冤罪

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2015年7月31日 (金) 16:58の版

「冤罪」とは罪のない人間が罪を着せられ犯罪者として扱われてしまうこと


過去の事例

袴田事件

袴田事件(はかまだじけん)とは、1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で発生した強盗殺人放火事件、およびその裁判で死刑が確定していた袴田巖元被告が判決の冤罪を訴え、2014年3月27日に死刑及び拘置の執行停止並びに裁判の再審が決定(再審開始については即時抗告審での審理中のため未確定)された事件。日本弁護士連合会が支援する再審事件である。  八月一八日、袴田巌さんが逮捕された。彼は一九日間、無実を主張し続けたが、連日の厳しい取り調べに、モウロウとした状態になり、ついに九月六日、警察の筋書き通りの犯行を自供させられた。その内容は、おおよそ次のようなものであった。六月三〇日の午前一時過ぎ、クリ小刀をパジャマのズボンのヒモに落としざしにして、寮の自室を出た。隣家の楓の木から専務宅の倉庫の屋根に移り、雨樋(あまどい)を伝って中庭に降り、侵入した。家人に発見され、専務を殴り倒し、専務以下四人をクリ小刀で殺害、現金を強奪した。その後死体に混合油を振りかけ、マッチで火をつけて逃げたというのである。罪名は「住居侵入、強盗殺人、放火」だった。しかし、この自白を裏付ける物的証拠は何もなかった。警察は、袴田さんを容疑者ときめつける物的証拠を何も発見していなかったのである。元プロボクサーだから「やりかねない」という先入観が、捜査官の頭を支配したらしい。警察の内部文書にも、こう書いてある。「本件は、被告人の自白を得なければ、真相は握が困難な事件であった」。則ち話は逆なのである。警察は、袴田さんに嫌疑をかけ、逮捕する充分な証拠は何一つ発見していなかったのである。こうなれば捜査官は、無理やり袴田さんの「自白」をとる以外に手はなかった。一日の取り調べ時間は、平均一二時間。最高は、実に一七時間にのぼった。袴田犯人説は、警察の拷問が作り出した虚構であることは明白だった

足利事件

足利事件(あしかがじけん)とは、1990年5月に発生した殺人事件である。その後、誤認逮捕により冤罪被害事件となった。また真犯人が検挙されていない未解決事件でもある。 1990年5月12日、栃木県足利市のパチンコ店で行方不明となった女児(当時4歳)が、翌日、パチンコ店近くの渡良瀬川の河川敷で死体で発見された事件。犯人のものと推定される体液が付いた女児の半そで下着も付近の川の中で見つかり、わいせつ目的の誘拐・殺人事件とされた。足利市ではこの事件の前、2件の女児殺人事件が起きていた。幼稚園の送迎バスの運転手で、事件現場のパチンコ店の常連でもあった菅家利和さん(当時43歳)を疑った県警は、菅家さんを事件半年後から1年間尾行したが、怪しい点はなかった。91年6月、県警は菅家さんが捨てたゴミ袋から体液の付いたティッシュペーパーを発見。警察庁科学警察研究所(科警研)にDNA鑑定を依頼し、科警研は同年11月、菅家さんと犯人のDNAの型が一致したとする鑑定書をまとめた。これを受けて県警は、12月1日、菅家さんを任意同行し、深夜に及ぶ尋問の末、犯行を認める「自白」を引き出し、21日、わいせつ目的誘拐と殺人、死体遺棄の容疑で逮捕した。検察は、先に起こっていた2件の殺人の「自白」は「嫌疑不十分」として起訴しなかったが、パチンコ店から行方不明になった女児殺害についての「自白」は疑うことなく菅家さんを起訴。菅家さんは第1審の途中から否認に転じたが、93年7月7日、宇都宮地裁は無期懲役の判決を言い渡し、東京高裁も控訴を棄却。2000年7月17日の最高裁判決で有罪が確定した。菅家さんは02年12月25日、宇都宮地裁に再審を請求。地裁は請求を棄却したが、即時抗告による東京高裁での審理でDNA再鑑定が認められ、その結果、女児の下着に付着していた体液と、菅家さんのDNAは一致しないと分かった。1991年の科警研鑑定は、当時としても間違いだった可能性が高い。再鑑定結果を受け、東京高検は菅家さんを刑務所から釈放した。


冤罪が起こる背景

冤罪=誤判は、捜査、起訴、公判のそれぞれの段階における関係者の判断や措置の、意識的または無意識的な誤りの集積・連鎖の結果として生ずる。


冤罪を防止するには

まず捜査段階についてみると、冤罪=誤判は捜査の歪みから生じるといって良い。その歪みとは、客観的証拠や科学的捜査を軽視し、主観的な見込みや勘に頼って捜査を進めようとする非科学的・非合理的手法と、見込みや勘の通りの成果をあげようとしておこなう糾問的な手法のことである。そうだとすると、冤罪=誤判を防ぐためには、見込みや勘に頼る糾問的な捜査を許さないことが必要である。まず第一に見込みに基づく逮捕(別件逮捕がその典型)を許してはならない。そのためには、逮捕状を出す際に裁判官は、逮捕するだけの証拠があるか、逮捕しなければならない必要があるか、違法な別件逮捕ではないかなどを慎重に判断しなければならない。現在は逮捕状が捜査官から請求されると裁判官はごく形式的しんさして機械的に発行する傾向がきわめてつよい。裁判官はこの傾向をあらためなければならない。第二に、代用監獄を廃止することである。代用監獄こそは暴力的・糾問的捜査の温床であり、冤罪=誤判の温床だからである。もっとも、廃止した場合に拘置所だけで逮捕・拘留された者の収容をまかなえるかという問題がある。収容人員の数の上だけからみると現存の拘置所でもほぼまかなえるのだが、拘置所の地域的分布状況を考えると増設が必要である。第三に被疑者の取り調べに対し法律的規制を加えて改善することである。取り調べの方法に対し、法律的規制を加えて改善することである。取り調べ継続時間を規定する。食事時間と就寝時間を保障する。被疑者の要求があれば弁護人の立会を認める。原則として取り調べ状況の録音テープ化やビデオを義務付ける。こういった規制を加える必要がある。第四に取り調べの結果として捜査官が作成する供述調書について、その作成を法律的に義務付ける必要がある。またそのコピーを被疑者に交付することも法律的に義務付けるとともに、取り調べの実態が反映するよう、そのスタイルを一問一式の速記的なものに改めることも必要である。第五に、誤鑑定を防ぐためには、鑑定は原則として複数のものに依頼するよう義務付けることが必要である。第六に捜査段階の国選弁護人を新設し、弁護活動の権利をつよく保障することが必要である。現在でも捜査段階で弁護人を依頼することはできるが、それは自分の費用で依頼する私選弁護人に限られている。したがって、資力がないなどの理由で弁護人を頼めない者は弁護人を持つことが出来ない。起訴されて公判が開始してはじめて、国が国選弁護人をつけてくれる(国選弁護人制度)しかし、捜査段階で被疑者の人権を守り冤罪を防ぐためには、被疑者に対しても国選弁護人を保障することが絶対必要である。



(参考文献)

・冤罪はこうして作られる(1993 小田中聰樹)

http://www.h3.dion.ne.jp/~hakamada/jiken.html(袴田巌さんを救う会HP)


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