原子力発電4
出典: Jinkawiki
原発事故による人体への影響
東日本大震災では、原発事故による放射能が発生し人体に影響を及ぼすため、福島原発の周辺に住む住民に避難勧告が出された。 福島原発事故で使われている放射能測定単位は「シーベルト」である。これは放射能の「人体への影響」を表示する単位として扱われている。放射能が物質にあたったときその物質が吸収する放射能量はもちろん、放射能の強さに比例する。
チェルノブイリ事故では、放射性降下物は、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアだけでなく、ヨーロッパの広範な地域にまで降り注ぎ、汚染食品の摂取等による内部被曝も含めて、相当数の人々に影響を及ぼしたと見られている。とくに知られている影響として小児の甲状腺癌の発生がある。チェルノブイリ雲と呼ばれる放射性プルーム(radioactive plume)による放射能汚染の影響はアメリカにまで及んでおり、イギリスでは今なお小児の甲状腺癌を引き起こしているとの報告がある。
これまで、癌の原因は特定できないとされてきたが、2011年、ヘルムホルツ中央ミュンヘン(Helmholtz Zentrum München)の放射線細胞遺伝学部門の研究チームは、低線量の電離放射線に被曝したことを示す甲状腺乳頭癌の遺伝子変化を発見した。この遺伝子マーカーをいわゆる放射線指紋(radiation fingerprint)として用いることで、自然に発症した癌と放射能汚染に起因する癌を区別することが可能となってきた。これは癌の放射線病因論を示す初めての遺伝子マーカーを立証したものであり、チェルノブイリ細胞バンク(Chernobyl Tissue Bank)によるチェルノブイリ地区の甲状腺癌データの集約(研究目的として凍結細胞などの素材が利用可能)によってもたらされたとされる。
チェルノブイリ原子力発電所から約80キロ西にあるウクライナの農業地帯のNarodichesky地区に住む子供は、事故から十年以上を経ていながら、慢性的な低線量被曝下にあり、1993-1998年の6年間にわたる追跡調査によると、土壌に含まれるセシウム137の濃度に比例して、赤血球、白血球、血小板の減少、ヘモグロビン濃度の低下が観測され[46]、スパイロメトリー(Spirometry)を用いた検査からは、気道閉塞(Airway obstruction)および拘束性肺機能障害の有意な増加が観測されている[47]。