食育

出典: Jinkawiki

2010年2月9日 (火) 14:56 の版; 最新版を表示
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目次

食育とは

①生きる上の基本であって、知育、徳育および体育の基盤となるべきもの

②さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること


なぜ食育が必要か

①栄養バランスの崩れ

 我が国の食料消費は、長期的には経済成長に伴う所得の向上等を背景とし、量的に拡大するとともに、食料消費の割合は、主食である米が減少する一方、畜産物、油脂等が増加するなど大きく変化している。  こうした中で、昭和50年代中ごろに、平均的にみて摂取する栄養素(PFC)の熱量バランスがほぼ適切で、主食である米を中心に水産物、畜産物、野菜等多様な副食品から構成されるいわゆる「日本型食生活」が形成された。 しかしながら、近年の食生活を巡っては、量的に飽和状態にある一方、米の消費減少と畜産物、油脂の消費増加が続き、栄養バランスの崩れがみられている。

②食べ残しや食品の廃棄

飽食ともいわれる中で、食べ残しや賞味期限切れなどに伴う廃棄等が食品産業、家庭で発生。これを、国民一人当たり供給熱量と摂取熱量の差として捉えると、その差は拡大傾向にある。 家庭での食べ残し・廃棄について、農林水産省の平成16年度調査によると食品ロス率は4.2%。また、食品廃棄物のうち一般家庭から発生するものは約55%である。 世界には約8億4千万人にのぼる栄養不足人口が存在する中、我が国は世界最大の食料純輸入国である一方で、かなりの食べ残し・廃棄が発生しており、資源の浪費・環境への負荷の増大などが課題となっている。

※供給熱量とは、国民に対して供給される総熱量をいう。 ※摂取熱量とは、国民に実際に摂取された総熱量をいう。 ※供給熱量には、流通段階も含めて破棄された食品や食べ残された食品も含まれているため、供給熱量と摂取熱量の差が食品の廃棄や食べ残しの目安になる。


地域での取組

①香川県綾南町立滝宮小学校の事例

香川県綾南町立滝宮小学校では、年5回、5,6年生を対象に献立、調理等のすべてを子どもだけでする「弁当の日」を設けている。このほか、家庭科では、家庭や地域に古くから伝わる料理を子どもたちが調べ学習を行い、一人一人が調理実習する等の取組を実施するなど「食」を核にした「生きる力」づくりが実践されている。

<滝宮小学校が実施した「弁当の日」の3原則>

ア 献立・食材の購入・調理・弁当箱詰めのすべてを子どもだけでする(弁当作りに必要な基礎的な知識と技術は、1学期をかけて家庭科の授業で教える。子どもの弁当作りを親は手伝わない。)

イ 対象は5・6年生のみ(1~4年生は準備期間と位置づけ、5年生になれば自分で弁当を作ることを当たり前と意識するようにする。)

ウ 施行は10月から、毎月第3金曜日で、年5回。

<「弁当の日」の「成功のポイント」>

ア 保護者側にすれば、「親は手伝わないこと」とはっきりいわれると、親の負担を理由に「弁当の日」に反対しにくい。

イ 対象が、家庭科の授業のある5・6年生のみとなると、発達段階からも無理な話ではない。

ウ 年度始めの4月に説明があって、実施第1回の10月までなら半年の猶予がある。月1回、年5回なら多くない。

②安土町立老蘇小学校・近江八幡八幡小学校・東近江市立愛東南小学校の事例

滋賀県にあるこの3つの小学校は、食育モデル校として、地場産農産物を使った給食を各校5回/年、月1回提供するとともに、その食材にちなんだ食育授業を行った。

・老蘇小学校  白菜、大カブ、ネギ、ナバナ等の食材供給や、白菜ほ場での校外学習、紙芝居や写真で食生活や、食料自給率についての授業等を展開した。特に、ほ場で生の野菜を食べることに、児童たちは大きな感動を覚えた。

・八幡小学校 メロン、ミニトマト、ブロッコリー等の提供や、給食時間にビデオ映像にて、生産者による食材の話をしてもらうなどの授業を行った。食育授業では、ミニトマト農家の栽培の話に聞き入っていた。低学年では、サツマイモのお菓子作りを健康推進員とともに指導した。より体験型の授業として、児童は感激した。

・愛東南小学校 青葱、大根、白菜、ナバナ等の提供や、お昼の校内放送で、その食材の生産者によるメッセージが放送された。栽培の話や、昔の給食の話、愛東の白菜栽培の歴史など、世代差を埋める内容であった。

地産地消

 地産地消という言葉があるが、学校給食こそが地産地消を行う一番良い方法である。  昔の給食当番というのは、白衣を着て給食を配るというものではなく、家から野菜を持ってくるという当番であった。つまり学校給食こそが地産地消であった。  しかし、いつしかパン給食が出てきたことにより、学校給食は地域や風土と隔絶した画一的なものになってしまい、地産地消も失われていった。  だからこそ、今このような食育授業は、地場産の食材を食べると同時にその食材や地域の農業について見聞きすることで、食や郷土の大切さを学ぶことができる重要な役割を担っている。


参考文献

野池元基 著 『食育のススメ 信州の食育と地産地消』 川辺書林2006年1月

森達也 著 『いのちの食べ方』 理論社2004年11月

田中葉子 鈴木正成 村田光範 福岡秀興 室田洋子 著『それでも「好きなものだけ」食べさせますか?』 日本放送出版協会2007年1月

須田勇治 編 『「食育」―その必要性と可能性』 農林統計協会2004年12月

農文協 編 『教育のすすめ方 6つの視点・18のプラン』 農山漁村文化協会2005年9月

M.S


  人間科学大事典

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