移民の受け入れ

出典: Jinkawiki

2020年1月2日 (木) 20:09 の版; 最新版を表示
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[外国人労働者と移民と難民の違い]

 外国人労働者は、働くことを目的にやってくる外国人であり、滞在が短期間である場合が多い。それに対して、移民は定住する外国人であって必ずしも働くために来ているわけではなく、また家族と一緒に住み続ける場合が多い。移民(英語では、入ってくる移民はimmigrant、出ていく移民はemigrantと呼ばれる)と似た用語として難民(refugee)があるが、難民は政治・宗教・人種などの理由による迫害を恐れ、自国を離れて国外に逃げた人々のことである。


移民に対して、各国がどのような対応をしているかを説明する。

[アメリカ]

 移民国家と呼ばれるアメリカは文字通り、移民によって築かれた国である。歴史を振り返っても、移民を積極的に受け入れてきたといえるアメリカだが、少しずつ移民政策を転換させてきている。現在、トランプ政権では次のような方針が打ち出されている。朝日新聞デジタルの記事(2019年5月17日)によると、「トランプ大統領は年間の合法な移民数を現行水準近辺に維持する方針としつつも、能力ベースの制度とし、永住権の57%を雇用・技術ベースとしたい考え。」とある。このように、アメリカでは移民に一定の条件を設けて制限しつつも、受け入れ数は維持している。


[イギリス]

 移民問題は、イギリスのEU離脱の一要因ともなっている。イギリスは、戦後の1948年に国籍法を制定し、EU加盟国の市民がイギリス本土へ自由に移動することを認めていた。しかし、1958年のノッティングビルでの人種暴動をきっかけに、1962年には英連邦移民法を制定し、EU加盟国の市民も含めた移民を制限し始めた。その後、2000年代になると、労働力が不足したことによって、移民を受け入れるようになった。ただし、この受け入れは学歴や職歴をポイントとして加算し、基準を満たす移民を高度技能民として選択的に受け入れるというものであった。しかし、現状のイギリスにおいては年代間の意見の差異が見られ、若年層は移民受け入れに対して比較的寛容であり、年齢が上がるにつれて消極的である。このように、イギリスの中でも移民に対しては意見が混在している。


[日本]

 戦後の東京は焼け野原であったため、戦前都会に居た人々が終戦後には故郷に戻って田舎で働いた。したがって、戦後の日本は農村の労働力が余っていたため、外国人労働者として移民を受け入れなかった。その後も日本は移民の受け入れに対して、否定的であったが、安倍政権の下で入管難民法が2018年12月8日に改正され、2019年4月から施行され、法務省の外局として出入国在留管理庁(入管庁)も2019年4月1日に発足した。不法就労が多かったなどといった日本の現状を背景に、この改正では「特定技能1号」と「特定技能2号」という在留資格を新たに設け、外国人労働者に対して業種に応じた能力(知識や経験、熟練技能)を求めた上での受け入れをすることにした。1993年に導入された技能実習制度とは異なるとしているが、対象領域についてなど検討中のことも多く、法案が強引に成立されたことから、受け入れに積極的な姿勢を示したのか、あるいは早急に支持率を得るためなのか不透明な部分も見える。しかし、現在の日本人は人手不足の問題も抱えており、外国人労働者の受け入れに対する考え方が変わってきているのは確かである。


表1 「特定技能1号」と「特定技能2号」

特定技能1号                           

・相当程度の知識または経験を要する技能を持つ外国人に就労を許可する。

・最長5年の技能実習修了または技能と日本語力の試験合格によって資格を取得できる。

・在留期間は通年5年。

・家族の帯同は認めない。


特定技能2号

・1号の試験より高度な試験に合格した、熟練した技能を持つ外国人が資格を取得できる。

・1~3年ごとの期間更新が可能。(更新回数に制限なし。)

・10年の滞在で永住権の取得要件の一つを満たす。

・家族の帯同を認める。

上記の表は「移民・外国人と日本社会 人口学ライブラリー18」(小崎敏男・佐藤龍三郎,2019,原書房)のP.215の文章を引用し、作成した。


 移民の受け入れに対する方針は各国によって様々である。また、受け入れに積極的であっても全面的に受け入れるというわけではなく、基準を設けて移民の影響(犯罪増加や労働条件低下)などを少なくしようとしているように見受けられる。


[参考文献]

・「外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?」(内藤正典,2019,集英社)

・「国際人口移動の新時代 人口学ライブラリー4」(吉田良生・河野稠果,2006,原書房)

・「英国のEU離脱とEUの未来」(須網隆夫・21世紀政策研究所,2018,日本評論社)

・「移民・外国人と日本社会 人口学ライブラリー18」(小崎敏男・佐藤龍三郎,2019,原書房)

・「トランプ米大統領、新移民政策を提案 能力ベースの制度へ」(朝日新聞デジタル 2019年5月17日)  http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKCN1SM2LY.html

・「(社説) 改正入管法成立へ 多くの課題を残したまま」  (朝日新聞デジタル 2018年12月8日)  https://www.asahi.com/articles/DA3S13803208.html?iref=pc_ss_date

・「外国人就労拡大へ、新制度スタート 『入管庁』発足」  (朝日新聞デジタル 2019年4月1日)  https://www.asahi.com/articles/ASM3Z42VPM3ZUTIL007.html?iref=pc_ss_date

・日本経済新聞 2019年12月12日付国際面

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