イスラーム

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2013年8月3日 (土) 17:49の版

イスラームとは

イスラームは、キリスト教や仏教でいうところの宗教の枠には収まらず、政治・経済・法・社会・生活習慣・文化など、人間生活のほとんど全てを規定するものである。イスラームはムハンマド(マホメット)自身がイエスやブッダと異なり政治家・軍人・商人などの役目をも果たしていたように、その起源からして政教一元であり、精神的なものにとどまることはなかった。イスラムではなくイスラームとするのは原語により近い表現だからであるが、これはそれほど重要ではない。ただ、専門家の間ではイスラームという表現が一般的になっている。イスラームということばの原義は、神に従うという意味である。イスラームを信仰する人々のことをムスリムという。これもイスラム教徒としてしまうと宗教的側面が強調されすぎるため、用いられる表現である。イスラームの聖典はコーランと一般的に呼ばれるが、近年、専門家の間ではより原語に近い発音でクルアーンと呼ぶべきだとされるようになってきている。しかし、まだ一般的ではない。コーランとは、誦まれるものという意味であるが、これは預言者ムハンマドが文字の読み書きができず、もっぱら口で詩の形式で歌うようにしていたことに由来する。預言者というのは予言をするのではなく、神から言葉を預かり、それを人々に伝える人という意味である。

キリスト教・ユダヤ教との関係 ムスリムの解釈では、預言者はムハンマドただ1人ではない。キリスト教のイエスも、ユダヤ教の十戒で有名なモーセも、また、最初の人類アダムも、イスラームにおいては預言者である。聖典もコーランだけではなく、旧約聖書も新約聖書も聖典である。キリスト教徒にとってのユダヤ教が、イスラームにとってはユダヤ教とキリスト教である。3つとも、同じ神を信仰しているとされている。「アッラー(もしくはアラー)の神」という表現をする人がいるが、アッラーとは英語でいう「The god」であり、ゴッドの神というのと同じくらいおかしな表現である。神はたびたび預言者を地上に送り、人類に言葉を伝えてきたが、きちんと伝わっていなかったり守らなくなったりすると新たな予言者を送るとされている。ムハンマドは、最大にして最後の預言者という位置づけである。ユダヤ教徒・キリスト教徒は、一神教を信じる啓典の民であり、偶像崇拝をする人々と異なりその信仰は認められ、強制改宗を迫ることはなかった。同じ時期のキリスト教徒がユダヤ教徒を迫害し、異端のキリスト教徒まで迫害したのとは対照的である。その証拠に、イスラーム諸国にはいまだにネストリウス派、マロン派、コプト派などのキリスト教徒がのこっており、イラクのアジズ外相やエジプト出身のガリ前国連事務総長など、社会的に重要な役割をする人物もいる。シリアの憲法を作成したのもキリスト教徒である。

スンナ派とシーア派 現在ではスンナ派(もしくはスンニー派)が多数派で、シーア派はイランなどごく一部に限られるものになっている。スンナとは、ムハンマドの慣行のことで、シーアは党派という意味で、ムハンマドの娘婿で第4代カリフのアリーを支持する党派ということから由来している。両派の違いは、ムハンマドの慣行や政治家の実力・人徳を重視するか、それとも血統を重視するかという違いでもあり、シーア派ではムハンマドの血を受け継ぐ者が預言者的な役割を果たし続けるといわれており、血統が途絶えた後もその伝統が残りホメイニーによるイラン・イスラーム革命におけるホメイニーのカリスマ性にある程度の影響を及ぼしたともされている。なお、シーア派は一枚岩ではなく、いくつかの派に分かれており、アリー支持という点で一致しているに過ぎない。ちなみに現在のイランは12イマーム派で、ほかにレバノンのドゥルーズ派、シリアのアラウィー派、オマーンのイバード派、イエメンのザイード派、インドのイスマイール派などに分かれている。

イスラーム法(シャリーア) イスラーム法は国際法・民法・刑法・商法から道徳まで、社会・生活に関するありとあらゆる行為を規定している。これは神の定めた法とされているので、改正はできない。しかし現状に合わなくなってしまうことを避け、新しい状況に対応するため、イスラム法学者(ウラマー)による再解釈を常に必要としている。ホメイニーはウラマーであって聖職者ではない。イスラームは平等を強く説くので、キリスト教のような聖職者を持たない。イスラーム法はよく誤解されるように全てを絶対にこうしなければならないと定めるのではなく、義務・推奨・任意・忌避・禁止の5つに行為を分類し、自由にしていいことまで自由にしてよいということを明示しているため、全てを規定することになっている。

世界に広がるイスラーム 現在、ムスリム人口は11億人を超えてなお増加している。これは世界人口の約5分の1を占める数である。また、世界の約200の国のうち、約4分の1に当たる50カ国前後で、ムスリムが多数派を占めている。広がりとしてはアフリカの北半分、西アジア全域、南アジアのインドの一部とパキスタンとバングラディシュ、東南アジアのフィリピンの南半分とマレーシアとインドネシア、旧ソ連の中央アジア全域、中国の西北部、東欧のバルカン半島西南のアルバニア、コソボ、ボスニア、それに西欧諸国や日本、アメリカへの移民というように、非常に広大な広がりを持って存在している。中東・アラブの宗教というイメージが強いが、アラブ人はムスリムのわずかに4分の1で、トルコとイランを加えた中東全体でもムスリム全体の3分の1にすぎない。中東以外では、南アジアに3億人、東南アジアに2億人、中央アジアに6000万人、サハラ以南のアフリカに2億人、ヨーロッパにも数千万人のムスリムが存在し、影響力を持っている。

参考文献 小杉泰「イスラーム世界」筑摩書房 1998年 栗田禎子「イスラームと民主主義ースーダンの「イスラーム運動」のケースからー」 

ハンドルネーム Bouzu


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