.5%、フィンランドは98.4%、スウェーデンは97.0%、デンマークは95.8%)。つまり、北欧諸国では、学校教育費のほとんどが公費で賄われている。 フィンランドの教育制度 ORCDが実施した学習到達度テスト(PISA)で、フィンランドは世界一の評価を獲得した。PISAとは、各国の15歳を対象とした国際テストで、2000年から3年毎に実施されている。その国際テストで、フィンランドは常に上位を独占している。一方、日本は順位が低落傾向にある。フィンランドの小学校は7歳から始まる。6歳から始めるべきだという意見もあるが、できるだけ長く子供の時間を過ごすほうが、子供の発育を促す、という研究結果が出されている事から、7歳から始めている、と言われている。教育費はすべて無料(高校以上の教育も含めて)であり、これにより、すべての子供に均等な教育を受ける機会を保証している。また、9年間の義務教育期間は、給食費もすべて無料、教科書も支給される。中学卒業後は、高校へ進学するか、職業学校へ進学するかを選択する。そして、高校卒業後は、進学検定試験を受検しなければならず、その成績と入試の成績で、大学または職業大学校へ進学する事ができる。大学はすべて国立で20校ある。職業大学校は公立である。学生は同じ自治体に住んでいても親から独立して離れて暮らすのが一般的で、住居手当、勉学手当てを国から受ける事ができる。生涯学習も非常に盛んで、誰でも働きながら、または引退後に学ぶことが出来る。 スウェーデンの大学制度 1980年代後半からスウェーデンの大学教育は大幅に拡張され、学生数は90年に比べて倍増した。そして、学生の中には、30代・40代の社会人とも思える人が多数混じっている。大学入学には、3種類のルートがある。 ⅰ)高校を卒業後すぐに入学するルート(日本での通常ルート) ⅱ)高校卒業後、一旦就職して、それから入学するルート。 ⅲ)高校の成績が悪かったり、高校の学習と異なる分野へ進学したいという場合、市の成人高校で学習し直してから入学するルート。
2005年の時点で30歳を超える新入生が17%以上を占めている。スウェーデンの大学では、職業訓練的な要素が重視される。卒業生は取得した「専門分野別の学位」に基づいて就職活動を行う。雇う側の企業も彼らが大学で何を学び、どのような技能を身につけたかを重視して採用する。(大学の勉学に用途就職分野とが関連しない日本とは極めて対照的である)。卒業生は即戦力であり、企業にとっては社内研修が減り、コストダウンにつながる。スウェーデンの学部教育とは、日本の学部課程と修士課程の両方を指す。この学部教育の最初の3年間が「学士号」相当部分、後の部分が「修士号」相当部分、である。日本で行われている2年間の教養期間は存在しない。就職活動において、出身大学による格差はそれほどない。ただし、ストックホルム商科大学は、例外である。この大学は、経営学と経済学に特化したエリート大学であり、卒業生のほとんどは、金融機関や監査法人、コンサルタントなどの大手企業に就職する。そのため、入試の競争率も高い。
育児支援制度
ノルウェーによる育児支援制度 2007年現在、ノルウェーで認められている育児休暇期間は最大で54週間である。この出産前の給与の80%が支給される。(もし、100%の支給を求めた場合には、休暇期間は44週間に短縮される)。この休暇期間中の給与は、国民保険から給付され、企業の負担はほとんどない。代理要員を採用する必要がある場合、その費用の大半は国が負担する。 ノルウェーには6000以上のデイケアセンター(保育施設)があり、1~5歳の子供の約80%をカバーしている。政府の目標は、100%のカバーだが、一方で、デイケアセンターを使用せずに在宅で育児を行った場合の補助金制度を充実させている。1~3歳の子供をデイケアセンターに預けずに在宅で育てる場合は、最大で年間約79万円強が支給されている。給付額は利用時間に応じて決まっており、デイケアを週32時間利用した場合でも、年約16万円弱が支給される。ノルウェーの合計特殊出生率が高い理由は、充実した育児休暇制度だけではない。1980年代には出生率は落ち込み、81~85年の合計特殊出生率は1.68であった。当時の有給育児休暇は、母親の産前・産後に18週間で、父親と母親がシェアすることも認められていたが、休暇を取得する父親は殆どいなかった。 それ以降、政府は毎年のように休暇機関を延長し続け、89年には52週間(給与全額支給の場合には42週間)にまで拡大。また、93年には、そのうち4週間を父親に割り当て、それを取得しなければ権利が消滅する新制度(パパクオータ)を作った。 このパパクオータの期間は、2005年には5週間に、2006年には6週間に延長された。休暇の消滅という半ば強制的な制度としたために、現在では 90%以上の父親がパパクオータを取得している。(数年前に、現職の財務大臣が、パパクオータを使って4週間の育児休暇をとった事も普及に一役買った、と言われている)。こうした政府の努力により、ノルウェーの合計特殊出生率は、2006年には1.88まで回復した。
高齢者対策
フィンランドの高齢化率はEU諸国の中でも、もっとも速いスピードで進んでおり、2000年に15%、2010年に約22%2030年には25%に達すると予測されている。高齢化率の上昇はフィンランドにとっても、大きな社会問題のひとつであり、女性の平均寿命については80歳を越えている。フィンランドの高齢者政策の目標は、1982年の国連の勧告を基盤とし、高齢者が幸せな生活を送れるようにすることにある。具体的は高齢者が出来るかぎり自立して暮らし、良いサービスを受けて高齢生活を送れるようにすることで、そのために、高齢者の経済的自立、自己決定権、社会的統合と公正さを保障することが大切と考えられている。 高齢者政策の中で最も重要視されているのは、所得保障と社会サービスである。国は法律を制定し、年金、給付などの所得保障を行う。一方、地方自治体に責任があり、それぞれの自治体は、財政と政策の優先順序に応じて、サービスの実施方法とその規模について決定する。フィンランドは、すべての市民に年金が保障されている。一定の労働生活にあった人は労働年金(厚生年金)を受け取るが、家庭外で労働していなくも、国民年金は最低所得保障としてすべての市民が受け取る権利がある。
高齢者のケア(社会・保健サービス)に関する特別法は存在せず、1982年制定の社会福祉法がすべてのサービスを包括している。また国民健康法、特別医療法が、自治体住民の保健ケアを保障している。ケアは原則として税金で行われており、サービスの内容と所得によって料金もかかることもある。高齢者ケアについての政策は、1980年代から施設から在宅へとの転換が強力に行われ、この傾向は1990年代の地方分権後により進展した。