イスラム文明
出典: Jinkawiki
概要
イスラム文明の特徴を一言でいうと融合文明であるということである。イスラム教とアラビア語を基調とし、それにギリシア・イラン・インドなどの先進文明を取り入れ、混ぜ合わせて出来た文明である。様々な色の液体を1つの容器に入れて混ぜ合わせると全く別の色になるように、様々な文明が融合して全く別の文明が作り出された、それがイスラム文明である。ペルシアの説話を骨子としてインド・アラビア・ギリシア・エジプトなどの説話を集大成した「アラビアン=ナイト」(千夜一夜物語)などは諸文明の融合を示すよい例である。
イスラム文明は、イスラム教を核とする普遍的文明であり、イスラム世界の各地に伝播し、その地域・民族の特色が加わり、イラン=イスラム文明・トルコ=イスラム文明・インド=イスラム文明など多様な文明が形成された。また中世ヨーロッパではイスラム教徒の著作がアラビア語からラテン語に翻訳され、ヨーロッパにおける学問の発達を促し、後のルネサンスの開花にも大きな影響を及ぼした。
自然科学が発達したこともイスラム文明の特色である。自然科学は近現代のヨーロッパ文明で大いに発達し、現代の我々の豊かで便利な生活を実現させたが、近代以前の文明のなかで自然科学が発達したことはまれで、わずかにヘレニズム文化とこのイスラム文化をあげることが出来るのみである。
またイスラム文化は都市文明で、その主な担い手は商人や手工業者らであり、美術・工芸などの分野も発達した。
ヨーロッパへの影響
イスラム文明は、古代ギリシャの哲学・自然科学の知識を消化・吸収し、化学などでは独自の発展を見せ、これらは、のちのヨーロッパ近代文化の発展にも大きな影響を与えた。 スペイン、ポルトガルの地はかってはアラブのイスラームの国であった。しかも、イスラーム世界のはしっこではなく、その中核をしめており、一時的にはイスラーム世界の最先進地域、ということは全世界で最先進地域にもなった。 スペインはイスラーム世界の中では後進地域であったが、しだいに発展し、一二-三世紀には文化がすでに衰えはじめていた中東をしのぐようになった。すなわち、スペインは一時的には中国を除く世界で、もっとも文化レベルが高くなったのである。これはスペインが大いに誇りとすべきことである。そして、キリスト教徒に征服されたスペインがその優れたイスラーム文化をイタリアや西欧に伝える橋渡しとなった。 今日のスペイン人は一般に、西欧人以上に、アラブに対して愛憎あわせもつアンビバレントな感情を持つ。すなわち、憎むべき侵略者で野蛮、非文明的な異教徒、邪教徒であり、スペインにぬぐえない汚点を残し、スペインを西欧諸国とは違う道に歩ませ、その発展を滞らせたと見る立場と、スペインもスペインたらしめ、すばらしい文明をもたらした人々であり、自らとも親近関係にあると見る立場のふたつである。
参考資料