パーソナリティ障害
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
パーソナリティ障害(Personality disorder)とは、精神医学においては、一般的な成人に比べて極端な考えや行為を行ったりして、結果として社会への適応を著しく困難にしていたり、精神病理学的な症状によって本人が苦しんでいるような状態に陥っている人を言う。以前はPersonality disorderに「人格障害」の訳語が当てられていたが、日本語の「人格障害」という言葉は、人間の根幹を示しているような部分がある事、それにより否定的なニュアンスが強い事から「パーソナリティ障害」と訳語が変更されている。
パーソナリティ障害の分類
『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引』では、10種類のパーソナリティ障害を3つのカテゴリに分け規定している。
クラスターA 風変わりで自閉的で妄想を持ちやすく奇異で閉じこもりがちな性質を持つ。
・妄想性パーソナリティ障害 他人の動機を悪意のあるものと解釈するといった、広範な不信と疑い深さを特徴とする様式。根拠もなく、他人が自分を利用する、または騙すなどの疑いを持つなどの傾向がある。
・スキゾイドパーソナリティ障害 社会的関係からの遊離、対人関係状況での範囲の限定の広範な様式。孤立した行動を選択する、他人の賞賛や批判に対して無関心などの傾向がある
・統合失調型パーソナリティ障害 親密な関係では急に気楽でいられなくなること、そうした関係を形成する能力が足りないこと、および認知的または知覚的歪曲と行動の奇妙さのあることの目立った、社会的および対人関係的な欠陥の広範な様式で、奇異な話し方や、特異な行動を好むなどの傾向がある。
クラスターB 感情の混乱が激しく演技的で情緒的なのが特徴的。ストレスに対して脆弱で、他人を巻き込む事が多い。
・反社会性パーソナリティ 他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、自分の快楽や利益のために人をだます、良心の欠如などの傾向がある。
・境界性パーソナリティ障害 対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で、自傷行為、怒りの制御の困難などの傾向がある。
・演技性パーソナリティ障害 過度な情緒性と人の注意を引こうとする広範な様式で、芝居がかった態度や自分が注目の的になっていない状況では楽しくないなどの傾向がある。
・自己愛性パーソナリティ障害 誇大性、称賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な欠如で、過剰な賞賛を求める、尊大で傲慢な態度、特権意識などの傾向がある。
クラスターC
不安や恐怖心が強い性質をもつ。周りの評価が気になりそれがストレスとなる傾向がある
・回避性パーソナリティ障害 社会的制止、不全感、および否定的評価に対する過敏性の広範な様式で、好かれていると確信できなければ、人と関係を持ちたいと思わない、新しいことに取り掛かることに異常なほど引っ込み思案になるなどの傾向がある。 ・依存性パーソナリティ障害 面倒を見てもらいたいという広範な欲求があり、そのために従属的でしがみつく行動をとり、分離に対する不安を感じる。他人の助言や保証がなければ行動決定ができない、自身の生活の主要領域で、他人に責任を取ってもらうことを必要とするなどの傾向がある。
・強迫性パーソナリティ障害 秩序、完全主義、精神面および対人関係の統制にとらわれ、柔軟性、開放制、効率性が犠牲にされる広範な様式で、活動の主要点が見失われるまでに予定表にとらわれる、道徳、倫理、価値観などについて過度に誠実で良心的かつ融通が利かないなどの傾向がある。
特定不能のパーソナリティ障害
このカテゴリーはどの特定の人格障害の基準も満たさない人格機能の障害のためのものである。その例としては、2つ以上の人格障害の基準を持つが、どの人格障害の基準も完全には満たしておらず(混合性人格)しかしそれらが一緒になって、臨床的に著しい苦痛、または1つ以上の重要な機能領域における(例:社会的、または職業的)障害を引き起こしている場合である。このカテゴリーはまた、臨床家が、分類に含まれていないある特定の人格障害を診断に用いることが適切と診断した時にも使用することができる。例として、抑うつ性パーソナリティ障害および受動攻撃性パーソナリティ障害がある。
参考
American Psychiatric Association編 高橋三郎, 大野裕, 染矢俊幸訳 『DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引』医学書院
ハンドル shin