アファーマティブ・アクション4
出典: Jinkawiki
2013年1月28日 (月) 10:21の版
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概要
ここではアメリカにおけるアファーマティブ・アクションについて扱う。 人種、民族などの差別を廃止するための積極的行動として、より平等な社会の実現のための政策である。 大学入試や雇用などの機会において、過去に差別を受けてきた人々を優遇(肯定的な差別ととらえられてる)することで将来的な彼らの生活の向上を目指した。 つまり、人種や民族のマイノリティに対しても、「機会の平等」ではなく「結果の平等」が導かれるような社会の実現によって、差別をなくすことを目指した政策である。 そのため、一方では彼らに対する優遇は、個人の業績を軽視していると批判されている。 したがってアファーマティブ・アクションは差別をなくすために、本来評価されるべき人が差別されることになるので、「逆差別」を引き起こすという問題が付きまとうことになる。
背景
人種、民族による差別によって生じた教育格差を是正するために実施された。 差別を受けていたマイノリティ(主に黒人)は経済的、社会的にも低い状態なりやすいため、恵まれた環境で育った人たち(主に白人)の間には教育機会における不平等がある。 そのため黒人の平均の学力が白人と比べて低いために進学率が低くなる。すると、その彼らの子孫たちもまた経済的、社会的にも低い状態になりやすくなってしまう。 この連鎖がなくなれば、その結果として将来的に人種問題がなくなると考えられた。 そこで、恵まれない環境にある黒人たちにハンディを与えることで、教育機会の差別を保証する。この保証により彼らは裕福になりやすくなり、そこで白人同様に恵まれた環境を手に入れることができるようになる。そのようになれば自然と黒人の地位が上がり、人種問題がなくなることを期待され、アファーマティブ・アクションは導入された。
賛否
アファーマティブ・アクションはマイノリティの社会進出に成果を上げる一方で、多くの問題が提起された。
賛成の立場
上の背景でもあげられたように、アファーマティブ・アクションは差別されてきた人々を優遇することで、彼らの社会的地位を向上させ、同時に社会構造の問題にもなっている人種や民族の差別の消滅が期待できる。 また、人種や信条における多様性への配慮や相互交流が必要であることは明らかである。 アファーマティブ・アクションが「逆差別」を招く一部に対する優遇政策であるという批判に対して、公平な社会のために、人種、民族などのマイノリティたちが過去において差別され抑圧されたことへの補償であるという見解がある。 1996年、ミシガン大学では入学における人種利用が認められた。
反対の立場
アファーマティブ・アクションによる「逆差別」は不当なものであり、特に若者にとっては重大な問題である。 この問題社会に広く広めたものとしてバッキ訴訟がある。バッキ訴訟とは白人男性であるアラン・バッキは学業成績やその他のスコアが高いにもかかわらず、カリフォルニア大学デービス校医学大学院の入学を拒否されたため、選抜で差別が行われているとして同校を訴えたケースである。そこでアファーマティブ・アクションによって実施されていたマイノリティを優遇した特別の入学定員枠が「逆差別」として主な問題に取り上げられた。 連邦最高裁の判決では、マイノリティの人種のための特別の入学枠は違憲でありバッキの入学を認めた。しかし、もう一方で将来のマイノリティの人種が考慮された特別の入学枠の禁止は認められなかった。そのために、アファーマティブ・アクションによる「逆差別」に対する批判や議論はその後も継続して行われた。 1995年のカリフォルニア大学に始まり、ジョージア大学などでも入学における人種利用の廃止が続いている。 またマイノリティ側にもこの優遇されるという「逆差別」が存在する以上は、真の公平な社会の実現とは言えないため、効果はないと考える人々も多い。
参考文献
ポジティブ・アクションの可能性 田村哲樹・金井篤子 ナカニシヤ出版 2007
さまよえるアメリカの教育改革 国際貿易投資研究所 2005
子供の能力と教育評価 東洋 東京大学出版会 2001
アメリカの教育 喜多村和之 弘文堂 1992
国際教育論 太田和敬 文教大学人間科学部 2012
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