新自由主義5
出典: Jinkawiki
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新自由主義の問題点
自由主義国家に関する一般理論の内部でも、幾つかあいまいな論点や対立点が存在している。第一に、独占権力をどのように解釈するかという問題がある。競争はしばしば独占ないし寡占をもたらす。というのも、より強い季語湯がより弱い企業を駆逐するからである。ほとんどの新自由主義理論家の考えによれば、こうしたことは、競争相手の参入を実質的に阻むものが何もないかぎり、とくに問題はなく、むしろ効率を最大化するといわれている。いわゆる「自然独占」の場合はそれよりも難しい。電力供給網、ガスなどの分野では、供給・アクセス・価格設定上の国家規制は不可避である。部分的な規制緩和は可能かもしれないが、実際には、2002年のカリフォルニア州の電力危機がはっきりと示したように、暴利目的で乱用されたり、イギリスの民営化された鉄道の状況が証明したように、どうしようもない混乱と無秩序が発生する可能性も十分にある。 第二の大きな争点は「市場の失敗」に関する問題である。市場の失敗が起きるのは、個人や企業が自分たちの失敗を外部へはじきだし、自分たちにかかってくるコストのすべてを払おうとはしない場合である。この場合何らかの被害が環境、または人に、もたらされるのだが、新自由主義者たちはこうした問題の存在を認めると、ある者は一定の譲歩をして限定的な国家介入に賛成するが、他の者たちは何もしないほうがよいと主張する。それでも、なんらかの介入が行われるべきだとしたら、それは市場メカニズムを通じてなされるべきだということに、大方の新自由主義者は一致する。「競争の失敗」に対しても同じようなアプローチが選択される。全体の総コストが上昇してしまうような場合、国家による計画、規制、強制的調整を通じてコストの抑制をはかるべきだという意見が有力なのだが、ここでも新自由主義者はこうした介入に根深い不安を抱いている。
参考文献:デヴィット・ハーヴェイ 監訳 渡辺治 翻訳 森田成也・木下ちがや・大屋定晴・中村好孝 『新自由主義 その歴史的展開と現在』