オーストラリアの遠隔地教育

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2009年1月25日 (日) 13:55の版

遠隔地に対する教育はオーストラリア教育の特色の一つである。国土が日本の22倍、人口は日本の7分の1というオーストラリアでは遠隔地の子どもに対する教育が必要で、連邦政府や州政府は様々な対策を施している。


遠隔地教育の対象地域
l 公立学校から少なくとも16km以上離れた地域。
l 駅やバス停留所から少なくとも4.5km離れた地域。
l 4.5km以内でも学校が家から少なくとも5.6km以上離れた地域。
l 通学などに要する時間が往復3時間以上かかる地域。
l 洪水の多発などの天候などの条件でしばしば孤立する場所。

遠隔地教育の変遷
遠隔地教育は1901年にクイーンズランド州で巡回教師により始められた。国全体から見ると次のような変遷があった。
① 通信制学校の時代~1910年代から~
→1922年までに全ての州で通信制学校による教育が始められた。
② 放送学校の時代~1950年代から~
→1951年北部準州アリススプリングスで始まり、1954年には初等教育段階の教育を開始。事前に子どもに教材を送り、放送学校にいる教師が教えた。
③ 遠隔地教育の重要性が認識され、改革案が出された時代~1970年代~
→全ての生徒に平等な教育を保障すべきというカーメル報告は、教育的に不利な立場にある遠隔地の子どもたちの教育条件を整備することを勧告した。
④ より密着した遠隔地教育を実現しようとする時代~1980年代以降~
→人工衛星による遠隔地教育を開始する州も出現。週内の各地に遠隔地教育センターを設置し、教育効果の向上をめざした。

遠隔地教育の実践例~クイーンズランド州の場合~
1989年に就学前、初等、中等段階と別々に実施していた通信制学校を合併、遠隔地教育学校ブリスベンセンターを設置。1991年には州内を7つに区分し、地域拠点となるセンターを設置し現在に至っている。その内の一つである援助センターでは教材の開発、作成、発想の他、研修会の開催、巡回教師の派遣などを行っている。
ブリスベンセンターによると具体的な活動は次の4つである。
① 遠隔地教育学校でのミニスクール
→地域の設置された遠隔地教育学校にも通学できない者に対し、年数回、一斉授業を経験させる機会を設ける。
② 文化交流週間の設定とスポーツデイの開催
→美術や手芸作品を持ち寄って展示会を開催し、交流を深め自分自身を啓発する機会とする。同時にスポーツ大会も開催。
③ 家庭教師の研修会
→家庭教師が遠隔地教育学校に集まり、教材研究と学習指導方法を研修。
④ 成果表彰の日
→子どもを集め種々の野外活動をさせる。そのなかで優秀な活動を表彰し、学習や活動に対する意欲を高めさせる。


他の州でも独自の遠隔地教育を推進している。連邦政府は各州独自の方策に積極的に援助し、同時に政府自体も多様な計画を企画して遠隔地教育の機会均等の実現と基礎学力の向上を図った。


参考:オーストラリア・ニュージーランドの教育/石附実・笹森健


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