八ッ場ダム

出典: Jinkawiki

2010年2月10日 (水) 00:49 の版; 最新版を表示
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目次

八ッ場ダムとは

 八ッ場ダムは、吾妻川の中流域に位置する、群馬県吾妻郡長野原町において建設を進めている。 吾妻川は、群馬と長野の県境にある鳥居峠を源流として、複数の支川を合わせて、途中、吾妻峡と称される景観をつくりながら、渋川市付近で利根川と合流する一級河川で、その流域面積は約1,370k㎡、幹線流路延長は約76kmに及ぶ利根川水系の代表的な支川のひとつである。  八ッ場ダムは重力式のコンクリートダムで、ダム本体の高さは116m、これは東京タワー(333m)の3分の1より少し大きいくらいになる。 また、貯められる水の量は約1億立方メートルで、こちらは東京ドームの約87個分に相当し、 利根川水系の他のダムと比べると、高さでは5番目、貯められる水の量では3番目に大きなダムとなる 。


治水・利水効果

6500万m3の容量で洪水を調節し、首都圏を水害から守る。 八ッ場ダムは、洪水期(7月1日~10月5日)に6500万立方mの洪水を調節することができる。吾妻川や利根川の沿岸はもちろん、利根川下流に位置する茨城県・埼玉県・東京都など、流域全体に大きな洪水被害が及ぶのを未然に防ぐことができる。

■近年の洪水による効果  平成10年9月洪水(台風5号)における利根川上流既設5ダムおよび八ッ場ダムによる水位低減効果を見るためにシミュレーションを行った。

前橋観測点(群馬県庁付近)における水位は、

○既設ダムがなければ、最高水位より約75cm高くなる。

○八ッ場ダムが完成していれば、最高水位をさらに60cm低下できる。   森林のダム効果とは

 森林は「緑のダム」とも呼ばれている。降雨時には森林土壌に雨を浸透させて河川への流入量を減少させ、平常時にゆっくりと水を流す機能があるからだ。しかし「緑のダム」があれば人工のダムは要らない、というのは誤解。日本は世界でも有数の森林保有国だが、毎年洪水や渇水が生じていることからも「緑のダム」だけでは不十分なのは明らかである。様々な変化を見せる自然の気候に対して森林が常に人間に好都合な機能を発揮するとは限らない。長雨や大きな雨で森林土壌が飽和状態の場合は、洪水を緩和する効果は得られないのだ。また、渇水の場合にも、森林は自分の生育のために土壌の水分を吸い上げてしまうので、河川へ流れ込む流量が減ってしまう。この自然のダムである森林と人工のダムの両者がそれぞれの機能を十分に発揮することによって、洪水、渇水の被害を減少させることが必要とされる。


2~3年に1回発生する渇水被害…水需要は増大

 利根川水系では、2~3年に1回のペースで、渇水が発生している。一方、利根川水系に依存している首都圏の水需要は、昭和45年度に比べて3倍に増えている。 水需要が依然として増加傾向にあること、ダム等の水資源開発施設の整備の遅れなどが原因であると考えられる。

“水資源小国”日本

 日本の降水量は世界平均の約2倍と恵まれているが、1人あたりに換算すると、世界平均の5分の1しかない。水資源では、日本は決して豊かな国とはいえないのだ。 しかも、梅雨時期や台風のシーズンには、大量の雨が降る一方、冬には特に太平洋側はほとんど雨が降らない。年間を通じて安定して利用できる水は以外と少ないのだ。


八ッ場ダムは首都圏の都市用水として、最大22,123m3/sの供給が可能になりる。

八ッ場ダムが完成すると生活用水としては、埼玉県、東京都、群馬県、千葉県、茨城県の首都圏に、工業用水としては、群馬県、千葉県の広い範囲に水を送ることが可能になる。

また、水の需要が増大したため、ダムなどの水源の確保が間に合わないという現状がある。ダムなどが建設され、水源が確保できると、河川の水量の多い時にしか取水できない「暫定水利権」が解消され、安定して水を利用できるようになる。


語源

 八ッ場(やんば)という地名の由来は諸説あり、どれが正しいのか分かっていない。 以下に有力な説を3つ紹介する。

1.狭い谷間に、獲物を追い込んで、矢を射った場所「矢場(やば)」が転じ、「やんば」となった説。 2.狩猟を行う場所に8つの落とし穴があったことから、「8つの穴場」→「やつば」→「やんば」となった説。 3.川の流れが急であることから、「谷場(やば)」が転じ、「やんば」となった説。 ※「やば」では短すぎるので、撥音を入れて調子つけて発音しやすくしたのではないかとも言われている。



年表

昭和27年      昭和24年に策定された利根川改修改定計画の一環として調査に着手する。

昭和42年11月 1日 実施計画調査を開始する。(八ッ場ダム調査出張所開設)

昭和45年 4月20日 実施計画調査から建設に移行する。

昭和55年11月27日 群馬県は、長野原町及び同議会に「生活再建案」「生活再建案の手引」を提示する。

昭和55年12月16日 群馬県は、吾妻町及び同議会に「八ッ場ダムに係る振興対策案」を提示する。

昭和55年12月19日 利根川水系工事実施基本計画が改定される。

昭和60年 2月15日 長野原町は、「生活再建案調査研究結果(回答書)」を群馬県に提出する。

昭和60年11月27日 長野原町長と群馬県知事は、生活再建案について包括的な合意をし、覚書を締結する。

昭和60年12月24日 群馬県知事は、12月群馬県議会で八ッ場ダムに関する基本計画案が可決されたのをうけ、同意回答書を建設大臣に提出する。

昭和61年 3月18日 八ッ場ダムが水源地域対策特別措置法に基づく国の指定ダムとして告示される。

昭和61年 3月24日 八ッ場ダムに係る河川予定地の指定が告示される。

昭和61年 3月28日 吾妻町長と群馬県知事は、「八ッ場ダムに係る振興対策案に関する覚書」を締結する。

昭和61年 7月10日 八ッ場ダム建設に関する基本計画が告示される。

昭和62年 8月31日 吾妻町長と関東地方建設局長は、「八ッ場ダム建設に係る現地調査に関する協定書」を締結する。

昭和62年10月20日 財団法人利根川・荒川水源地域対策基金は、八ッ場ダムを基金対象ダムとして指定する。

昭和62年10月26日 建設省は、吾妻町地内で現地調査を開始する。

昭和62年12月18日 長野原町長と関東地方建設局長は、「八ッ場ダム建設に係る現地調査に関する協定書」を締結する。

昭和63年 3月23日 建設省は、長野原町地内で現地調査を開始する。


平成 元年 3月10日 建設省と群馬県は、川原畑、林、横壁、長野原の4地区へ幹線道路、JR線のルート、代替地計画の骨格を提示する。(川原湯は、12月18日提示)

平成 2年11月13日 建設省及び群馬県は、「八ッ場ダム建設に係る振興計画案」について、吾妻町関係地区への説明を開始する。

平成2年12月26,27日 建設省と群馬県は、水没5地区の再建対策計画である地域居住計画を作成し、関係全世帯に配布する。

平成 4年 7月14日 長野原町長と群馬県知事及び関東地方建設局長は、「八ッ場ダム建設事業に係る基本協定書」を、八ッ場ダム工事事務所長と水没5地区各代表は「用地補償調査に関する協定書」をそれぞれ締結する。

平成 4年 9月24日 建設省は、長野原町地内で用地補償調査を開始する。

平成 5年 3月30日 長野原町は、町議会において国道145号付替道路4車線化構想の受け入れを決定する。

平成 5年 4月 1日 群馬県は、特定ダム対策課及び八ッ場ダム水源地域対策事務所を設置する。

平成 5年 6月22日 八ッ場ダムの「国有林野内における建設工事に関する協定書」を締結する。(前橋営林局長・関東地方建設局長・群馬県知事)

平成 5年11月11日 建設省は、工事用進入路の地上権設定による用地確保について地元の同意を得る。

平成 6年 3月30日 建設省は、長野原地区尾坂進入路及び横壁地区小倉進入路の工事に着手する。

平成 6年11月11日 群馬県は、県道長野原草津口停車場線建設事業に伴う久々戸橋(仮称)の工事に着手する。

平成 7年 9月29日 水源地域対策特別措置法の規定に基づく水源地域指定が、長野原町の水没5地区(川原畑、川原湯、林、横壁、長野原)について告示される。

平成 7年11月20日 吾妻町長と群馬県知事及び関東地方建設局長は、「八ッ場ダム建設事業に係る基本協定」を、八ッ場ダム工事事務所と関係5地区各代表は「用地補償調査に関する協定書」を締結する。

平成 7年11月28日 水源地域対策特別措置法に基づく地域整備計画が閣議決定される。

平成 8年 3月18日 長野原一本松地区において代替地造成工事に着手する。

平成 8年 3月21日 国道145号の付替事業に伴う長野原めがね橋の工事に着手する。

平成 9年 6月27日 横壁地区において補償交渉委員会が設置される。

平成 9年 9月14日 長野原地区において補償交渉委員会が設置される。

平成 9年 9月29日 林地区下田進入路・下田橋が開通する。

平成 9年11月20日 林地区において補償交渉委員会が設置される。

平成10年 1月19日 八ッ場ダム工事事務所新庁舎完成

平成10年 3月30日 長野原バイパスが開通する(3.42km)

平成10年 6月10日 長野原一本松地区の「モデル代替地・インフォメーションセンター」開所

平成10年 7月22日 川原湯地区において補償研究部会が設置される。

平成10年 9月12日 川原畑地区において補償交渉勉強会が設置される。

平成10年11月 9日 吾妻町において本格工事となる松谷三西進入路工事に着手する。(起工式)

平成10年11月17日 林地区(第一小学校)代替地造成工事に着手する。

平成11年 4月 1日 川原湯地区において補償交渉委員会が設置される。

平成11年 4月15日 川原畑地区において補償交渉委員会が設置される。

平成11年 4月30日 八ッ場ダム広報センター「やんば館」開所

平成11年 6月14日 八ッ場ダム水没関係5地区連合補償交渉委員会が設置される。

平成11年 6月23日 長野原町議会において「八ッ場ダム対策特別委員会」が設置される。

平成12年 3月27日 「八ッ場ダム建設事業に伴う地目認定合意書」調印式が行われる。(やんば館)

平成12年10月31日 「八ッ場ダム建設事業に伴う土地等級格差合意書」調印式が行われる。(やんば館)

平成12年11月15日 八ッ場ダム建設事業に伴う国道145号・地域高規格道路(川原畑工区)起工式が行わ れる。

平成13年 1月19日 国道145号の付替事業に伴う長野原めがね橋が開通する。

平成13年 2月 9日 八ッ場ダム建設事業に伴う県道林長野原線の長野原トンネル起工式が行われる。

平成13年 4月27日 上湯原進入路の上湯原橋が開通する。

平成13年 6月14日 「利根川水系八ッ場ダム建設事業の施行に伴う補償基準」調印式が行われる。

平成13年 8月23日 八ッ場ダム建設事業に伴う国道145号・地域高規格道路(横壁工区)起工式が行われ る。

平成13年 9月27日 八ッ場ダム建設に関する基本計画(一部変更)が告示され、平成22年度工期となる。

平成13年10月 9日 「利根川水系八ッ場ダム建設事業の施行に伴う補償基準」に基づく個別説明が始ま る。

平成13年10月19日 八ッ場ダム建設事業に伴う県道林吾妻線の吾妻トンネル起工式が行われる。

平成13年10月25日 八ッ場ダム建設事業に伴う県道林長野原線の長野原トンネル貫通式が行われる。

平成13年12月 4日 八ッ場ダム建設事業に伴う県道林吾妻線(打越地区)の起工式が行われる。

平成14年 2月22日 吾妻三地区(松谷、三島西部、岩下)の連合補償交渉委員会が設置される。

平成14年 8月27日 林地区東原地先に建設を進めていた長野原町立第一小学校の新校舎が完成し、2学期 から開校。

平成15年 3月18日 八ッ場ダム建設事業に伴う県道林吾妻線の吾妻トンネル貫通式が行われる。

平成15年 9月24日 八ッ場ダム建設事業に伴う国道145号・3号橋の起工式が行われる。

平成15年10月16日 八ッ場ダム建設事業に伴う県道林吾妻線「吾妻峡トンネル」完成式が行われる。

平成16年 3月12日 「八ッ場ダム建設事業に伴う岩島地区地目認定合意書」調印式が行われる。(麻の里 会館)

平成16年 9月28日 八ッ場ダムに関する基本計画(第2回変更)が告示され、建設の目的に流水の正常な 機能の維持が新たに追加となり、「水道」、「工業用水道」の利水参画量及び建設に要する概算事業費等は変更とな る。

平成16年11月26日 「利根川水系八ッ場ダム建設事業の施行に伴う岩島地区補償基準」調印式が行われ る。

平成17年 9月 7日 「利根川水系八ッ場ダム建設事業の施行に伴う代替地分譲基準」調印式が行われる。

平成18年 6月 8日 八ッ場ダム水没関係5地区連合対策委員会が設置される。

平成18年 8月31日 八ッ場ダム建設事業に伴う国道145号線の「茂四郎トンネル」貫通式が行われる。

平成18年10月30日 八ッ場ダム建設事業に伴うJR吾妻線の「横壁トンネル」貫通式が行われる。

平成19年 1月15日 長野原地区久之桐地先に建設を進めていた長野原町立東中学校の新校舎が完成し、3 学期から開校

平成19年 6月22日 移転代替地分譲手続き始まる。

平成19年12月 基本計画の変更手続き開始

平成20年 9月12日 八ッ場ダムに関する基本計画(第3回変更)が告示され、平成27年度工期となると ともに、建設の目的に『発電』が追加となる。

平成20年11月 5日 八ッ場ダム建設事業に伴う町道林長野原線の「新須川橋」完成式が行われる。

平成20年12月 8日 八ッ場ダム建設事業に伴う工事専用道路「大柏木トンネル」貫通式が行われる。


参考文献・資料

http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/keii/keii01.htm

http://www.nhk.or.jp/kdns/ukids/09/1024.html


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