日本国憲法2

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2009年1月30日 (金) 12:28の版

近代市民憲法と現代憲法の違いと共通点」         

<憲法とは>  近代憲法の諸原理についてここで触れてみたいと思う。近代憲法の諸原理の主なものとして国民主権、基本的人権、権力分立がある。それぞれに以下に説明をする。 1国民主権  主権という言葉は、元来「最高の権力」という意味で、これは諸侯の権力よりも君主の権力の方がより高いという意味に由来し、専制君主国家の確立により最高の権力ということになったからである。また主権には、領土権を意味する場合、国家の意思を意味する場合、国家の意思の性質としての最高性あるいは独立性を意味する場合があるが、ここでいう主権は次の意味である。  国家の意思が構成される場合に、それを最終的に決定する最高の力という意味である。絶対王政の時代ではルイ14世の「朕は国家なり」という言葉で表現されるように主権は君主に属していた。これに対し新興の市民勢力が対決したのが市民革命であり、これによりフランス人権宣言にあるように「すべて主権の淵源は、本来、国民に存する」という国民主権が近代憲法の原理となった。日本においては、天皇主権であったものが、日本国憲法の成立により国民主権となった。 2基本的人権  絶対君主制の政治体制の元における国民の地位を考えた場合に、それは君主によりいろんな制限を受け、窮屈な暮らしを送っていた。これに対する全面的な変革を求めたものがフランス革命における「人権宣言」であった。これは、人間が生まれながら有すべき自由を掲げたものであり、それらの自由は国家権力をもってしても侵すことができないという原理の宣言である。これは歴史的に絶対君主制と対抗し、革命によって市民階級が獲得した権利の宣言でもあり、歴史的性格を持つものである。当初は市民階級といっても資本主義の発達により階級が対立し、特にブルジョアジーという富裕層の階級のための人権という傾向が強まったため、生存権や労働者の権利などの新しい社会的・経済的権利が登場し、現代の憲法には取り込まれるようになった。 3権力分立  これも歴史の流れを見れば当然に理解できることであるが、絶対君主制のもと権力が専政君主に集中していたが、フランス革命の理念においては、専制君主の支配が排除され、政治権力が専政化して国民の自由と権利を侵すことがないよう、専政君主が掌握していた一切の国家権力を立法・行政・司法の三権に分かち、それらをそれぞれ独立した機関に属するようにし、さらにそれらを相互にチェックさせることにしたのである。 <近代憲法から現代憲法へ>  18・19世紀の憲法を近代憲法、20世紀の憲法を現代憲法と呼ぶが、次のような違いがある。 1.基本的人権について言えば、近代憲法では自由権的基本権に重点がおかれ、国家の役割は国民の「自由」を確保することにあった。これに対し現代憲法における基本的人権の保障では生存権的基本権(社会権)の比重が増大している。つまり自由国家から福祉国家への国家観の変更がなされている。 2.政治機構については、現在国家における国家の機能の拡大・強化に伴い、執行権(行政)への権力集中、あるいは執行権の強化の傾向がある。 3.憲法の内容、規定事項の範囲が、近代憲法では国家権力に対する国民の権利、自由の宣言と国家の統治機構の部分とに限られるのが通常であったのに対し、現代憲法では思想的な規定や社会的・経済的分野に関する規定が広汎に取り入れられるようになった。これは日本国憲法の前文などに見られる。以上の文章は、「日本国憲法概説」<全訂第三版>(佐藤功著、学陽書房1985年)及び新版「新法律学辞典」(我妻栄編集代表、有斐閣)を参考にしている。


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