アフガニスタン紛争(2001-)

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2014年5月28日 (水) 21:07の版

2001年9月11日の米国同時多発テロを受け、当時の共和党ブッシュ政権がアフガニスタンへの報復として位置づけ、2001年10月に開始した武力衝突及び以後の混乱状態のことを指す。1978年に内乱が勃発し、翌年ソ連軍が侵攻して以来、アフガニスタンは不安定な情勢となった。その中で人々はムジャーヒディーンと呼ばれる武装勢力を各々結成し、1989年にソ連軍を撃退したが、その後ムジャーヒディーン同士が対立したことで内戦状態に陥り、ここにイスラム回帰を訴えるタリバンが現れて勢力を強めた。1999年頃には国土の大半を制圧してアフガニスタンの政権を握ったタリバンは、極端なイスラム原理主義を国民に強いるとともに国際テロ組織アルカイダを受け入れ、国内における活動の自由を許していた。米国同時多発テロは、活動を活発化させた、ウサマ・ビン・ラディンが指導するアルカイダによって引き起こされ、これを受けた国際連合安全保障理事会の決議により首謀者とされるウサマ・ビン・ラディンとアルカイダの引き渡しが要求されたが、タリバン政権は従わず、アルカイダによる対米テロはなおも続いた。このことは米国とタリバンの関係を決定的に悪化させ、結果米国はこれ以上の対米テロを防ぐことを明確な目的として掲げてアフガニスタンへの軍事介入を定めた。当時この戦争に対する支持は国内のみならず国際的にも非常に高く、米国連邦議会での反対票は僅か一票であり、北大西洋条約機構(NATO)は米国へのテロ行為をNATO全加盟国への攻撃であるとみなして集団的自衛権を発動し、またアフガニスタン内部でもムジャーヒディーン各派が連合してタリバン打倒のためにアフガニスタン救国・民族イスラム統一戦線(北部同盟)を結成した。そして2001年10月、米国をはじめとする連合軍はアフガニスタンの北部同盟と協調して攻撃を行った末にタリバン政権を崩壊させ、同年12月5日、アフガニスタン各派代表者会議において達成されたボン合意ののちにカルザイ暫定政府が発足した。しかし、これらの動きが即座にアフガニスタン情勢の安定に繋がることはなく、2006年頃に、タリバンはカルザイ政権下の新生アフガニスタン政府と、NATO軍を標的とするゲリラ活動を始めて一旦は衰えた勢力を徐々に回復させていった。タリバン政権が崩壊して以来、米国はアフガニスタン政策よりもイラク戦争に重点を置いていたが、タリバンが再び勢力を拡大していったことに加えてカルザイ政権の統治能力の欠如が目立ってくるにつれ、米国はタリバンとの和解・再統合に前向きになり、2010年5月米アフガニスタン共同声明によって米国とタリバンの歩み寄りが目指された。この声明について、米国側の事情としては、従来からのイラク戦争反対派であり、同時にアフガニスタン政策への再注力を唱えたバラク・オバマが2009年に政権を握った影響が大きく、また国内からアフガニスタン政策に対する批判が高まっていたとともに軍事力での紛争平定に限界が見えたことが背景にあり、対するタリバンは政権打倒に協力した現地勢力である北部同盟の再構築を危惧したためであるとされる。そして2011年5月2日、米国特殊部隊がウサマ・ビン・ラディンを殺害したとCNNが報道し、バラク・オバマによって、DNA鑑定を経て遺体がウサマ・ビン・ラディン本人であることを確認したと発表された。このために、指導者を失ったアルカイダは新たにアイマン・ザワーヒリーが新たな指導者として選出されたと発表したが、アルカイダの実態は2014年5月現在も定かではない。その上、米国との接近に踏み切ったタリバンではあるが、アフガニスタン内外でいつ起こるともしれないタリバンによるゲリラ活動へ不安は今もなお絶えず、アフガニスタン紛争は今日まで継続している。2014年にカルザイ政権は任期を終え、さらに同年7月には米国からの治安権限の委譲が開始されるため、アフガニスタンには、パキスタンをはじめとする周辺諸国や復興の要となる先進諸国との良好な協力関係を築くことと、タリバンに対して適切な措置を講じることのできる指導者の選出が期待されるであろう。


出典・参考 外務省 各国・地域情勢 アフガニスタン・イスラム共和国 「アフガニスタン戦争とアメリカ――アメリカ国内政治の展開を中心に」,西住祐亮,2013年 貫洞欣寛 (2011年6月17日). “ザワヒリ容疑者が後継 アルカイダ、テロ続行か”.朝日新聞 「アフガニスタン―現状と課題(2014年を見据えて)」,高橋礼一郎,2011年

H.N oki


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