風土病

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2008年10月15日 (水) 19:33の版

 一定の地域に持続して多発する、その地方特有の病気。地理・気候・地質・生物相および住民の生活様式などの種々な要因があり、川や湖などで水との接触から感染する。つつがむし・日本住血吸虫病・くる病・甲状腺腫・作洲熱・天竜熱・秋疫・フィラリア症など。 海外旅行者の増加に伴い、アフリカ、中近東、南米など、海外での吸虫感染者が毎年報告され2億人の感染者がいると推定される。


日本住血虫病

 日本住血虫病は、山梨県甲府盆地、福岡県、佐賀県の筑後川流域、広島県福山近郊の片山地区などで風土病として流行していた。しかし、戦後にミヤイリ貝の撲滅政策が成功したため、1977年以降は国内に新たな感染者はいない。1996年2月には山梨県で終息宣言がなされた。

 住血吸虫症は水中で有尾幼虫(セルカリア)が人に経皮感染する寄生虫で、人に感染するものは日本住血吸虫、アフリカ、南米が流行地のマンソン住血吸虫、アフリカ、中近東のビルハルツ住血吸虫の3種類である。日本住血吸虫の感染経路となる中間宿主はミヤイリ貝である。幼虫が経皮的に人に感染すると血管(門脈)内に入り、成虫に発育し産卵する。虫卵が門脈を塞栓するため肝臓が腫大し、門脈圧亢進症を来たし、脾腫、貧血、腹水を呈するようになる。食道静脈瘤を形成し、吐血の原因となる。終息宣言がなされた現在でも古くに感染した50歳以上の高齢者で肝硬変、門脈圧亢進症、肝臓癌発生の報告が散発している。また、甲府盆地で生まれ育った戦国武将の武田信玄は、腹が膨れ吐血したという記載が残っており、日本住血虫病への罹患説が強いとされる。


熱帯での風土病

 熱帯ではマラリア・住血吸虫症・糸状虫症は三大感染症である。熱帯には日本では過去の病気となった結核、地方都市などで発生する狂犬病、特定地域での罹患率が高い甲状腺腫、あるいは都市部農村部を問わず発生がみられる破傷風などの罹患者が少なくない。

 湿潤熱帯に特徴的に見られる風土病は、昆虫をはじめとする節足動物、淡水性の巻貝、土壌などによって媒介される原虫、リケッチア、細菌、ウィルスなどの病原微生物あるいは蠕虫などの感染もしくは寄生によるものである。カ、ノミ、シラミ、ダニ、ブユなどの節足動物の他、獣類、鳥類、昆虫類などが感染サイクルに重要な役割を負っていることがある。節足物の中でもカは媒介動物の代表的なもので、マラリア、デング熱(およびデング性出血熱)、日本脳炎、糸状虫症等々の疾患はそれぞれ特定のカによって媒介される。 湿潤熱帯には動物相と個体数が豊富であり、さらに通年高湿なので媒介動物は年間を通して生存が可能であり、さらに、河川での日常的な水浴、排便、洗濯、屋外での労働、都市部の人口密集に伴う人工的な止水(水瓶の飲用雨水、下水だまり、ヤシ殻や空き缶にたまった雨水)の増加、雨季ごとに繰り返される河川の氾濫による汚物拡散、食習慣にもとづく低栄養など、居住する人々の生活様式もまた媒介動物にとって好ましい条件となっている。


引用文献

http://www.honan-news.net/sinsatu/sinsatu42.htm 別府 倫兄の診察室 「まだの残る風土病」

1997年 京都大学東南アジア研究センター(編) 古川久雄 海田能宏 山田勇 高谷好一(編代表)  事典東南アジアー風土・生態・環境― 「風土病」p224~p225 弘文堂

1998年、2004年 広辞苑 第五版 岩波書店

ハンドルネーム:マンメルモール


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