デンマークのエネルギー自給2

出典: Jinkawiki

2008年7月31日 (木) 13:47 の版; 最新版を表示
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 デンマークのエネルギー自給は1972年はわずか2%であった。それが、1973年の石油危機をきっかけにエネルギー自給に取り組み始め、2000年には139%にまでなった。最初の計画では、原子力発電も入っていたが、市民の反対で取りやめた。力を入れてきたのは、風力発電、バイオガス、麦わら、ごみ発電などの自然エネルギーである。将来、北海油田が枯渇するまでには、全てを自然エネルギーに置き換えていくことを目指している。


 風力発電  デンマークは石油危機をきっかけに風力発電に本格的に取り組み始め、2004年現在国内電力の15%を賄うようになるとともに、デンマークのメーカーの風力発電機器は世界シェアの約半分を占め、日本シェアの63%を占めている。デンマークでは、いたるところに風力発電の風車がある。その約83%が市民の出資によるものである。投資により7.1%の利益が出るそうだ。  最近では、海に風車を建設する洋上風車に重点が移ってきた。陸上だと、風車を運搬する道路などの制限により、より多き風車は建てられない。ところが、洋上だとそのような問題はないので、大きな風車を建てることが可能である。規模が大きいほど、コストは安くなり、いまや、世界的には、風力発電コストは、火力発電とほとんど肩を並べるところまで来ている。風車の塔の中には、制御装置があり、情報は逐一、メーカーに送られている。風車は遠隔制御可能であり、必要があれば、メーカーから保守要員が駆け付けられるようになっている。最近の洋上風車には、ヘリポートがつけられ、ヘリコプターで駆けつけられるようになっている。


 地域暖房  とても寒いデンマークにとって暖房は不可欠である。デンマークの暖房は、温水による地域暖房を行っているところが多い。中でもコジェネ発電(発電+余熱利用による温水供給)を行っているところが多い。サムソ島では、既に電力供給は100%に達しているため、地域暖房専用の施設をつくっている。

 風力発電も地域暖房も風や天候に左右される。その変動はどうしているのか。デンマークでは風量発電がベース発電になっており、不足分を火力発電でカバーしている。そのため、供給をコントロールしている電力会社は需要に対し1時間前には風力発電の発電量が把握できるITシステムを持っている。これは高いIT技術があってこそできることである。


 バイオガス・コージェネ発電  農業国デンマークらしいのが、家畜の糞尿による、バイオガス・コージェネ発電(発電+余熱利用による温水供給)である。家畜の糞尿をはっこうさせると、メタンと二酸化炭素を主成分としたバイオガスが発生する。メタンは天然ガスの主成分であることからわかる通り、バイオガスをもやすことにより、かなりなエネルギーが得られる。デンマークではそれをコージェネ発電(発電+給湯)に利用している。


 ゴミの有効利用  エネルギー資源の有効利用で見逃せないのが、ゴミの有効利用である。昔、デンマークでは分別せずにごみを埋め立てていた。その中には生ゴミも含まれており、それが醗酵してメタンが発生する。埋め立ててから20年はメタンが発生するという。そのメタンを集めて、コージェネ発電に利用している。その後、19997年、可燃ゴミの埋め立てが禁止され、可燃ゴミを燃やしてゴミ・コージェネ発電をするようになった。これは、日本の火災事故で問題になったPDFではない。PDFは火力は強いが、それを製造するのに余計なエネルギーを使うので、エネルギー効率から言うと得策ではない。デンマークでは、燃えるゴミを集めてそのまま燃やすことにより、コージェネ発電をしている。地域によっては、麦わらやウッドチップも一緒に燃やしてエネルギーを得ている。


 ところで、麦わらなどの植物を燃やした時に二酸化炭素が発生するが、この二酸化炭素は地球温暖化に影響はないのか。実はこれは、地球温暖化を促進させるものではない。この二酸化炭素は、植物が光合成で空気中から吸収したものが、もとの空気中に戻っただけである。そして、その二酸化炭素は再び、植物が光合成で吸収する。この循環がずっと繰り返すから、この循環が途切れないように、また、地上の植物量が減少しないように適切に管理すれば、地球温暖化には影響しない。このような性質をカーボンニュートラルという。


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