感覚論
出典: Jinkawiki
概要
認識の起源、妥当性の根拠を感覚、とくに外的感覚に求める哲学的立場。古代ではキュレネ学派、エピクロス学派がこの立場をとった。近代ではロックがタブラ・ラサ(白紙)説によって、基礎をおき啓蒙主義時代にコンディヤックが体系的に展開してエルベシウスやイデオロジストに継承された。エルベシウスとは、フランスの哲学者で、急進的な唯物論的感覚論者。人間精神すべての活動を、身体的感覚に基づかせるとともに、富の公平な配分を主張し封建的な圧制を拝する政治思想を唱えた。主な著書は『精神論』1758年『人間論』1772年である。また、タブラ・ラサとは、何も書いていない書きもの版、つまり博士と同じ意味で、外界の印象を何も受け取っていない心の状態を表す語である。
キュレネ学派とエピクロス学派
北アフリカのキュレネでアリスティッポスが創唱した古代ギリシア哲学の一派がキュレネ学派である。ソクラテスの「よく生きること」を受け継ぎ、快楽主義的な実践哲学を唱え、エピクロス学派の先駆と考えられている。アリスティッポスの娘アレテ、孫のアリスティッポス、テオドロス、アンニケリス、ヘゲシアスらがこの学派に属する。 エピクロスとはギリシアの哲学者。サモス島生まれ。前307年ころアテナイへ出て学園を開き、のちにその学園はエピクロスの園、その学徒はエピクロス学派と呼ばれることになる。ここで、研究、教育、著述に専念、300巻を著したと伝えるが、断簡を残すのみ。デモクリトスの原子論を引き継ぎ、原子からなる自然界の事物から流出するエイドラeidolaが、同じ原子からなる魂を刺激することで感覚が生じると説いたが、それは同時に死や死後の懲罰の不安の苦しみから人間を解放する倫理論でもある。また、快楽の肯定も、苦を避け「隠れて生きよ」「平静不動」の境地を得るかぎりにおいてであって、後世誤解されたように単純な快楽主義ではない。
快楽主義
ギリシア語ヘドネに由来する英語hedonismなどの訳語。快楽を善と考え、快楽の追求を人間の行為及び道徳の基礎とする考え方。感覚的快を中心に考えるものと精神的快を真の快楽とするもの、快楽に量的な違いのみを認めるものと質的な差を重視するもの、個人的快を善とするものと公衆の幸福(最大多数の最大幸福)を善とするものなどがある。古代にあってはエピクロスが近代ではエルベシウスや、ベンサムとJ.Sミルの功利主義が代表。 功利主義とは、utilitarianismの訳で、19世紀の英国で有力となった倫理学説、政治・社会思想。功利(快を求め、苦を避ける人間の傾向)を価値の原理とみなす。ベンサムは量的な快楽計算を考え、最大多数の最大幸福の原理によって個人の幸福と社会の幸福を調和させようとした。代議制民主主義、経済的自由主義の主張とも結びつき、全ヨーロッパ的な影響力をもった。