アメリカのチャータースクール

出典: Jinkawiki

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目次

最初のチャータースクール

チャータースクールという新しい公立学校の開校・運営システムが制度化されたのは、1991年、ミネソタ州でのことであった。そして1992年に最初(全米初)のチャータースクール、「シティー・アカデミー」がセントポール市に開校した。

チャーターとは

 チャーターという概念は1980年代にアメリカで議論され始めた。「チャーター」を日本語に訳すと、「特別認可」「特別許可」とするのが適当である。特別認可・特別許可で開設された公立学校、それがチャータースクールである。普通の公立学校とは違う、自分たち独自の「学校」をつくりたい保護者や教師、地域団体などのグループがあるとする。開設したい学校の構想をまとめたら、「チャーター」を申請する。「チャーター」が州や学区から下りたら、自分たちの学校を始めることができる。

 州が支出している公立学校運営費を生徒の人数分だけもらえるため、それでやりくりする。他の公立学校同様、生徒一人当たり、年間4000ドルから5000ドル程度の公的資金が下りる。そのお金で自分たちの学校を運営していく。学校の教育内容や方法などもチャーターで認められた通りなら自由である。そのかわり「結果」を出さなくてはいけない。「チャーター」の有効期間(年数)は通常決まっていて、チャーター契約の時に同意した期間内(例えば3年なら3年以内)に所定の教育成果を挙げなければ「チャーター」の更新はしてもらえない。そのため学校として存続ができなくなり、「閉校」という事態が待っている。チャータースクール発祥の地、ミネソタ州が自らのチャータースクールを「結果志向型チャータースクール」と呼んでいるのは、結果を重視する姿勢の現れである。

 つまり、チャータースクールとはそれ相応の結果責任を引き受ける、新種の公立学校のことである。

チャータースクールの多様性

チャータースクールは、州や学区の法令や規則の適用が免除されるため、独自の理念・方針に基づく教育を提供することができる。チャータースクールの発祥地、ミネソタ州ではさまざまなチャータースクールが誕生し、多様に展開している。

○モンテッソーリ・スクール

ミネソタ州のウィノナには「ブラフビュー(Bluffview)モンテッソーリ・スクール」というチャータースクールがある。幼稚園から第8学年の学校で、1993年3月に開校した。モンテッソーリ流の教育を行う学校である。独自の教育スタイルをとる学校が公立として成立するのも、チャータースクールの制度があるためである。

○サイバー・アカデミー

セントポールには、インターネットを利用したチャータースクールがある。「サイバービレッジ・アカデミー(Cyber Village Academy)」は1998年1月に開校し、第3~第8学年の子どもたちが在籍する。このチャータースクールは、病弱などの理由により学校に通うことができない、または通うことが困難である子どもたちが対象で、インターネットを通じて教育を行っている。

○ネイティブのための学校

ミネソタでは先住民族、ネイティブ・アメリカンが数多く生活を続けており、その文化と誇りを守るための学校としてチャータースクールが活用されている。そのひとつに「フォー・ディレクションズ・チャータースクール(Four Directions Charter School)」があり、1999年9月にミネアポリスに開校した。第9~第12学年の先住民族の青少年が対象で、ネイティブの言語、文化などを学ぶ他、コンピュータースキルも身につける。

○特殊教育のチャータースクール

障害のある子どもたちのためのチャータースクールもつくられている。「ニュービジョン・スクール」では学校に眼科のクリニックも併設されており、子どもたちは療育訓練と教科の教育を受けている。第1~第8学年の「学習準備障害」があると判定された子どもたちを対象としている。脳の損傷、発達の遅れ、学習困難を抱えているなど、難読(読書障害)を中心に、通常の学校では勉強についていけない子どもたちを引き受け、教育を行っている。

○民営化チャータースクール

ミネソタ州のチャータースクール法では、営利を追求する教育民営化企業に直接チャーターの認可を与えることが禁止されている。しかし、チャータースクール自体がその運営を企業に任せることは許可されているため、「民営化チャータースクール」をつくることも可能である。

チャータースクールの制度

アメリカでは教育に関する権限は州にあり、チャータースクールに関する制度も州によって異なる。簡単にまとめると次のようになる。

 設置者:保護者、教師、地域団体など。

 学校形態:公立(公費運営、授業料なし)、非宗教的。

 契約・更新:学校(設置者)は児童生徒の学業などに関する契約を締結し、責任を負う。チャーター更新時にその目的を達成できていない場合はチャーター取り消し。

 規則の免除:多くの法令・規則の適用が免除され、制度上・運営上の慣習から自由。州によっては、教員免許を持たない者も教員として任用されることもある。

 選択制・無選抜制:通学区域なし。児童生徒は入学を強制されず、また学校はすべての希望者を受け入れる。

参考

鵜浦 裕 「チャーター・スクール アメリカ公教育における独立運動」 勁草書房

大沼安史 著 「希望としてのチャータースクール ‐学校を公設民営‐」 本の泉社

http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/2bunkakai/dai5/2-5siryou5-2.html


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