国際収支
出典: Jinkawiki
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国際収支とは
国家間のお金のやり取り(経済取引)を、一定期間について資金移動の流れによって集計したもの。すべての対外取引を複式簿記の原理に則って貸方と借方に計上するため、全項目を合計するとゼロになる。海外からの受け取りが支払いより多いと黒字、逆が赤字になる。具体的には、IMF(国際通貨基金)の基準に基づいて作成された国際収支表で表される。日本では1996年からIMF基準の統計方法を採用している。
対外経済取引 居住者と非居住者との間の1,財貨・サービス・所得の取引 2,対外資産・負債の増減に関する取引 3,移転取引に分類される。
国際収支表
国際収支表の主要な項目には、経常収支、資本収支及び外貨準備増減があり、以下の関係となる。
- 経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0
経常収支及び資本収支は以下のとおり表される。
- 経常収支=貿易収支+サービス収支+所得収支+経常移転収支
- 資本収支=投資収支(直接投資+証券投資+その他収支)+その他資本収支(資本移転+その他資産)
- 外貨準備(準備資産)増減は政府及び日本銀行が保有・管理する金融資産の増減である。
経常収支
貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支からなる。経常収支の黒字は、その国の貯蓄が全体として投資を上回っていることを示し、対外資産の純増とほぼ一致する。
- 貿易収支 モノの輸出入による受け取り(輸出)と支払い(輸入)の収支
- サービス収支 輸送、通信、金融などのサービス取引の収支
- 所得収支 海外で保有する資産からの配当や利子、海外の企業から得た給料などの所得の収支
- 経常移転収支 国際機関への拠出金、政府などによる食料や医療品などの無償資金援助、海外で働く人々の本国への送金など、対価を伴わない資金移動の収支
資本収支
投資収支、その他の資本収支からなる。直接投資、証券投資など、金融資産の売買を記録したものが資本収支で、経常収支と資本収支の合計は、中央銀行の外貨準備の増減と等しくなる。
- 投資収支 海外の工場建設などの直接投資、海外の株式や債権を購入する証券投資などの収支
- その他資本収支 償資金援助による海外での道路や港湾建設などの社会資本形成、特許権の取得や処分などの収支
外貨準備増減
政府と日本銀行が保有する外貨(ドル)を集計したもの。受け取ったお金が、支払ったお金より多ければ外貨の準備高が増加し、逆の場合は減少する。この外貨準備高は輸入代金支払いのために必要である。
日本の国際収支の特色
日本は1981年以降、一貫して経常収支が黒字で推移し、しかもその規模が大きいため、この点がしばしばアメリカやヨーロッパ諸国との経済摩擦の原因になっている。
貿易収支 日本の貿易は付加価値の高い工業製品の輸出額が、輸入額を大きく上回っており、大幅な黒字が続いている。
サービス収支 特許使用、保険、通信などで輸入超過になっているが、なかでも海外旅行者数の増加で赤字が続いている。
所得収支 海外への投資から得られる配当金や利子などの受け取りが増加し、黒字が拡大している。
経常移転収支 発展途上国援助、国連など国際機関への拠出金が増加し、赤字が続いている。
投資収支 多くの企業が海外へ進出し、また海外の株式や債権の購入額も多いので大幅な赤字になっているが、これは経常収支が黒字で多額の投資が可能だからである。
その他資本収支 道路や港湾など社会資本の建設のための無償の資金援助を、発展途上国に対して行っているので赤字になっている。
外貨準備増減 20年以上続いている貿易収支の黒字で多額の外貨が蓄積され、日本の外貨準備高は世界一である。
日本の国際収支の歴史
終戦直後から1950年代前半は、復興のための輸入超過によって貿易収支は赤字となった。しかし、アメリカの経済援助による経常移転収支の黒字と朝鮮特需によるサービス収支の黒字によって国際収支はほぼ均衡していた。その後、高度経済成長にともなって貿易収支は黒字に転じた。1980年代以降は、サービス収支の赤字が海外旅行ブームを反映して拡大するものの、大幅な貿易収支黒字の発生によって経常収支が莫大な黒字となった。この黒字を海外に積極的に投資する形で、貿易収支は大幅な赤字となっている。
国際収支の不均衡問題
国際収支の不均衡の問題は、よく新聞等で取り上げられる。97年に起きたタイの通貨危機は、巨額の経常収支赤字の存在が根本的な原因であった。また、93年から95年春にかけて続いた急激な円高ドル安は、日米間における貿易収支や経常収支の不均衡を基本的な要因としていた。こうした国際収支の不均衡は、一国内の蓄積と投資がアンバランスであることの裏返しである。貯蓄よりも投資が大きい場合には、国内での資金が不足し、外国から資本が流入して、経常収支は赤字ということになる。貯蓄よりも投資が小さい場合は、この逆になる。また、為替レートの変動によっても、国際収支の不均衡は起こりえる。為替レートが上昇すれば、輸出は減少、輸入は増加して、貿易収支が赤字になる。為替レートが下落した場合は、この逆になる。
アメリカの経常収支
輸入超過により赤字となっているが、1990年代の好景気もあって外国からの証券投資が株式市場に大量流入し、資本収支は黒字である。これによりアメリカは、世界最大の債務国となっている。
参考文献
浜島書店編集部『最新図説 現社』浜島書店 2006
大和総研著『図解の事典 よくわかる経済』日本実業出版社 1998