世界遺産

出典: Jinkawiki

2010年2月11日 (木) 16:20 の版; 最新版を表示
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目次

世界遺産

意味・目的

様々な国や地域の誇る文化財や自然環境を人類共通簿遺産として守り、次世代に伝えるため1972年にユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」に基づき登録された遺産。ユネスコの定義によると、世界遺産とは、人類が過去から受け継ぎ、未来に引き継いでいくべき「顕著で普遍的な」価値のある自然や文化財のこと。 尚、世界遺産条約の正式名称は、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する法律という。  世界遺産条約は、1959年にエジプトで計画されたダム建設がきっかけとなっている。エジプトのアスワン・ハイ・ダム建設で水没するはずだったアブ・シンベル神殿が、国際社会の支援を得たユネスコにより、安全な場所に移築され、文化財保護の意識が世界的に高まったことだった。この出来事から世界遺産という概念が具現化されたとされる。そして、米国が呼びかけた自然保護の国際協力とも呼応し、世界遺産の概念が生まれた。


遺産登録

 遺産登録までの道のりは長く、早くても3年がかり。各国は原則1年につき1件の候補地をユネスコに推薦できる。その1年前には、順番待ちの列と言える候補地リストに登録しておかなく必要がある。  各国が推薦すると、ユネスコの専門機関が現地調査を実施する。文化遺産候補は、国際記念物遺跡会議が現地調査し報告をする。一方、自然遺産候補は国際自然保護連合が現地調査し報告する仕組みとなっている。その結果を基に、条約締約国21か国で構成する世界遺産委員会が世界遺産に登録するかどうかを決める。  登録されると、その国の政府は、遺産を保護していく国際的義務を負う。


1.まずは各国政府が世界遺産条約を締結しなければならない。国内の暫定リストを作成し、ユネスコ世界遺産センターに提出する。暫定リストに記載された物件の中から条件が整ったものを、原則として1年につき各国1物件(世界遺産を一つも持たない国を除く)をユネスコ世界遺産センターに推薦する。

2.ユネスコ世界遺産センターが各国政府からの推薦書を受理する→推薦された物件に関して、文化遺産についてICOMOS(国際記念物遺跡会議)、自然遺産についてはIUCN(国際自然保護連合)の専門機関に、現地調査の実施を依頼する。

3.ユネスコ世界遺産センターからICOWOSまたはIUCNによる調査が行われ、ICOMOSとIUCNの専門家が現地調査を実施し、当該地の価値や保護・保存状態、今後の保全・保存管理計画などについて評価報告書を作成。ユネスコ世界遺産センターに報告書を提出。

4.最終的に世界遺産委員会がICOMOS、IUCNの報告に基づき、世界遺産リストへの登録の可否を決定する。


種類

世界遺産は文化遺産・自然遺産・複合遺産の3つに分類することができる。文化遺産とは、顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観などの遺産のことである。 自然遺産とは、顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、景観、絶滅のおそれのある動植物の生息・生息地などを含む地域のことを指す。また、複合遺産は、文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産のことである。


文化遺産・自然遺産の定義(世界遺産条約より引用)


文化遺産・自然遺産の定義は、世界遺産条約の第1条、第2条で明記されている。

[第1条]

この条約の適用上、「文化遺産」とは、次のものをいう。 記念工作物 建築物、記念的意義を有する彫刻及び絵画、考古学的な性質の物件及び構造物、金石文、洞穴住居並びにこれらの物件の組合せであって、歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの 建造物群 独立し又は連続した建造物の群であって、その建築様式、均質性又は景観内の位置のために、歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの 遺跡 人工の所産(自然と結合したものを含む。)及び考古学的遺跡を含む区域であって、歴史上、芸術上、民族学上又は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの


[第2条]

この条約の適用上、「自然遺産」とは、次のものをいう。 無生物又は生物の生成物又は生成物群から成る特徴のある自然の地域であって、観賞上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの 地質学的又は地形学的形成物及び脅威にさらされている動物又は植物の種の生息地又は自生地として区域が明確に定められている地域であって、学術上又は保存上顕著な普遍的価値を有するもの 自然の風景地及び区域が明確に定められている自然の地域であって、学術上、保存上又は景観上顕著な普遍的価値を有するもの


世界遺産の数

種類別世界遺産リスト登録件数は2008年7月現在、文化遺産679、自然遺産174、複合遺産25の合計878となっている。


日本の世界遺産

現在日本では14の世界遺産がある。内訳は文化遺産11、自然遺産3となっている。

文化遺産

法隆寺地域の仏教建造物:1993

姫路城:1993

古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市):1994

白川郷・五箇山の合掌造り集落:1995

原爆ドーム:1996

厳島神社:1996

古都奈良の文化財:1998

日光の社寺:1999

琉球王国のグスク及び関連遺産群:2000

紀伊山地の霊場と参詣道:2004

石見銀山遺跡とその文化的景観:2007


自然遺産

屋久島:1993

白神山地:1993

知床:2005


登録基準

(1) 人間の物を作り出すことへの才能を表わす傑作であるということ。

(2) 建物、技術、記念碑、景観設計、都市計画の発展を、ある期間やある文化圏によって人々が価値の重要な交流を示していること。

(3) 現在も存在する、またはすでに消失してしまった文化的な伝統や文明に関する、独自な、あるいは稀な証拠を示していること。

(4) 人間が営んできた歴史の極めて大切な段階を表わしている建築様式や技術的な集合体、素晴らしい眺めなどに関する、とても優秀な見本であること。

(5) 歴史の流れにより、その存続が危ぶまれているもの、文化を代表するような伝統的集落、土地の利用に周囲とは違ってひときわ目立つ例。

(6) 際だって普遍的な価値を有する出来事や、現在まで受け継がれている伝統や思想、信仰、または、芸術的作品や文学的作品と、直接か明らかに関連しているもの。(他の基準と組み合わせて採用されるのが望ましいとされている)

(7) 同じような例を見ない自然の美しさや、美的要素をそなえた優れた自然現象や地域を含むこと。

(8) 地球の歴史上の特に大切な段階を示す、誰が見ても明らかに見本になるもの。(生物の記録や地形発達などの地理学的な進行の過程、地形の特性や自然地理的な特性も含まれる)

(9) 陸の上、淡水海水域、動物や植物の進化や発展に、進行しつつある大変大切な生態学的、生物学的な過程を代表するものであること。

(10) 生物の様々な種類の野生状態での保全にあたり、最も重要である自然の環境があること。これには絶滅の危機にある種も含まれる。

※2007年以降の登録には、以上の基準が適用。 (1)~(6)は文化遺産 (7)~(10)は自然遺産、両方の基準で登録するものは複合遺産。

上記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、適切な保護管理体制がとられていることが必要。


参考文献

天井勝海(編)(2007)「世界遺産 建築の不思議」ナツメ社 読売新聞(東京朝刊)2007.02.17  特集 基礎からわかる「世界遺産」

財団法人日本ユネスコ協会連盟「世界遺産について 世界遺産とは」 http://www.unesco.jp/contents/isan/about.html 財団法人日本ユネスコ協会連盟「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する法律」 http://www.unesco.jp/contents/isan/treaty.html


小林克己著 『絶対いつか行きたい世界遺産ベスト100―「地球の宝物」に出会える本』  三笠書房   2008年3月27日     

知床財団著 『知床観察ガイド』 山と渓谷社  2004年7月1日

青井汎著  『宮崎アニメの暗号』 新潮社  2004年8月

切通理作著 『宮崎駿の世界』 筑摩書房  2001年8月


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