モンテッソーリ教育3

出典: Jinkawiki

2011年2月26日 (土) 11:01 の版; 最新版を表示
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目次

マリア・モンテッソーリ

モンテッソーリ教育の創始者マリア・モンテッソーリ(1870〜1952)は、イタリアで最初の女性医学博士であった。モンテッソーリは、はじめ知的障害児教育の研究をしていたが、知的障害児に有効な方法は普通児にも適用できるだろうと考え、1907年にローマの貧民街で「子どもの家」という教育施設を設けた。「子どもの家」では、子どもたちの行動は落ち着いていて、さまざまな関心や能力を示し、人々を驚嘆させた。

モンテッソーリは、子どもが自発的にしている活動に着目した。子どもは絵を描くことに熱中したり、ものをある場所から別な場所に移すことに熱中したりする。子どもが散歩に出ると、虫や花をみつけて飽きることなく観察している。このような子どもの活動を、モンテッソーリは子どもが自分の発達課題を持って、仕事をしているのだと捉えた。子どもの自発的な活動を支援することを柱として、独自の教育のシステムを作り上げた。それが「モンテッソーリ教育」である。子どもの感覚を大切にするさまざまな教材が開発されている。

晩年のモンテッソーリは、ファシスト政権と合わず、国外で活動する。インドで教育活動をし、戦後はオランダに住んでモンテッソーリ教育を推進している。モンテッソーリ教育は、幼児教育で有名になっているが、モンテッソーリの小学校もたくさんあり、中等教育学校も存在する。


モンテッソーリ教育の目的

●自立した子どもを育てる

モンテッソーリ教育の基本は、「子どもは、自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる。大人(親や教師)は、その要求を汲み取り、自由を保障し、子どもたちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」という考え方にある 。 モンテッソーリ教育の目的はそれぞれの発達段階にある子どもを援助し、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学びつづける姿勢を持った人間に育てる」ことである。 その目的を達成するために、モンテッソーリは子どもを観察し、そこからえ得た事実に基づいて教育法を構成し、独特の体系を持つ教具を開発した。 その教育法の正しさは、現代の大脳生理学、心理学、教育学などの面からも証明されている。


モンテッソーリ教育の方法

●自由の保障と整えられた環境による教育

『子どもの家』では、子どもたちに自発的な活動に取り組む自由を保障し、そのために「整えられた環境」を準備する。 「整えられた環境」とは、次の4つの要素を満たすものである。

①子どもが自分で自由に教具を選べる環境構成。

②やってみたいなと思わせる、おもしろそうな教具。

③社会性・協調性を促すための、3歳の幅を持つ異年齢混合クラス編成。

④子どもそれぞれの発達段階に適した環境を整備し、子どもの自己形成を援助する教師。

※モンテッソーリ教育において教師は「教える人」ではなく、子どもを観察し、自主活動を援助する人的環境要素である。


モンテッソーリ教育の内容

モンテッソーリ教育では、子どもの内発的な発達プログラムに基づいて、次のような実践課目を設けている。 それぞれの課目には、独特の体系を持つ教具が用意されているが、子どもは必ずしもそのカリ キュラムに従って活動するわけではなく、あくまでも子どもの自主性が尊重される。

●日常生活の練習

モンテッソーリ教育の基礎になる課目で、「運動の教育」として位置づけられている。 2〜3歳の子どもは「模倣期」にあたり、大人がする日常生活の様々な動作の真似をしたがる。 また、モンテッソーリはこの時期を「身体発達と運動の敏感期」と呼んでいる。 身体をある程度自由に動かすことができるようになり、盛んに身体を動かして環境に働きかける時期だからである。 この模倣期と運動の敏感期を利用して、秩序だった動き方、身のこなし方を伝える。 子どもは、自分の意志どおりに動く身体をつくり、自分のことが自分でできるようになり、自立心、独立心が育つ。

●感覚教育 2歳から3、4歳にかけての子どもは、次の3つの発達特性を持っている。

①感覚の敏感期

感覚刺激に敏感になり、感覚器官を洗練しようとする。 小さな物音に興味を持ったり、 いろいろな物に手当たりしだいに触ったりすることが、その現れである。

②無意識的に吸収したものを意識にして整理する

0〜3歳の子どもは、大人の真似をしながら、無意識的に外界の様々なできごとを吸収している。 3歳ごろから、それまで無意識的に吸収してきたものを、意識的に整理しようとする。 「どうして?」という問いかけは、その現れである。

③知性の萌芽

2歳ごろの子どもを見ていると、「あ、あのコップ、私のと同じ」と同じ絵柄に気づいたり、 ばらばらになった貝殻の対を探したり、何かを大きい順に並べたり、形別に分けたりすることを好んで行う。 これらは知性の萌芽の現れである。

「感覚教育」は、感覚を洗練させ、意識的吸収精神を助長して抽象的概念を獲得させ、ものを考える方法を身につけさせることを目的とする。それらはモンテッソーリの考案した独特の教具や具体物に触れる活動をとおして体得できる。

感覚教具には、比較することを基本とした、対にする、段階づける、仲間分けする、の3つの操作法が組み込まれている。

●言語教育

モンテッソーリは子どもの言語発達について、「名称を知ることから始まり、その性質に関する単語(形容詞)に移り、ものの関係を表す単語(動詞・助詞)に及ぶ」と考えた。 言語教育では、絵カード、文字カードなど、それぞれの発達段階に即した教具を使い、話す、読む、書くの作業を通じて語彙を豊かにすることを目指し、最終的には文法や文章構成へと進む。

●算数教育

モンテッソーリは、人間の精神の発達は、

・運動、感覚から抽象へ ・感性的認識から抽象的認識へ ・具体から抽象へ

という経路をたどるといっている。

モンテッソーリ教育法は、子どもにこの経路をたどらせることによって、抽象的認識に至らせることを目指している。 抽象的、論理的な力を要求される「算数教育」では、特に具体物(算数棒、ビーズなど)を用いて量を体感させることから始め、系統化された多くの教具によって細かいステップを踏みながら、抽象へ移行する。 数量概念の基礎から十進法、加減乗除へと子どもを無理なく導く。


●文化教育

日常生活の練習、感覚・言語・算数教育の基礎の上に立って、「わが国の地理的、文化的条件のもとで、先人が創り引き継いできた知識や生活様式を受け継ぎ、発展させていく」ための基礎を培うことを目的とする。

歴史、地理、生物、音楽などが主な内容となるが、それらを体系的に学ぶのではなく、身近な事物に触れたり観察したりして、文化を獲得する態度を養う。


参考文献

マリアモンテッソーリ著 クラウス・ルメール 江島正子 共訳 「モンテッソーリ教育法 子どもー社会ー世界」 1996年 ドン・ボスコ社

ポーラ・ポルク・リラ―ド 著  いいぎりゆき 訳 「なぜいまモンテッソーリきょういくなのか」エンデルレ書店

クラウス・ルメール 著 「モンテッソーリ教育の精神」2004年 学苑社


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