チュータースクール4
出典: Jinkawiki
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概要
1982年、ニューヨークのイーストハーレム第四学区は自由入学制度を導入すると同時に、小規模の中学校をいくつか開設し、その特色づくりのため校長にカリキュラムを含め学校運営を見直す権限を与えた。これがチャーター・スクールの始まりだという人もいる。
チャーター・スクールという概念がアメリカで議論され始めたのは、1988年頃からである。
その年、注目すべきできごとがいくつか起きている。まずレイパッドが著書のなかで、教員グループが現地教育委員会に提示する教育的ベンチャーのための包括的計画を、「エジュケイショナル・チャーター」と命名し、計画を提示し、いったん認可されれば、予算の実施やスタッフの選定を自主的に決定する権限をその教員グループに与えるべきだ、と主張した。また、 フィラデルフィア学区が他にさきがけて「チャータリング」という公立校の再編実験を始めた。他方イギリスでは、現地の学区から抜け出し、いわば全国に相当する学区に属する機会を公立校に与える「教育改革法」が制定された。
チャーター・スクールの基本概念を初めて体系化したのはテッド・コルデリーである。
1 学校は複数の当事者によって、組織、所有、運営される。
2 組織者はチャーターのために2つ以上の公共機関に申請できる。
3 学校は法人格をもつ。
4 学校は公立であるため、厚生・安全に関する法に従う。
5 五学校は生徒の学業成績に責任を負う。その目的を達成できなければ、チャーターを失う。
6 学校は制度上、運営上の慣習から自由である。
7 学校は選択される学校である。いかなる生徒も入学を強制されない。
8 州は学校予算の正当な部分を生徒の学区からチャーター・スクールへ委譲する。
9 新しい学校の設計に参加する場合、教員は恩給の権利を残したまま本務校から出校許可を受ける。
これら9つの項目を平たく言い換えると、チャーター・スクールは誰にでも申請可能であり、それを認可する公共機関は二つ以上あり、認可されたチャーター·スクールは学区オフィスから法的に独立しているが、公立校であるため政教牙離や差別禁止の原則を守り、生徒の学業成績に結果責任を負う限りにおいて運営が許される。またチャーター·スクールは州の教育コードや学区の方針から自由であり、通学区城をもたない。その予算は従来校と同じ割合で生徒の人数分だけ州から給付される。したがって、新たな予算を設
けない。そして従来校からチャーター·スクールへ転任する場合、教員は恩給の権利と従来校へもどる権利を保証される、となる。
そしてこのような特徴をもつチャーター·スクールに二つのことを期待した。
1つは、教育目標や教え方などにおいて父母の要求に敏感に応えることである。もう1つは、学区の従来校にも改革の刺激をもたらすことである。
基準
テッド・コルデリーの提案が各州の法制化のもとになったことは確かだが、実際の学校は州ごとに法律や学校形態は異なる。チャーター・スクールの制度理解には比較する基準をあげておくことで役立つ。 一般には次のように基準が考えられ、それを多く満たす州ほどチャーター・スクールを多く生み出す可能性が高まる。 1 学区教育委員会以外の公共団体にチャーター・スクールを認可する権限を与えているかどうか。最強のチャーター・スクール法は複数の異なる公共団体にこの権限を与え、認可のハードルを下げている。逆に最弱の方法は学区教育委員会にしかこの権限を認めないため、チャーター・スクールの誕生は困難。 2 いろいろな個人やグループにチャーター・スクール震災の資格を認めているかどうか。最強の方法は宗教組織を除く、ほとんどすべての市民や組織に申請資格を認めている。逆は既存の公立校にチャーター・スクールへの転換を認めるだけである。 3 学区からの法的、財政的独立をチャーター・スクールに与えているかどうか。最強の方法はチャーター・スクールに独立した法人格と公的資金の直接的な提供を認めている。逆は従来通りの、チャーター・スクールを法的、財政的に学区の傘下に置く。 4 チャーター・スクールを公立校に関する州の教育コードや現地学区の方針から自由にしているかどうか。最強の方法はその自由を認めている。逆はその自由の範囲を制限している、もしくは場合によるケース。 5 チャーター・スクールの開設数に上限を設けているかどうか。最強の方法は上限を設けない。逆は、予算に上限を設け財政的に開設数を制限する。
参考文献
チャーター・スクール アメリカ公教育における独立運動 鵜浦裕 勁草書房(2001) アメリカの教育 村田鈴子 信山社(1997)