中小企業

出典: Jinkawiki

2012年2月10日 (金) 12:20 の版; 最新版を表示
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中小企業

 資本金・従業員数・生産額などが中位以下の企業。中小企業基本法(1999年改正)では、(1)製造業などは資本金3億円以下、または従業員数が300人以下の企業、(2)卸売業では資本金1億円以下、または従業員数が100人以下の企業、(3)サービス業では資本金5,000万円以下、または従業員数が100人以下の企業、(4)小売業では資本金5,00万円以下、または従業員数が50人以下の企業と定めている。

 わが国では、第二次世界大戦後の急速な重化学工業化のなかで、大企業と中小企業が併存する、いわゆる二重構造が形成されてきた。また、第三次産業でも中小企業の比率は高く、産業構造高度化のにない手として大きな役割を果たしてきた。わが国の中小企業のあり方として、大企業の下請けとしての立場がある。これは自動車産業などに典型的にみられ、親企業の系列のなかで、技術や資金の援助を受けて部品を生産し、親企業に納める形が多い。優秀な部品系列をもつことは、親企業にも産業全体にとっても死活問題となるため、ピラミッド型の下請け形態が組織されてきた。しかし近年、国際競争に勝ち抜くためのコスト削減を迫られた親企業が海外に移る事態がおこっている。このため、製造業の中小企業のなかには、従来型の下請けから脱して、ネットワーク型の取引形態を模索する動きもみられる。輸出に頼る中小企業や、伝統品以外の繊維・陶磁器・刃物・食器などを製造する地場産業は、円高などの影響を受けやすく、労働集約的な製品や、独自技術をもたない分野では、海外との競争で苦境を強いられる場合も多い。そのため、独自技術の開発やアイディアを生かすことが課題となり、世界に通用するような製品開発を行う中小企業も生まれている。小売分野では、大規模小売店舗法の廃止で大型店が進出したり、後継者が不足したりして、個人企業の比率が大きく減少するなど地域経済の浮沈と関わる重大な問題となっている。サービス業では、伝統的な対個人サービス業はあまり伸びていないが、レジャー・教育・情報通信関連の分野や高齢化に対応した福祉関連の分野、大企業が見逃している隙間を埋めるような業種(ニッチ産業)で、中小企業の伸びがめだつ。


二重構造  一国の経済において、前近代的分野と近代的分野が、相互に補完的な関係をもちながら並存している状態。わが国では、少数の近代的大企業が存在する一方で、多数の前近代的な中小企業・農業が存在し、両者の間にさまざまな格差や支配・従属関係がみられることをさしていう。

下請け  他の企業から仕事を請け負ったり、他の企業が請け負った仕事の全部または一部をさらに請け負うこと。一般には、大企業の注文を受けて、大企業の製品の部品や生産工程の一部を中小企業が請け負うことをいう。

地場産業  ある特定の土地に育った、伝統ある産業。たとえば、京都の西陣織や愛知県の瀬戸の陶磁器など。

大規模小売店舗法  日米間の摩擦は、大規模小売店の日本進出をめぐっても生じ、日米構造協議において、アメリカ側から見直しを要求され、90年代を通じて数回改正された法律。なお、2000年6月からは、規制緩和に加えて環境への配慮を示した大規模小売店舗立地法が施行され、同法は廃止された。

ニッチ産業  市場のすきま部分に特化した産業をさし、すきま産業ともいう。ニッチnicheとは、くぼみ、適所という意味。企業が自社製品の市場を選定する際にすきまに特化する戦略をニッチ戦略という。


零細企業  中小企業のなかでも、特に小規模なもの。資本金・従業員数が少なく家族的経営が多く、生産性も低い。


中小企業基本法

 1963(昭和38)年制定。中小企業の振興・保護を目的に、中小企業政策全体を体系化した法律。中小企業の設備の近代化促進、技術の向上、経営管理の合理化、下請け取引などにおける不利益の是正などを内容とする。1973(昭和48)年、99(平成11)年に改定された。中小企業を一律に保護していたのを改め、企業の自主努力をうながしたり、創業を支援したりする方針を打ち出した。


中小企業金融公庫

 1953(昭和28)年設立。中小企業の合理化・近代化に必要な大口かつ長期低利資金の貸付を目的とする政府系金融機関。貸付資金は財政投融資によってまかなわれている。


ベンチャービジネス

 産業構造の変化のなか、IT関連や環境・福祉などの新たな産業分野で、新技術や高度な知識を軸に創造的・冒険的な経営を展開している知識集約的な中小企業。エレクトロニクス、情報産業、コンサルティングなどの分野を中心に誕生しており、近年は流通・サービス部門にも拡大している。 これらの企業は、新たな企業や産業を生み出すにない手となる可能性をもち、日本経済のダイナミズムの源泉になることが期待されている。しかし、わが国では企業件数は低下しつつあり、経済の活性化のためにも多くのベンチャー企業が生まれることが課題となっている。中小企業は大企業と比べて規模のほか、生産性。賃金に格差があり、一定の保護が必要とされてきた。しかし、過度な保護政策は消費者の利益をそこない、結果として中小企業の活力の低下をもたらすとの指摘や、べんちゃーきぎょうへの対応が不十分との批判を受けて、1999年に中小企業基本法が改正された。2003年には、中小企業挑戦支援法が施行され、資本金が1円でも株式会社をつくることが可能になった。さらに2006年からは、会社法の施行によって最低資本金規制が撤廃され、ベンチャー企業の起業への支援がすすんでいる。今後企業家精神(アントレプレナーシップ)にあふれた独創的な企業があらわれ、世界に飛躍することが期待されている。


中小企業挑戦支援法  平成15年2月1日~平成20年3月31日までの期間限定で法律が施行された。正式名称は「中小企業等が行う新たな事業活動の促進のための中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律」である。新たな事業活動の展開に挑戦する中小企業者を積極的に支援する制度の拡充を図り、それを具体化するために法律の改正が行われた。


中小企業への貸し渋り

 バブル崩壊後、不良債権処理に追われる銀行は、新たな不良債権を抱え込むことを恐れて新規の融資を控えたり(貸し渋り)、返済期限前に貸出金を回収(貸しはがし)しようとする傾向にある。しかし、銀行からの融資が受けられなければ新規事業や経営拡大につながらず、日本経済を縮小させてしまう。特に、経営体力の弱い中小企業は融資を受けられずに倒産してしまう場合も多い。


中小企業と規制緩和

 これまで設けられてきた様々な規制や保護を撤廃する動きが、近年各業界でみられる。この規制緩和は、合理化や事業拡大のチャンスであるが、中小企業や小規模な小売店に大きな打撃を与えている。

酒類販売自由化  酒類の販売は、これまで店舗間の距離や1店当たりの人口に規制が設けられていたが、1998年から段階的に規制緩和が行われ、2003年9月、完全に自由化された。これにより、大手スーパーをはじめ、コンビニエンスストアやドラッグストアなど酒類販売に参入する企業が相次ぎ、各販売店での価格・サービス面での競争が激化している。しかし、経営基盤の弱い中小販売店は、こうした競争に対応できずに閉店・廃業する例が相次いでいる。



中小企業向け金融

 中小企業向けの融資を専門に行う新しい銀行の設立が相次いでいる。2004年4月、中小企業の若手経営者が中心となって「日本振興銀行」を設立した。また、東京都も中小企業向けの融資を行う新銀行「新銀行東京」を設立。2005年に開業した。

従来の銀行との違い  新銀行の金利は、大手銀行と比べると割高である。しかし、会社の将来性や収益力を重視し、原則無担保・無保証で柔軟に融資を行うという点で、既存の銀行とは大きく異なる。

設立背景  既存の銀行は、不良債権処理に追われて資金の貸し出しという本来の機能を果たせていない。日本経済の活性化のためには、全企業の約99%を占める中小企業の復活が欠かせない。しかし、優れた技術がありながら、貸し渋りなどによって倒産を余儀なくされる中小企業も多い。新銀行設立が中小企業金融を活性化させるという期待が高まっている。

課題  最近では、大手銀行も中小企業向けの融資に力を入れ始めており、競争の激化は避けられない。また、経営が悪化する中小企業への融資は不良債権化する危険性が大きく、銀行の設立に疑問を抱く声も多い。






参考URL

http://www.kaishaseturitu.com/challenge/

http://kotobank.jp/word/


参考文献

政治・経済教育研究会編 「新課程用 政治・経済用語集」 2004 山川出版社

大芝亮・大山礼子・山岡道男・猪瀬武則・栗原久・葦名次夫・新井明・梶ヶ谷穣・富塚昇・宗万秀和・株式会社清水書院編集部著 「文部科学省検定済 高等学校 公民科 高等学校新政治・経済 改定版」 2008 清水書院

浜島書店編集部編 「最新図説 政経」 浜松書店

 


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