ウィーンのシュタイナー教育

出典: Jinkawiki

2009年8月5日 (水) 23:21 の版; 最新版を表示
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 シュタイナー教育はウィーンでも注目されている教育である。芸術の都であるオーストリアのウィーンでは、美術・音楽を中心とした自由な教育が展開されている。この教育では、絵や音楽、そしてよくからだを動かして学び、点数のつくテストを実施しない。

目次

シュタイナー学校の成立と発展

 ウィーン第23区のマウァーの地にあるシュタイナー学校には、1学年から12学年まで約420名の子どもが学ぶ。このマウァーのシュタイナー学校が、オーストリアで最初につくられたシュタイナー学校である。この学校は、オーストリアにおけるシュタイナー教育の広がりの拠点となった。

 この学校が設立されて以来、リンツ、クラーゲンフルト、グラーツ、ザルツブルク、インスブルックのオーストリア諸都市にシュタイナー学校が次々と創設された。マウァーのシュタイナー学校の近くには、シュタイナー学校教員養成コースとシュタイナー芸術コースの二つの課程を持つ「ゲーテ高等学院」という名の高等教育機関がある。マウァーのシュタイナー学校は、明るい希望に満ちた書状今日を生み出す原動力になった学校であり、今でもシュタイナー教育の発展と拡大の中心的な働きを担っている。

 世界で最初にシュタイナー学校が設立されたのは、1919年である。その年、自由ヴァルドルフ学校の名でドイツのシュツットガルトに創設された。ウィーンでは、それより8年遅れて1927年に創設される。この年にシュタイナー幼稚園も設立される。しかし、カリキュラムによって法律上「学校」と認められず、補助金などの様々な問題にぶち当たったため、そう簡単にシュタイナー学校を創設することができなかった。

戦後のシュタイナー学校の再建

 戦後のウィーンの混乱の中で、シュタイナー学校を再建することは容易なことではなかった。その原因は主に二つである。一つは、戦前のヒトラー政権下での強制的閉鎖によって教師たちのほとんどが国外に移住してしまい、ウィーンにはいなくなり、戦後長い間、教師を確保できなかったことである。もう一つは、自分の子どもにシュタイナー教育を受けさせたいという願いを強く持った親がなかなか多く現れなかったことである。

 再建への第一歩は、「シュタイナー学校協会」の再建で始まる。戦前の中心的な人物であった医師のヴァンチューラ博士がこれを再建した。1950年代に入ってキティ・ヴェンケバッハという婦人が現れ、シュタイナー学校再建の発展に大きな役割を果たした。ヴェンケバッハは、シュタイナー学校協会のメンバーになって以来、学校再建の道を探り活発に活動した。そこで設立されたものが「シュタイナー幼稚園」である。幼稚園の設立から学校へと結びつけることが模索されたのである。

ウィーンのシュタイナー幼稚園

・メルヘンの教育

 ウィーンのシュタイナー幼稚園が極めて大切な教育の一つにしているものは、メルヘンによる教育である。ウィーンでは、人形劇などを見ることによる教育が行なわれている。シュタイナー幼稚園では、月に一回ほど通常の保育時間に人形劇を楽しむ。

 シュタイナー幼稚園ではなぜ保育の時間にメルヘンの人形劇を取り入れ大切にするのだろうか。それは、ここの教師たちがシュタイナーの幼児観に基づいて、幼児期の子どもの本性、とりわけ四歳頃以後の子どものうちで成長する想像力を重視するからである。幼児は、現実に生きながら、現実にはない想像・空想の世界に生きることを心から欲する。これは、幼児が自分の本性に備わる想像力を活動させ、想像の世界で生きたいという根源的な要求を持っていることに由来する。このような幼児の心からの要求に耳を傾け、それに十分にこたえようとする教育活動を行なっているのである。  また、メルヘンの教育には、幼児のにとって重要な「感情」を育むという働きもある。

・リズム遊戯

 リズムに合わせて体を動かしたり、歌を歌ったりして遊ぶ遊戯である。リズム遊戯の特徴は、音楽、言語及び身体運動が一つになっていることにある。その大切な教育的意味としては五つあげることができる。

 第一は、リズム遊戯が幼児に「無上の喜び」を与えるということである。幼児期の土台として必要なことは、幼児の心を明るく生き生きとさせ、心地よい状態にさせることである。

 第二は、リズム遊戯が幼児の身体諸器官の発達によい影響を与えるということである。幼児の脳や肺といった内部諸器官及び手、足をはじめとする外部諸器官は、成人とは違い、いまだ十分に機能する完成した形状になっていはいない。リズム遊戯は、そうした身体諸器官を健全に発達させるうえで大きな力になる。

 第三は、リズム遊戯が身体の諸器官そのもののリズムを強めるということである。幼児の身体諸器官は、リズムへの欲求を持ちリズムで活動しようとしている。しかし、幼児は自分一人でこの欲求を満たすことはできない。教育者という模範者の適切なリズムをまねしてリズミカルに身体を動かさなくてはならない。リズム遊戯はこのような課題に答えるものである。

 第四は、リズム遊戯が言葉の習得及び言語能力、とくに「話す」能力の発達を促すということである。リズム遊戯では、幼児はリズミカルに身体を動かしつつ、言葉を口に出して歌を歌う。この遊戯は、園児を喜んでリズムに合わせて言葉を口に出すことへと向かわせる。これが、言語教育に繋がるのである。

 第五は、リズム遊戯が共同性の芽を育てるということである。園児達が一緒になり輪になって遊ぶことやなどを通して、他人と共同して生きることを体験し学ぶことができる。

参考文献

広瀬俊雄著  『ウィーンの自由な教育 シュタイナー学校と幼稚園』 勁草書房 1994年 子安美知子著 『私とシュタイナー教育 いま「学校」が失ったもの』 学陽書房 1987年


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