モントリオール議定書

出典: Jinkawiki

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目次

概要

正式名称は「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」という。1987年9月に採択された。1989年発効。日本は採択時に署名している。2006年2月現在の締約国数は188カ国+EC。事務局はナイロビのUNEPに置かれている。

1985年3月に採択された「オゾン層保護に関する国際条約(ウィーン条約)」に基づき、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、該当する物質の生産、消費及び貿易を規制することをねらいとしている。具体的には、成層圏オゾン層破壊の原因とされるフロン等の環境中の排出抑制のための削減スケジュールなどの規制措置を定めている。




背景

地球を取り巻くオゾン層は、生物に有害な影響を与える紫外線の大部分を吸収しているが、冷蔵庫の冷媒、他方で、電子部品の洗浄剤等として使用されていたCFC(クロロフルオロカーボン)、消火剤のハロン等は、大気中に放出され成層圏に達すると塩素原子等を放出し、オゾン層を破壊している。

オゾン層の破壊に伴い、地上に達する有害な紫外線の量が増加し、人体への被害(視覚障害・皮膚癌の発生率の増加等)及び自然生態系に対する悪影響(穀物の収穫の減少、プランクトンの減少による魚介類の減少等)がもたらされる。



内容

CFC(クロロフルオロカーボン)の生産については先進国では1996年以降全廃、発展途上国では1999年から段階的に削減、2010年に全廃することになっている。

ちなみに、CFC(クロロフルオロカーボン)とはいわゆるフロンの一種で、炭素、フッ素及び塩素からなる物質である。洗浄剤、冷却剤、発泡剤、噴霧剤などとして広く使用されてきたが、化学的に安定な物質であるため大気中に放出されると対流圏ではほとんど分解されずに成層圏に達する。成層圏において太陽からの強い紫外線をあびて分解し、塩素原子を放出するが、この塩素原子が触媒となってオゾンを分解する反応が連鎖的に起きる。この反応を繰り返しながらオゾンを分解するため、多数のオゾン分子が次々に破壊されることとなる。


また、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)については、先進国では2004年から生産量を1989年レベルで凍結し、段階的に削減し、2020年には既存機器への補充用除いて全廃し、さらに2030年には補充用も含めて消費量をゼロにすることになっている。途上国は2016年から生産量を2015年レベルで凍結することになっている。

ちなみに、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)とは代替フロンの一種。水素、塩素、弗素、炭素を含む代替フロンとして、エアコンや冷凍庫の冷媒に使用されている。CFC(クロロフルオロカーボン)程ではないが、塩素を含んでいるため多少オゾン層を破壊する。


ただし、オゾン破壊係数0のHFC(ハイドロフルオロカーボン)および、自然冷媒については規制対象外になっている。



モントリオール議定書の締約国数(2006年2月現在)

•モントリオール議定書 188か国及びEC(我が国加入 :1988年9月30日)

•モントリオール議定書(ロンドン改正) 179か国及びEC(我が国受諾 :1991年9月4日)

•モントリオール議定書(コペンハーゲン改正) 169か国及びEC(我が国受諾 :1994年12月20日)

•モントリオール議定書(モントリオール改正) 139か国及びEC(我が国受諾 :2002年8月30日)

•モントリオール議定書(北京改正) 103か国及びEC(我が国受諾 :2002年8月30日)



今後の課題

現在、先進国において主要なオゾン層破壊物質について全廃を達成している。途上国に対しては削減スケジュールの実施に猶予期間が設けられており、1999年より特定フロンの規制が開始されるなど逐次規制が開始されている。

今後は、途上国の議定書遵守の確保、他に代替物質がない場合や経済的・技術的に代替物質の使用が現実的でない場合に認められている「不可欠用途適用除外」の適用レベルとその基準等が、大きな課題となる。



参考文献

外務省ホームページ  www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/ozone.html  2009.1.27

EICネット www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2569 2009.1.27

土屋清 2003 「2003新現代社会資料」 実教出版

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