世界の原発事情
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
目次 |
アメリカ
世界中の原子力業界に大きな打撃を与えた1979年のスリーマイル島原子力発電所(ペンシルヴェニア州)事故以来、およそ30年にわたり原子力発電所の建設は行われていなかったが、2001年、ブッシュ大統領が原子力発電所の拡大を一つの柱とするエネルギー政策を発表。原子力発電所の建設を推進した。オバマ大統領が就任すると再び原発に対して慎重な姿勢になるが、2010年2月、増加するエネルギー需要を満たし気候変動の最悪の被害を防ぐため、約30年ぶりに国内での原子力発電所の新設計画を発表した。
中国
総発電力の約8割を石炭が占めている中国は、新たなエネルギー供給源として原子力の開発に積極的。2007年までに政府が制定した原発整備計画では、2020年までに原子力による発電を4000万kwにまで高めるとしていた。しかし2009年になって原子力発電所の建設計画を大幅に見直し、今後3年間で8カ所に16基の原発を整備する方針へと変更した。また、パキスタンが建設を計画している原子力発電所の建設費総額1700億円のうち82%(約1400億円)を中国が資金援助している。
インド
核保有国であるながら核拡散防止条約に加盟していなかったため、国際社会から核関連の貿易を認められていなかったインド。しかし、2008年10月に結ばれた米印原子力協定により、核関連技術や燃料の輸出入が解禁。各国政府や企業が売り込み合戦を始めている。また、2010年8月には原発が事故を起こした際に事業者が負担する賠償額の上限を約274億円と定める法案を上程。これは、原発建設を今後本格化させるための国内法整備で、原子力発電事業は今後20年で1600億ドル(約14兆円)にのぼるとでれている。
イラン
ロシアの国策原子力企業によって、イランに建設されたブーシェフル原子力発電所。そこへ核燃料が搬入されて、イランでは初となる原発がついに2010年末には稼働する予定となっている。核兵器開発に関して世界から疑念を抱かれているイランだが、原発を保有することにより、ウラン濃縮を含む核関連施設の拡大に向けた足がかりにする構えを崩していない。そのため、国際社会全体では懸念を一層深めているのだが、アメリカはブーシェフル原発を容認する姿勢をみせており、イランと対話することに重きを置き始めている。ただ、国連安全保障理事会は2010年6月に4度目のイラン制裁を決議したほか、米欧は独自の追加制裁を導入して徐々に圧力を強めている。
ドイツ
チェルノブイリ原発事故の影響もあって、20世紀末から原子力発電をやめようと見直す動きが強まる中、その先鋒となったのがドイツであった。2002年には当時の政権のもとで「改正原子力法」施行し、原子力発電の完全撤廃を目指した。しかし、2009年に"脱原発の見直し"を公約に掲げたメルケル氏が首相に就任したことにより状況は一転する。2010年9月には、メルケル政権が原子力発電所の運転を平均で12年間延長する方針を決定した。だが、これに対してドイツ国内では、反発の機運が強まり大規模な反対デモまで勃発する事態となった。脱原発の象徴であったドイツがこのまま"脱・脱原発"に傾き続けるのであれば、世界的な潮流に大きな影を及ぼしかねない。
◇参考文献
『なるほど地図帳世界 2011』 昭文社
世界の原子力発電状況 http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data3030.html