オーストラリアの教育

出典: Jinkawiki

2009年1月30日 (金) 07:37 の版; 最新版を表示
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目次

概要

オーストラリアは人口約2000万人(日本の約6分の1)の国である。学校の数は約1万校。そのうち約60%が公立、約30%がカトリック校、約10%がその他の私立校。義務教育は6歳から15歳まで(タスマニア州のみ16歳まで)。1クラスの生徒数は多くても25人ほどである。就学前にの準備学年(Preparatory Year)を経て、1~6年生(または7年生)までが小学校、7年生(または8年生)から10年生まで中学校(ジュュニアセカンダリー)、11~12年生が高校(シニアセカンダリー)で勉強し高等期間への進学や就職の準備をする。

特徴

  1. 指定された教科書はない
  2. 先生の役割
  3. 州ごとに教育制度が異なる
  4. カリキュラムの標準規格
  5. 学年の考え方
  6. 学校生活
  7. 時間割
  8. オーストラリアの「総合的な学習」

指定された教科書はない

オーストラリアでは政府によって決められた教科書はない。各州教育省によって告示された学習指導要領をもとに、各学校が教材だけでなく、カリキュラムもそれぞれ独自に作るしくみとなっている。学校の先生方の大切な仕事として教材開発、カリキュラム開発も含まれている。実際、使われている教材はオリジナルのもの、市販のテキストや教師用資料に手を加えたものなど、授業内容と子供たちの興味関心に合わせて工夫されている。そうして作られたプリントなどが配布されることがほとんどで、教科ごとに教科書があるというわけではない。

このように指定教科書がない背景には、オーストラリアの教育が「知識」よりも「考える力」や「コミュニケーション能力」の育成に力が入れられていることがあげられる。講義式の一斉授業はあまりなく、グループディスカッションやプレゼンテーション、リサーチワーク(調べ学習)なども小学校低学年のうちから始めている。

先生の役割

授業では先生の役割として、「教える人(Teacher)」というよりは、「生徒の学びをうながす役目の人」という意味合いの「ファシリテイター(Facilitator)」であるという考え方がある。答えや結論をを見つけ出すのは生徒自身であり、先生は生徒がきちんと自分なりの考えを持てるように手助けする存在であるというもの。

「○○についてあなたの意見は何ですか?」「なぜ○○だとあなたは思いますか?」と、先生や大人が期待する答えを生徒が探そうとするのではなく、あくまで自分の考えを言えるように質問の仕方にも工夫がある。知識を問う質問ばかりでなく、答えが1つではない意見を問う質問が多いのも特徴。多文化社会のオーストラリアでは、幼い頃から自分とは違った意見、考え方があるということを受け入れる精神はとても大切なこととされる。

また先生と生徒の関係については、親しい友達のような関係は作らず、年齢に関係なく先生はあくまで先生として毅然とした態度で生徒に接する。生徒に対しても個人として尊重する態度で接し、意見をきちんと聞き入れたり、大人に対するのと同様に扱おうとすることが多く見られる。

州ごとに教育制度が異なる

オーストラリアは連邦州制度を採用していることから、教育についても各州教育省が、カリキュラム・スタンダード・フレームワークなどと呼ばれる教育の標準規格を作っている。わかりやく言えば州ごとに学習指導要領がある、ということです。しかしながら各州は国が告示する教育方針にそって指導要領を作るので、州ごとに特色はあるものの内容的に大きく違いが出て問題になるほどではない。

制度的な違いでは、例えばクイーンズランド州では1年生~7年生までが小学生だが、他州では1年生~6年生までが小学生であるように多少異なる。

カリキュラムの標準規格

オーストラリアの学習指導要領は、8つの主要学習領域において、準備学年(日本では幼稚園年長に相当する)から10年生(高校1年生)までの決められた各段階で、生徒が何を学習し、どんな能力を身につけているべきかを示している。生徒を成功した学習者へと導くために、カリキュラムと達成度を測る具体的指標を、学校と社会に対して明確に提示している。これを参考に、各学校は政府の政策、地域社会の要求と合わせて、最善の教育プログラムを作り上げる。

特徴

各レベルにおいて以下の3点について明記されている

  1. 学習内容
  2. 学習の結果どのようなことが身についているか ⇒達成目標
  3. 生徒の習得を測るための指標 ⇒達成度を測る具体的指標

8つの教科領域

  1. 芸術(The Arts)
  2. 英語(English)
  3. 保健体育(Health and Physical Education)
  4. 外国語(LOTE=Language Other than English)
  5. 算数(Mathematics)
  6. 理科(Science)
  7. 社会と環境(SOSE=Studies of Society and Environment)
  8. 技術(Technology)

上記とは別に英語を母国語としない生徒のためにはESL(English as a Second Language)の授業もある。 注)各教科の呼び方についても州によって多少異なる部分がある。


学年の考え方

学年については非常に柔軟な考え方をしている。年齢(誕生日)で学年が区別される日本とは違い、オーストラリアでは特に小学校の段階では生徒の能力で学年を決定するという考え方がある。

例えば、 2年生のある児童が算数がどうも不得意だったとすると。2年生終了時期になっても算数の習得が不十分であったため先生と保護者が話し合い、児童にとってどういう対策がベストであるか検討を行う。その結果算数に関しては、もう一度2年生の授業を受ける(つまり算数のみ留年)、というようなことも十分にあり得る。日本では小学生が留年なんてさせられたら大変!と思われるのが一般的な考えであるが、オーストラリアでは捉え方が違い、「もう一度2年生ができるなんてラッキー」、「一度やっているからみんなより分かっていることが多いスタートで、自信を持って算数の授業にのぞめるようになる」とポジティブな考え方である。

学校生活

制服

オーストラリアでは公立、私立を問わずほとんどの学校で制服がある、制服の一部として帽子がある。紫外線が強さが日本の5,6倍と言われるほどで、皮膚への悪影響を最小に防ぐため着用が義務付けられている。

NO HAT, NO PLAY. 帽子を忘れた生徒は校庭など外での授業や遊びが禁止されているルールも存在する。

教室での机の並び方

授業内容にもよるが、多くの場合グループごとに机を寄せて使う。グループで学習することや共同作業をすることが多くあり、机を使わず、生徒がかたまって床に座り先生の話を聞いたりする場面も多く見られる。

学校=多文化社会

オーストラリアの学校は様々な出身国の生徒が集まっている。都市部では4人に1人は家庭では英語以外を母国語としているとも言われている。異なる文化、生活習慣、宗教などを互いに尊重しあう精神を養うことはオーストラリアにとってとても重要なことである。

休み時間・昼休み

1時間の授業時間はたいてい35分~45分くらいである。授業間に休憩時間は無いが、「モーニングティー」などと呼ばれている午前中の10時頃から20分間くらいの休憩がある。生徒は持ってきたおやつを自由に食べることができる。

昼休みは40分~1時間ほどあるが、生徒は基本的に教室の外に出なくてはならない。給食もないので、各自が持ってきたお弁当を外で食べるのが一般的。

授業の合間に休み時間はないので、トイレに行きたくなった場合は先生の許可を得て行くことができる。

時間割

授業時間数は制度として決められていることはなく、こちらも学校の裁量に任せられている。学校により、日本の時間割に似た形式になっているものもあれば、全く異なるタイプのものもある。異なるタイプとしては、特にオーストラリアの小学校ではIntegrated Curriculumと呼ばれる「総合的学習カリキュラム」が取り入れられているため、複数教科統合型の授業が多いことによる。

オーストラリアの「総合的な時間」

オーストラリアでは Integrated Studiesと呼ぶ。教科を、教科ごとの枠組みで学習するのではなく、異なる教科間につながりを持たせて学習により意味を持たせるよう工夫されたカリキュラムで、オーストラリアの小学校では主流となっている。日本の「総合的な学習の時間」の内容・目的と似ている部分も多い。「探求学習(Inquiry Learning)」を基本に、知識・スキルの両方を生徒の能動的な学びによって養う。

参考文献


  人間科学大事典

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