エラスムス計画
出典: Jinkawiki
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エラスムス計画(The European Community Action Scheme for the Mobility of University Students=ERASUMS)は1987年にEC(のちのEU)が国策として打ち出した留学生政策である。 エラスムス計画は、EC諸国における各種の人材養成や、科学・技術分野における加盟国間の人物交流協力の計画の一環として行われる、学生交流をも含めた大学間交流の促進計画である。ちなみに、エラスムスとは、中世の高名な学者の名称から名付けた。 また、ECがEUになってからのちの1995年にエラスムス計画はソクラテス計画に発展した。
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エラスムス計画にいたるまで
EC(ヨーロッパ共同体)の設立 1950年代に、EC(ヨーロッパ共同体)が、経済協力を目的に設立された。当初ECの扱う教育に関する問題は、職業訓練と、教育から雇用への移行の領域のみであった。しかし、1970年代になって、高等教育がECで議論されるようになると、学生の国際移動の奨励が最優先課題のひとつに挙げられた。ここで1976年に創設されたのが「共同学習プログラム(Joint Study Program : JSP)」である。JSPでは1年以内の学生交流を行う学部間ネットワークづくりのための機関助成を行ってきたが、学生奨学金制度は含まれていなかった。1980年代にはいると、留学プログラムに関する研究プロジェクトが行われ、その結果により、JSPは見直される形で1986年に廃止され、新たにエラスムス計画が1987年にはじまったのである。
エラスムス計画の目的
エラスムス計画は、欧州レベルで高等教育の拡充をはかり、社会の発展に貢献することを目的としている。文部科学省の資料によると、以下の5つの目的があるとされる。
1)EC全体として人的資源を養成・確保すること
2)世界市場でECの競争力を向上させること
3)加盟国の大学間の協力関係を強化させること
4)EC市民という意識を育てること
5)域内での協力事業への参加経験を学卒者に与えること
エラスムス計画における支援事業
支援の対象となる主体は、大学間協力プログラム(ICPs)といわれる学生交流を行政面・学術面でサポートするための学部間ネットワークにおいて必要な諸活動や事業などである。ある意味で社会への投資に近い。なお、エラスムス計画における支援事業は以下のとおりである。
1)学生流動化事業
2)教員流動化事業
3)共同カリキュラム開発事業
4)集中講座
なお、学生への支援に関しては、参加各国に設置されているエラスムス学生助成金交付機関(NGAA)によって、旅費や語学学習費用、滞在費などの助成を行っている。
エラスムス計画の当時の状態
1987年から1995年まで行われたエラスムス計画は、年間3,000人の学生交流と1,000人の教員交流が実現した。ちなみに参加したのは12カ国で、参加学校数は300校程度だったという。
エラスムス計画における問題点
エラスムス計画を行っているうちにさまざまな問題点がでてきた。
1)予算不足
年を経るうちにエラスムス留学生の需要が高まっていった結果、それに見合う予算が不足してしまった。助成金のための予算のほか、事務運営のための予算などが十分に確保できないでいる。
2)学生移動の不均衡
EC圏内の国によっては、言語の異なる国存在していることは否めない。それによって学生移動は英語フランス語圏の地域に集中してしまう結果となってしまった。
3)移動する学生自身の不安
学生自身への助成金の低さもあるが、他国で勉強するということは簡単なことではない。それにより、学生自身に勉学への不安、金銭面での不安、単位認定への不安などさまざまな不安が生じてくる。
4)学生宿舎の絶対的不足
5)自由流動学生の相対的不利
エラスムス計画の支援対象は、ICPsを行う大学に限定しているため、それに関係なく留学を希望する学生にはエラスムス計画では一切の支援はない。そのため、相対的に不利が生じてしまう。
なお、ECがEUになってからのちの1995年にエラスムス計画はソクラテス計画の一部へと化した。
参考資料
ウルリッヒ・タイヒラー 馬越・吉川 監訳(2006)ヨーロッパの高等教育改革 玉川大学出版部