ユダヤ教Ⅰ
出典: Jinkawiki
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1、 現代のユダヤ世界
ユダヤ教は世界で最も長く続いてきた宗教的伝統の1つであり、その実践者はユダヤ教徒として知られている。ユダヤ教は、その信徒数こそ常に少なかったが、西欧文明や中近東の文明の展開に極めて重要な役割を果たしてきた。キリスト教はユダヤ教の基盤の上に立てられ、もう1つの偉大な唯一の伝統であるイスラームも、ユダヤ教の影響を受けた。ユダヤ人は、文化のあらゆる領域において、大きな業績をあげてきた。ユダヤ教に従う者たちを示す呼称が幾つかある。それはしばし同じように使われているが、異なる意味を持つ。ヘブルびとは、ヤハウェを自分たちのいちなる神として受け入れた様々な部族の成員である。「ヘブル」という用語は、通常、最古の時代から前2000紀の終わり頃までのユダヤ人を指すのに使用される。前2000年紀の終わり頃、ヘブルびとはカナンの土地を征服し、そこに定住した。エベルはヘブルびとの先祖であると言われている。しかし、証拠によれば、人名「エベル」と用語「ヘブル」は何の関係もない。古代中近東のほかの資料、「ハビル」と呼ばれている民族に言及するが、おそらくそれが「ヘブル」語源であろう。「イスラエルびと」という呼称は、2つの集団を指す。一般にイスラエルびとは、前1025年頃に、古代イスラエルの部族連合
を形成したヘブルびとの子孫である。彼らには、多分、ほかの民族の者も加わっていたであろう。「ユダヤ人」という呼称は、イフェダ、すなわちユダに由来する。ユダとは、前922年頃から586年まで存続したイスラエルの南国王、この国名は、イスラエルの人々を形成した多くの部族の1つにちなむものであり、それはやがて宗教国家になった。この国名はラテン語で「ユーダエウス」に由来する。紀元後70年以降、ユーダエアの人々は、世界の各地に散らされたが、彼らは「ユーダエウス」という呼称、それが短縮されて「ユダヤ人」となった。今日ユダヤ人という呼称は、宗教的集団の一員を指してより幅広い仕方で用いられている。民族的集団や国家的集団を指してではない。ユダヤ教の実践者はユダヤ人である。ユダヤ的背景がありユダヤ文化に預かる者もユダヤ人である。伝統的なユダヤ方によれば、ユダヤ人とは、母親がユダヤ人である者か、ラビの指導のもとにユダヤ教に改宗した者である。ユダヤ人が最も多く住んでいるのは、アメリカ、イスラエル、それにヨーロッパの多くの国々である。イスラエル人は、現代のイスラエル国家の市民である。
2、 通過儀礼
2—1 割礼
今日多くの病院で、医学的な理由から、生まれたばかりの男の子が割礼を受けている。しかし、ユダヤ人にとって、男子の世継ぎの割礼は医学的な見地から行われるのではない。それは、ユダヤ人の宗教共同体に迎え入れる儀式であり、アブラハムによってなされた契約を更新し、その子の神の契約の民にする。割礼は、生後8日目、少なくとも10人の男子のみまもるなかで伝統的にシナゴーグでとり行われてきた。たとえ、その日がシャバットや、祝日、ヨム・キプールのような断食の日であってもである。それは極めて重要な儀式なので、割礼がその子の命に関わる場合だけ、後日に延期することができる。儀式の時間は朝が望ましいが、それは契約を満たそうとしたアブラハムの熱心に倣うためである。割礼の儀式は、代母が男子を抱いてシナゴーグに入った時に始まる。これはその子のユダヤ人共同体の入会を意味する。シナゴーグに集まった者は、その子の入会を歓迎して、次の言葉を口にする。「幸いなるかな、来る子は。」
2−2 結婚
ユダヤ的伝統によれば、婚姻は神の定めた聖なる関係である。伝統的なユダヤ教
には、多くの宗教的・象徴的側面があり、結婚意義は、その儀式の厳粛性の中で示される。ラビの伝統においては、結婚は3つの段階を踏んだ。「シドゥヒーン」、「キドゥシーム」、そして「ニスゥイン」である。今日、約束は結婚の意思の単なる表明に過ぎないが、かつてそれは、日取りや、場所、持参金、金銭的援助などの取り決めが正式に書かれた法的拘束力をもつ契約だった。婚約はかつて、結婚の1年前に行われた。結婚と同じ厳粛性をそれに持たせるためである。婚約した女性は聖化された。新郎と新婦は、この二杯目のぶどう酒を、これから分かち合う生活の象徴として分かち合う。通常、この結婚式の儀式はラビの助言で終わり、その後で、杯かガラスが割られる。グラスを割るのは、喜びいっぱいの祝いの後で、地に足のついた生活に戻るためである。改革派と保守派の結婚式の場合、それは、彼らのより現代的なユダヤ的生き方に合わせている。ユダヤ教は、婚約の祝福と結婚契約書の朗読を省く。近年、改革派のユダヤ人は、平等主義の原則に立つ新しい契約を儀式の中に取り入れている。
2−3 死と服葬
伝統的なユダヤ教の理解によれば、肉体は死ぬことで元の土くれに戻り、霊魂は
それを与えられた神のもとに戻る。葬儀は簡素である。埋葬は、死後可能な限り速やかになされる。死者は無地の白装束に包まれ、簡素な棺の中に納められる。式次第は、紙片の朗読、追悼の言葉、追悼の祈りから成り立つ。
3、 ユダヤ教の影響
3−1宗教上の貢献 ユダヤ教文化やその宗教儀式の生ける伝説は、私たちの住む世界に大きな影響を与えてきた。ユダヤ教は様々な仕方で西欧文明に影響を受けを与えた。とくに、ユダヤ教は、他の2つの世界宗教であるキリスト教とイスラームに深い影響を与えてきた。この2つの宗教は、ユダヤ教の基本的原理を多く取り入れ、それを広めてきた。世界各地にすむユダヤ人は、彼らの住む国々の文化的・政治的・経済的発展の促進に寄与してきた。世界宗教へのユダヤ教の第一の主要な貢献は、その一神教、一なる神への信仰にある。古代宗教の中には、前2000年紀までに一神教の観念に移行したものもあるが、これらの古代文化の中で想像された一なる神はイスラエルの神の属性を欠き、そのため幾つかの要素がイスラエルの神をユニークなものにした。宗教へのユダヤ教の第二の重要な貢献は、道徳と倫理の領域においてである。人間の基本的な権利と義務、倫理
的行為、正義などの一般に受け入れられている規範の大半は、モーセの法に由来する。宗教への第三の重要な貢献は、自己の共同体への奉仕という考えである。ユダヤ教は、人間は自分に与えられた生の責任を取らなければならない、すなわち、神は人間を創造したことにたいし代価を要求されると教える。
3−2芸術 聖書は、芸術作品や建築物—とくにソロモンの神殿について多くを記述している。これらの記述はいずれも、古代イスラエルに豊かな芸術的伝統があったことを示唆する。伝統はすべて周辺には民族の様式の影響を受けるが、イスラエルの場合も同じである。ユダヤ人アーティストは、彼らの住む国の文化に与えるものとして、他のアーティストと同じく、自分たちの祖国の伝統に根ざした作品を生み出したり、新しい芸術的様式や思想の派を作り出す。
3−3哲学と神学
ユダヤの哲学は、バグダードのラビのアカデミーで、サアディア・ガオンから始まった。彼の朱著「信仰と意見の書」は、神の存在や霊的性格、世界の創造、人間の自由と責任といった、ユダヤ的教えの妥当性を示す努力であった。
3−4教育
教育、とくに若者の教育は、ユダヤ教の中で主要な役割を担ってきた。伝統的に、
ユダヤ教育は、ユダヤ人の宗教を中心としてきた。ラビのユダヤ教の時代、「イェシヴァ」のネットワークが発展し、主に聖書とかタルムード」を教えた。これらの学院は、多数の卓越した法規学者を生み出した。概していえば、この手の教育は、伝統的なユダヤ教徒にとって、最も敬意をはらわれた教育形態であったばかりか、一八世紀まで、主要な教育形態であった。ヨーロッパや中近東のユダヤ人は、ビジネスの分野で長い歴史を持っている。実際、ユダヤ人のたどったディアスポラの土地のルートの一部は、彼らの関わった金融業務や交易に関係している。アメリカにおいては、ユダヤ人も多種多様なビジネスを展開してきた。しかし、アメリカの大学における教育の機会均等は、ユダヤ人子弟に、かつては働くことのできなかった法律事務所や、ビジネス、その他の組織で活躍するのを可能にし、彼らはその専門分野やビジネス世界の主流に入り込んでいる。
3−5音楽
聖書は、主に讃美する音楽や、うた、踊りについて多くのことを書いている。150篇からなる詩篇はユダヤ人の讃歌集であり、ダビデ王はそのうちの多くを書いたとされる。現代の多くのユダヤ人作曲家や非ユダヤ人作曲家が、詩篇や聖書のその他の部分を主題にして作曲している。ユダヤ人の才能は、ポピュラー音楽の
世界でも発揮されている。オスカー・ハマースタインは、ニューヨーク市に少なくとも10のオペラ劇場を建てたオペラ興行主だった。その他のユダヤ人歌手には、メル・トーメ、ニール・ダイアモンド、エセル・マーマン、ハーシェル・ベルナルディ、バーブラ・ストライザンド、ポール・サイモン、アート・ガーファンクルらがいる。
ハンドル名:ko-ta-ki