中国のネット社会
出典: Jinkawiki
四・五億人を超えた網民
中国政府が管轄する「中国インターネット」情報センター(CNNIC)が2011年1月に発表した「第27次中国インターネット発展状況統計報告」によると、2010年12月までの時点で、中国のネット人口、すなわ「網民」(ネット市民)は4億5700万人に達した。全人口13億人強の34.3%にのぼり、2009年末から7330万人も増えている。 網民の分布は都市に傾いているものの、農村でも1億2500万人に達しており、決して無視できない数値となっている。 また、携帯電話からインターネットにアクセスする「携帯網民」の数は3億300万人で、全網民の66.2%を占めている。 インターネットの使用目的は複数回答で「検索」が81.9%、「音楽」が79.2%、「新聞」が77.2%と、上位3位を占めている。自ら主張を発表する主な手段には、BBS/掲示板、ブログ、思想性を持った特定サイト、ニュース・レスポンス、ミニブログがある。 また、オンラインで同時に交信できるインスタント・メッセンジャーを使用している網民は3億5300万人に達している。ブログ利用者の数は2億9500万人(全網民の64.4%)でソーシャル・ネットワーク・サービスを使用する網民の数は2億3500万人(全網民の51.4%)に達している。 これらの数値は、網民たちの意見表明に対する欲求がいかに大きいかを窺わせるが、中でもソーシャル・ネットワーク。サービスは今後さらなる成長が注目されるネット空間である。というのも、多機能であるだけでなく、「網民仲間が気軽に集まって特定のテーマに関して意見を交換する場」として機能しており、すでに巨大な人数が存在しているからだ。 もし、特定のテーマに集まった網民たちが「網上(バーチャル空間)」から「網下(リアル空間)」に飛び出したら、どうなるだろう。反日デモでさえ、最終的にはその矛先を政府に向けてくることは、2010年10月に起きた一連のデモが如実に証明している。
言論統制の根拠は何か
中華人民共和国憲法は、35条に「中華人民共和国の公民は、言論、出版、集会、結社、遊行(デモ活動)、示威をする自由がある。」と明記している。したがって、言論を規制するのは原則的には憲法に違反することになる。 ここで「公民」というのは法律概念で定義されたもので、中華人民共和国の国籍を有する者は、すべての中華人民共和国の「公民」である。それに対して「人民」というのは、政治概念により定義されたもので、「労働群衆を主体とする社会の成員」で、政治的権利をはく奪された思想犯などは、「公民」であっても「人民」ではない。 一方、憲法前文では「中華人民は、我が国の社会制度を敵視し、破壊する国内外の敵対勢力及び敵対分子に対して、闘争しなければならない」と規定し、憲法一条は「中華人民共和国は労働者階級が指導し、労働同盟を基礎とする人民民主専制の社会主義国家である。社会主義制度は中華人民共和国の根本制度である。いかなる組織あるいは個人も、社会主義制度を破壊することを禁止する」と定めている。 すなわち、35条に挙げられた自由は、あくまでも前文と一条で規定されている「社会主義制度」を擁護する条件の下のみ保障されると解釈され、詩に貯め言論や規制が正当化枯れるという理屈になるのである。したがって中華人民は「ものを言うこと」や「自分の意見を書くこと」といった自己主張に、日本人には考えられないほどの強烈な執着を持つ結果となる。現在、中国のネット空間で繰り広げられている言論の攻防は、この「憲法1条と35条の攻防である」と言っても過言ではない。