ノーマライゼーション6

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2020年1月30日 (木) 15:27の版

ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーションの育ての父とも言われているベンクト・リィニエ氏はこう説明している。  「知的障害者が、障害の程度にかかわらず、自宅あるいはグループホームに暮らしていようと、できるだけ彼らのクラス社会で主流となっている、毎日の生活条件に近い環境で暮らすことができるようになることを意味する。」ベンクト・リィニ(河東田訳)『ノーマライゼーションの原理―普遍化と社会改革を求めて(新訂版)』現代書館p48 また、児童向けの説明として大久保秀子氏は以下のように述べている。  「どんな人も仲間外れにしない、ならないように考え、前よりもっとたがいにたのしくなるようにすることは、特別あつかいとはちがうことです。ノーマライゼーションは、この特別あつかいをやめよう、みんなが幸せにおもえるように工夫しようという考え方です。」大久保秀子『ノーマライゼーションってなんだろう』文溪堂p23 このような解釈のある言葉だが、しばしば誤解されることがある。最も多い誤解は、「ノーマライゼーションとは、障害者を普通にすること」である。すなわち、障害を持つ人々が障害を持たない人たちのようにふるまう、無理やり合わせる、というものだ。しかしこれは、全くの誤解である。本来は、障害を持つ人でも「ありのままの自分で個性を発揮し、自分で選択をする」といった社会のみんなと限りなく近い生活が可能になるように援助をすることである。

8つの原理

1. 1日のノーマルなリズム 障害がある人でも、ない人と同じような生活を送れるようにするべきという考えである。例えば障害者であっても、朝起きて、着替えをし、みんなと朝の食事とるといった生活リズムを送ることである。

2. 1週間のノーマルなリズム 多くの人は一週間の中で自宅から仕事に行ったり、学校に行ったり、遊びに行ったりして過ごす。このような一週間のリズムを障害がある人でも経験するべきという考えである。

3. 1年間のノーマルなリズム 一年の中にはクリスマスや、お盆、お正月などの情事や、誕生日といったイベントがある。このような一年単位のリズムを、障害があっても参加できるようにするべきとする考えである。

4. ライフスタイルでのノーマルな発達的経験 一般的に人は生まれてから幼児期、学童期、成人期、高齢期といった時期を経験し年を取っていく。しかし、障害のある人たちは同じような経験ができない場合が多い。例え障害者のためであっても発達において悪影響である。そうではなく、誰しもが同じようなライフスタイルを通して発達的経験をするべきという考えである。

5. ノーマルな要求の尊重 知的障害者本人の選択や願い、要求をできる限り配慮し尊重されるべきだとする考えである。

6. その文化におけるノーマルな異性との関係 男女が共に生活するべきとする考えである。障害者施設では、不自然に男女が分けられることが多かった。そのため、異性への関心が薄れ発達に悪影響を及ぼしていた。

7. 一般の市民と同様な経済条件 障害者であっても、一般の人と同じように経済活動が行えるようにするという考えである。これには、児童手当、個人年金、老人手当、最低賃金保障などが含まれている。

8. ノーマルな住宅環境の提供 障害者を対象とする施設の設備を一般の施設と同等のレベルにするべきとする考えである。例えば、日常生活の中で溶け込めないほどの人数を収容する施設はよくない。

バリアフリーとノーマライゼーション

バリアフリーとは、障害者や高齢者が都市空間で安全に生活しやすくするため、障壁となるものを取り除いていくという意味がある。例えば、車いす利用者専用のトイレを設けたりすることだ。これらは、障害者のために作られたものだ。対して、ノーマライゼーションは障害がある人もない人も同じような生活ができるようにするという考えである。つまり、障害の有無は関係ないのだ。そのため、障害者を特別視しているようにもとらえられるバリアフリーはノーマライゼーションの原理に反している。しかし、近年バリアフリーの概念が障害者のための施策という考えから、すべての人が安全に暮らせる社会づくりという考えに変わろうとしている。したがって、ノーマライゼーションを実現するための手段の一つが、バリアフリーと言える。


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