移民4

出典: Jinkawiki

2016年8月1日 (月) 15:14 の版; 最新版を表示
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移民の今

移民は1980年代から増加傾向にある。増加のペースは一定ではなく、1990年代には増加率が低下したこともある。 移民は比較的少数の国に移住する傾向があるため(特にヨーロッパ内やOECD加盟国間)、それぞれの国では人口のかなりの部分を占めることもある。 移住は基本的に、貧しい国からより豊かな国への移動と説明される。1970年代半ばでは、世界の移民の50%弱が開発途上国に、42%がより開発の進んだ国に移住していた。今日では、開発途上国に暮らす移民は世界の移民の三分の一だけであり、60%がより開発の進んだ国で生活している。国際移民の49%は女性で、ほとんどの国において出移民も入移民も男女比率の差は、三つの要因の相互作用から説明することができる。第一は受入国の労働市場の機会の性質、第二は家族移民と長期滞在に対する開放の度合い、第三は送り出し国と受け入れ国双方の文化的・宗教的規範である。 2010年には、生まれた国と違う国で生活する国際移民の数は2億1400万人を数えていた。この数は世界の人口の3%に相当する。このことは移民を管理したり、さらには禁止しようとする国が訴える移民の政治的重要性が偽りであることをある程度示している。実際のところは、全体の人口増のペースのほうが速かったため、世界の国際移民の人口比率は、数十年間は部分的な増加に過ぎなかった。2000年には1億7500万の国際移民がいて、これは世界の人口の2.9%にあたる。1965年までさかのぼれば、この数は7500万人で2.3%であった。国際移民はこの数十年間の世界の変容の一端を担ってきたグローバル化の一部である。モノとサービスが以前より自由に国境を越えて取引されるようになると同時に、ますます多くの人が海外での居住と就労を求めるようになっている。また、EUなどの一部の経済圏内を除けば、移動の自由が必ずしも拡大しているわけではないが、グローバル化の構成要素としての、また国家レベルでは経済成長の牽引役としての、移民の役割への認識が高まりつつある。今後こうしたことが、特に先進国間での高技能移民をめぐる競争の激化を引き起こすと考えられる。

なぜ移住するのか

人々が外国への移住を強いる要因とそれを可能にする要因は社会学者と経済学者によって、「プッシュ」と「プル」という言葉で説明される。 「プッシュ」は経済力など、本国での状況を表し、「プル」はまともな職への就職の見込みなど、移住を考えている国の状況を表す。 プッシュ要因とプル要因は常に変化しており、両者のバランスも同様である。そうした変化が一因となって、移民数が大きく増減する。中米の国ホンジュラス人の5人に2人が職を失っており、5人中3人が賃金が同国の公定最低賃金の1か月128ドルを下回っていた。プッシュ要因は明らかだったが、米国などのより豊かな国での就職見込みと、そうした国にしっかり根付いたホンジュラス人コミュニティの存在など、重要なプル要因もあった。ハリケーン・ミッチの襲来をきっかけに、こうしたプル要因が強まったが、それにはホンジュラス政府が、たとえ短期間であっても自国民の海外での就労を支援する決定を下したことも影響した。同国政府は二国間協定に署名して、カナダの農場での季節労働や、ギリシャやオランダなどの運輸会社が運行する船舶での短期契約の仕事に、自国民が従事しやすくなるようにした。また、米国とは、ホンジュラス人不法移民を合法化して18カ月の合法的な滞在資格を与える協定を締結した。

これからの移民と課題

移民には過去から現在にかけて長い歴史がある ある程度は確実に予測できることの一つとして、これからも移民が続くということである。 アフリカの平原で何千年も前に始まった移住の旅は、今もなお続いており、人類がこの地球を故郷と呼ぶ限り続くだろう。 国際移民の現象は驚くほどの速さで変化しうる。移民送出国でも移民受入国でも政府や国家はこうした変化への対処に苦慮することがあり、今日の政策では明日の現実に対応できないかもしれない。こうした課題は、過去と現在の教訓が活かされなければ、いっそう困難なものになる。 国際移民という現象からわかることが一つあるとすれば、過去の経験と他国の経験から学ぶべきことが多くあり、状況の変化に応じなければ、高い代償を払うことになる、というものである。OECDの重要な使命は、各国と協力してこうした経験を共有し、そこから学ぶことである。 移民はOECD諸国にとって好機でもあり課題でもある。人口の高齢化によって、特にビジネス界からの移民の需要がさらに高まることになるだろう。 国内労働者への訓練と教育の改善と退職年齢の引き上げを含むより幅広い改革が必要だろう

参考文献 「よくわかる国際移民」 ブライアン・キーリー 著 OECD 編  濱田久美子 訳

Y.S


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