アイヌ民族

出典: Jinkawiki

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   日本とロシアにまたがる北方先住民族で、歴史的には本州東北部から北海道、千島列島、樺太(サハリン)を生活圏としていた。現代においては北海道を中心に関東ほか都市部で生活を営んでいる。ウタリはアイヌ語で同胞、仲間を意味し名称などで使用されるが、民族呼称ではない。


アイヌ文化の成立

 アイヌ文化の成立は12~13世紀ころといわれているが、私たちがアイヌの人たちを史料(しりょう)のうえで確認(かくにん)できるのはおおよそ15世紀ころから。そのころ、アイヌの人たちは漁狩猟(ぎょしゅりょう)や植物採取(さいしゅ)を主な生業にしてくらし、また他地域の人たちと交易(こうえき)を行っていた。和人(注)がこの島に住み始めた時期は定かではないが、15世紀ころにはその居住地は東は鵡川(むかわ)、西は余市(よいち)まで広がり、現在の函館付近には若狭(わかさ)(福井県南西部)から商船(しょうせん)が来航(らいこう)し、問屋(とんや)や鍛冶屋(かじや)も設(もう)けられていた。蝦夷地(えぞち)(北海道)からは蝦夷三品(えぞさんぴん)と呼ばれていた昆布、干サケ、ニシンや北蝦夷地(きたえぞち)(樺太(からふと)、現サハリン)を経由(けいゆ)した中国産品などが移出(いしゅつ)され、本州からは鉄製品(てつせいひん)、漆器(しっき)、酒などがもたらされた。アイヌの人たちは本州へ移出(いしゅつ)される品物の直接、間接の生産者であり、交易者(こうえきしゃ)であった。

* 和人:明治以前においては、本州から渡来してきた人たちをいい、現在は、日本のなかで一番人数の多い人たちを、アイヌの人たちと並べて呼ぶときの呼び名。


アイヌ民族の現在

 1999年の北海道による調査では、北海道のアイヌの人びとは道内の73の市町村に住み、その人口は23767人で、うち日高支庁管内と胆振支庁管内で約3分の2を占めている。この数はいまだにあとをたたない民族差別によって申告できなかった人びとや就職難などから首都圏などに移住した人は含まれていない。 明治政府は、和人移民の増加によりアイヌが「其活路ヲ矢」っている現状をみとめ、その「救済」は「国家ノ義務」であるとして、1899(明治32)年3月2日に「北海道旧土人保護法」を公布している。この法律はアイヌの人びとを「旧土人」と規定して農地給付と教育の授与を内容としているのが、アイヌ民族の独自の文化と先住の権利を“保護”するための内容をもつものではなく、生産・生業と文化の諸側面において民族文化を否定し、「日本」文化への吸収をはかる以外のなにものでもなかった。 1997(平成9)年7月1日、アイヌ新法とも呼ばれる「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」の施行によって、「北海道旧土人保護法」および「旭川旧土人保護地処分法」は廃止された。この法律は、法体系のうえで、はじめてアイヌの人たちを民族としてみとめ、民族としての誇りが尊重される社会の実現をはかることなどを内容とするものである。これにさきだって、1995年3月、内閣官房長官の私的諮問機関として「ウタリ(アイヌ語で、同胞の意味)対策のあり方に関する有識者懇談」が設置され、1996(平成8)年4月に懇談会から以下を骨子とする報告書が提出された。 (1) 中世末期以降の歴史の中でみると、アイヌの人びとは当時の「和人」との関係において北海道に先住していたことは否定できない。 (2) 関係者の帰属意識の強さやさまざまな取り組みに照らし、アイヌの人びとは民族としての独自性を保持している。 (3) イオマンテに象徴される儀礼などの特徴、アイヌ文様に示される独自の芸術性、ユーカラをはじめとする口しょう伝承などにアイヌ文化の大きな特色がある。また、アイヌ語は独自の言語である。 (4) 明治以降の近代化の中でアイヌの社会や文化の破壊が進展し、差別と貧窮を余儀なくされた。

新法のなかでは、第二条でアイヌ文化を「アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産及びこれから発展した文化的所産」と定義しているが、報告の(1)の先住性については本文中には規定されていない。 これについては、衆議院と参議院内閣委員会での「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律案にたいする付帯決議」のなかで、「アイヌの人びとの《先住性》は、歴史的事実であり、この事実も含め、アイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発の推進に努めること」に適切な措置を講ずることが求められている。 「先住性」、すなわち、先住民族の権利とは一般に、先住民族がい居住する、または居住していた土地と、そこにある資源に対する権利、伝統文化を維持発展させる権利、さらに一部には政治的自決権をも包含する内容の権利である。 とくに、ILO(国際労働機関)は、先住民族の権利を推進するために、1957年に独立国における先住民などの保護及び同化を促進し、生活条件や労働条件の改善などを目的としてILO第107号条約を、さらに89年にいかなる国家または社会組織も先住民の主張するアイデンティティを否定してはならないこと、また、国家は先住民の参加のもとに彼らの権利と全体性を確保する責任があることなどを趣旨とする第169号条約を採択した。これらの条約は2001年1月現在で14カ国が批准しているが、日本はまだ未批准で「先住民」を認めていない。

*参考文献*

・「アイヌ民族の軌跡」波川健治著 山川出版社 2004

http://www.frpac.or.jp/kodomo/html/hito/rekishi/rekishi.html

・ウィキペディア


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