フィンランドの教師2
出典: Jinkawiki
2009年1月29日 (木) 01:35の版
フィンランドの教師2
学力差のある子どもたちを同時に教えるとなると、教師に大きな負担がかかってくるが、これを切り抜けるためにフィンランドは、優秀な教師を育て、個々の教師の専門性を信頼し、教育活動を全面的に委ねるために、教師がもっと働きやすい教育環境を作るという取り組みをおこなった。 まず教師は、小学校段階の六年間を教える学級担任と中等教育段階を教える教科担当に分かれる。その両方とも、大学に五年間在籍し修士号を取得することが条件となる。フィンランドでは教師の職は社会的にも尊敬されており、人気が高い。各種調査によると多くの高校生が志望する、一、二を争う職種である。だが、実際に教育系の大学に入学できるのは志願者の一割程度である。さらに採用されるものはもっと絞られることになる。教師への道は狭き門といえる。このためフィンランドでは、他の職と比べても、きわめて能力と意欲の高い教師を確保できている。大学の教師養成教育では、理論と実践との両方の実力が強調される。就職してからも自ら研究し、新しい教育思想や教育方法を探究し続けられるように、自己研修の能力をつけることが重視される。現場に出ても常に学び続け、社会状況の変化に対処するように努力していける教師を養成するという。 教師の高い能力とその努力ぶりを見ているので、親も生徒も教師を大いに信頼している。また、行政側も、教師の能力を信頼し信用している。教師は、専門性をもった大切な働き手となっている。
教師の勤務時間
OECD調査による「法廷勤務時間に占める実際の授業時間の割合」という項目に注目してみると、日本の教師は最低に位置している。小学校では30%強、中学校では25%、高校では20%強しかない。最も多いスコットランドになると、65~70%あって日本の倍以上である。法廷勤務時間は、日本が1940時間、スコットランドが1365時間である。フィンランドでは、法廷勤務時間は年間1600時間、その60%が授業とされている。そして一応、四時まで勤務時間であり、四時になるとだれも学校にいなくなる。ただし、一般企業の労働時間も週37時間、就業時間もその多くは八時から四時までである。だが、教師の場合、担当する授業が終わると、つまり午後二時ごろになると帰ってしまう例も多いという。低学年の担任は、十二時ごろに帰ってしまうこともある。授業以外の時間は、教師は授業に向けて研修をしていることになっており、その時間の使い方は教師に任されている。ノートの点検やレポートの評価、教材の準備など、学校でやってもよく、そうでなくてもよく、一番やりやすい場所でやってよいとなっていて、早い帰宅は広くおこなわれているので、社会のだれもが認めている原則になっている。教師の本務は授業であり、授業以外の負担はできるだけ少なくするという原則が生きている。教師の研修は自由、自宅の授業準備は当たり前、授業が終われば生徒と一緒に帰宅してしまっても良い。年に五度の連休や長期休暇中も学校に来なくて良いし、夏休みも二か月まるまる来なくて良いという。勤務日数は年190日程度。これに比べれば、日本は授業日数は200日程度あり、法廷外の労働、いわゆる残業、クラブ活動や行事などでの休日の出勤日数は枚挙にいとまがなく、勤務時間の実態は年間2500時間あたりにもなるといわれる。逆にフィンランドでは、早い帰宅により、1300時間あたりになってしまう。また、フィンランドの教師は有給休暇もしっかりととっているようだ。教師の欠勤がよくあるようで校長がいらだっているほどだといわれている。 フィンランドの教育は、しっかりとした家庭生活の上に成り立っており、教師もその例外ではない。教師もよき家庭人、社会人、その地域の住民であることをまず実践することが重要だという哲学が生きている。フィンランドの教師は、おそらく世界一じっくり準備して授業に取り組むことができるといえるだろう。
それに対して日本の教師は授業以外にしなくてはならない仕事が多く、教師としての専門性があまり考慮されていないように感じる。同じ教師という職業でも日本とフィンランドを比べてみると、勤務時間や内容は大きく違い、日本の教師が授業の準備にかける時間が少なく、忙しい現状に比べて、フィンランドでは教師は授業に専念できる体制となっていることがわかった。フィンランドのように教師がじっくりと授業研究をし、授業の準備の時間を十分に与えられることで、よりよい授業につながっていき、これが一人ひとりに高い学力を保障していることに関係してくるのではないだろうか。
参考文献:『競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功』 福田誠治 朝日新聞社