対人地雷全面禁止条約

出典: Jinkawiki

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 条約調印場所の地名をとって、「オタワ条約」とも呼ばれる。対人地雷の使用・開発・製造・取得・貯蔵・保有・直接・間接委譲を禁止し(第一条)、すべての対人地雷を廃棄することを目指して制定された条約。締結国がすでに保有する対人地雷も4年以内にすべて廃棄することなどが義務付けられている。

 1997年9月、ノルウェーのオスロ国際会議で発議、人道的不要論と安全保障上の必要論とが対立したが、同年12月3日、カナダのオタワで署名式が行われ、1993年3月に発行した。条約成立に際しては、各国のNGOの貢献が大きい。この条約を積極的に推進していた「地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL)」と、その世話人ジョディ・ウィリアムズには、97年度ノーベル平和賞が授与された。加盟国143(2004年8月)。

 日本は1998年9月に批准。45番目の締結国となった。日本政府による地雷問題への対応としては、1994年から97年前半までに、カンボジアなどの地雷撤去や被害者支援に33億円の資金援助をしてきたことなどが挙げられる。しかし、対人地雷を国際法で禁止することについては、当初、オタワ条約によらずとも、金属部品の少ない地雷や、スマート地雷(埋められて一定時間が経つと爆発しなくなる地雷)の使用を認めている「特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)」の改正第二議定書(「地雷、ブービー・トラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書」)の方が、アメリカや中国をはじめ多くの国々の参加が得られ、地雷禁止の効果が大きいと主張していた。96年10月にカナダが「オタワ・プロセス(対人地雷全面禁止条約の締結推進手続き)」を提案したときも、日本政府は消極的だった。97年9月にノルウェーのオスロでオタワ条約の最終交渉会議が開催されたときも、日本は当初、参加しない姿勢をとり続けていたが、その後、アメリカがオスロ会議の直前になって参加を決めたのを受け、日本政府も参加を決定した。アメリカが朝鮮半島においては地雷の継続しようを認めるよう求めたり、「スマート地雷」を対人地雷の定義から外すよう求めたりするなど、様々な例外を認める条約にしようとしたときには、それらの案を支持して、カナダほか全面禁止を支持する政府やNGOの失望を買った。日本はオスロ会議の期間中は米国に追随する姿勢を続け、オタワ条約に調印する姿勢は少しも見せていなかった。その日本が急遽姿勢を変え、オタワ条約に参加する意向を公式に発表したのは、2ヵ月後の97年11月であった。日本政府がオタワ条約に参加決定するまでの2~3ヵ月の間には、様々なことがおこっていた。1つには9月に新外務大臣に就任した小渕恵三氏が「日本は地雷撤去に協力しながら、オタワ条約を認めないのは筋が通らない」と発言したこと。この発言から、政府内では政策の見直しが始まった。2つには、地雷廃絶運動にかかわってきた英国のダイアナ王妃が不慮の事故で亡くなったこと。このことから、日本でもメディアで地雷問題が大きくとりあげられた。さらに「地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)」が、8月に当時の橋本龍太郎総理大臣あてに「例外なし、保留なし、抜け道なし」のオタワ条約参加の要望書を提出したこと、11月にオタワ条約への無条件参加を求める約3万5千人の署名を小渕外務大臣に手渡したこと、ICBLがノーベル平和賞を受賞することが発表されたことなど、こうした一連の出来事が、世論の盛り上がりに寄与し、最終的には日本のオタワ条約参加を決定したと思われる。97年12月の署名式には、小渕外務大臣が自ら出席し、条約に署名した。


 他国の動きとしては、1999年、イギリス国防省が、陸軍の保有する対人地雷をすべて破棄したと発表し、前向きの取り組みを内外に示した。日本の自衛隊は約100万個の地雷を保有しており、2003年3月までに廃棄することが義務付けられていたが、同年2月に廃棄を完了。しかし締結国に駐留する外国の軍隊には適用されないため、在日米軍の対人地雷はそのまま維持されるなど問題点も多い。また2004年の時点では、アメリカ、ロシア、中国、インド、韓国などは批准しておらず、膨大な撤去費用の負担問題なども未解決である。

 この条約の今後の課題として、①加盟国の条約履行を監視する努力②全面禁止条約の加盟国を増やす努力③全面禁止条約を「政府以外のアクター」、ゲリラや不正規勢力に広げる努力④全面禁止条約調印が、対人地雷除去や、被害者支援への援助凍結の言い訳や「免罪符」に利用されないよう監視する努力が、NGO会議で議題となった。ICBLの最大の懸念は、12月の全面禁止条約調印で、対人地雷問題は解決したという風潮が広がることだ。非人道兵器を全世界から全廃にするためには、依然として様々な障害がある。本当の国際平和の実現に向けては、各国の真摯な態度による活動が、今後いっそう重要であるといえよう。


長 有紀枝 1997 地雷問題ハンドブック 自由国民社

岩波ブックレットNo.597 地雷と人間 一人ひとりにできること 地雷廃絶日本キャンペーン編


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