海岸段丘
出典: Jinkawiki
海岸線に沿って分布する階段状地形。平坦面を段丘面、その前面の崖を段丘崖という。今から15万年ほど前の氷期以降、12万~13万年ほど前の最終間氷期にかけて海面上昇が生じ、海岸が波による侵食(波食)を受けて海食台といわれる浅海底が生じた。その後数万年前以降の最終氷期を通じて、その海食台が部分的には波や風や川の働きを受けて変形しながら海面上に出て、さらに2万年前以降の後氷期の海面上昇期を通して、地盤が波食されずに隆起し続けているために、前面に海食崖が生じたものである。
概要
海岸段丘面の性状は陸地からどれほどの土砂礫が海岸に供給されるかによって異なる。陸地から土砂礫があまり供給されなかった所では、三浦半島や江の島のように、岩盤からなる海食台上に土砂があまりない侵食性の段丘面が生じる。沖縄やサイパン島、グアム島などのようなサンゴ島の海岸段丘も同様で、海面上昇期に波食によって沖に傾斜した海食台(礁斜面とよばれる)が発達し、海面の高さには平坦なサンゴ礁が発達する。5000年ほど前の縄文海進期に生じた入り江が埋め残された霞ヶ浦(かすみがうら)のような海跡湖(潟湖(せきこ)、ラグーン)の湖岸でも同様な地形変化が生じ、その後の海面低下および継続する地盤の隆起によって湖岸平野ができた。
これとは対照的に、海進時のみではなく海退期にも陸地から土砂礫が供給されて入り江や海食台上に土砂礫が厚く堆積した所では、堆積性の段丘面が発達した。一方、既存の台地、丘陵地が波食されて生じた土砂が、海進期には海食台上に堆積したものの海退期には陸地から土砂が供給されなかった所では、たとえば房総半島の下総台地などのように、堆積していた土砂礫が再移動、再堆積しつつ離水した。
なお、数万年前から2万年ほど前までの最終氷期と同様に、15万年、25万年、35万年前にも世界的な氷期があり、海面は世界的に低下した。その後の間氷期に数万年間で100メートルほどの海面上昇が生じたため、最終氷期と同様な地形変化が以前にも生じていたに違いないと考えられている。しかし、昔の段丘ほど段丘崖はなだらかで、段丘面も侵食されて狭くなっていることが多い。
海岸段丘面の高度は土地の隆起速度によって異なる。隆起速度がとくに大きな海岸では、外房の海岸のように、5000年ほど前の縄文海進期の波食によって生じた海食台と海岸に生じた海岸低地あるいはベンチ(波食棚)とが離水して、標高20メートルを越える高い段丘面(完新世段丘という)になっている。当時の旧海面高度は世界的に現在より2メートルほど高かっただけなので、土地は最近の5000年間で20メートルほども隆起したことになる。同様に、今から12万~13万年前の最終間氷期の旧海面高度は世界的に現在より5メートルほど高かっただけなのに、下末吉面とよばれている当時の海成段丘(成因に着目した呼称)面は、関東平野周辺では40~100メートルほどの高さがあることから、10万年間ほどの間に関東平野の縁辺部は数十メートルも隆起したことがわかる。
土地が隆起する理由は大きなプレートの運動に規定されていると考えられているが、川や波によって激しく侵食されるほどに陸地は軽くなり、地殻均衡(アイソスタシー)が成り立つように隆起している可能性が高い。世界の安定大陸の海岸にも海岸段丘面が発達するのはこのためかもしれない。
北海道の海岸(知床岬など)や秋田県男鹿半島,高知県室戸岬などに典型的な海岸段丘が発達している。また、特殊な海岸段丘の例としては、パプアニューギニア・ヒュオン半島に発達したものがあげられる。この地域は隆起速度が速く、また汀線部にサンゴ礁が発達するため、数多くのサンゴ段丘面が形成されている。
参考文献
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E6%B5%B7%E5%B2%B8%E6%AE%B5%E4%B8%98/ http://okwave.jp/qa35987.html?rel=innerHtml