自立活動

出典: Jinkawiki

2011年2月3日 (木) 23:39 の版; 最新版を表示
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目次

自立活動とは

特別支援学校には、学校教育法施行令第22条の3に該当する視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由又は病弱の幼児児童生徒、同条に該当する障害を複数併せ有する重複障害の幼児児童生徒が在学している。特別支援学校の教育においては、こうした障害のある幼児児童生徒を対象として、幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校と同様に、学校の教育活動全体を通じて、幼児児童生徒に人間として調和のとれた育成を目指している。小・中学校等の教育は、幼児児童生徒の生活年齢に即して系統的・段階的に進められている。そして、その教育の内容は、幼児児童生徒の発達の段階等に即して選定されたものが配列されており、それらを順に教育することにより人間としての調和のとれた育成が期待されている。


しかし、障害のある幼児児童生徒の場合は、その障害によって、日常生活や学習場面において様々なつまずきや困難が生じることから、小・中学校等の幼児児童生徒と同じように心身の発達の段階等を考慮して教育をするだけでは十分とはいえない。そこで、個々の障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導が必要となる。このため、特別支援学校においては、小・中学校等と同様の各教科等のほかに、特に「自立活動」の領域を設定し、その指導を行うことによって、幼児児童生徒に人間としての調和のとれた育成を目指しているのである。

教育上の位置付け

特別支援学校の目的については、学校教育法第72条で、「特別支援学校は、視覚障害、聴覚障害、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする」ことが明示されている。

前段で示されている「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施す」の「準ずる教育」の部分は、教育課程の観点から考えると、例えば小学校の場合には、各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動の指導に該当するものである。

後段に示されている「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授ける」とは、自立活動の目標に掲げられている「個々の幼児児童生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養う」指導のことであり、「自立活動」の指導を中心として行われるものである。

すなわち、自立活動は、特別支援学校の教育課程において特別に設けられた指導領域である。この自立活動は、授業時間を特設して行う自立活動の時間における指導を中心とし、各教科等の指導においても、自立活動の指導と密接な関連を図って行われなければならない。このように、自立活動は、障害のある幼児児童生徒の教育において、教育課程上重要な位置を占めている。

自立活動の内容

特別支援学校の学習指導要領等に示されている自立活動の「内容」は、個々の幼児児童生徒の障害の状態や発達の程度に応じて選定されるものである。このように自立活動の内容は、個々の幼児児童生徒に、そのすべてを指導すべきものとして示されているものではないということに十分注意する必要がある。

内容の6区分

自立活動の内容には、以下の6区分があり、それぞれの区分で3~5の項目が設けられていて、合計で26項目ある。

  • 健康の保持
  • 心理的な安定
  • 人間関係の形成
  • 環境の把握
  • 身体の動き
  • コミュニケーション

内容の留意点

健康の保持

慢性疾患の幼児児童生徒にとっては自己の病識の理解と生活の自己管理ついて学ぶことなどが重要になってくる。また、肢体不自由部門でも、障害の重度化に伴い、呼吸をはじめ健康面で問題を抱える幼児児童生徒も増えてきており、家庭および医療との連携が重要になってきている。

心理的な安定

幼児児童生徒の成長にとって、心理面、情緒面の安定や発達はとても大切な要素である。対人関係の中で二次的に引き起こされる心の問題を抱えている幼児児童生徒もおり、周囲との関係の中で考えていく必要がある。病弱部門の幼児児童生徒の一部は認知面への配慮をしながら、ストレスマネージメントやソーシャルスキルなども課題として取り上げられる。

人間関係の形成

学習指導要領の改訂により「人間関係の形成」が内容として取り上げられるようになった。病弱部門の特に発達障害の幼児児童生徒にとって、人間関係の形成は重要な課題となる。肢体不自由の幼児児童生徒にとっても、発達段階に応じて配慮しながらの指導が重要である。

環境の把握

肢体不自由部門と病弱部門ともに感覚や認知面の障害や発達の遅れにより環境の把握が課題となる幼児児童生徒もいる。視知覚認知や触覚の異常等は知的発達や手作業などの問題とも関係している。学校生活全般を通じた指導が大切である。

身体の動き

肢体不自由部門においては、自立活動の時間における指導の中心は「身体の動き」になる。 「姿勢保持」「移動動作」「手の使い方」「日常生活動作」など幼児児童生徒の実態に応じた指導を行う。

コミュニケーション

幼児児童生徒の「自立」を考える時、「自己決定」「自己選択」という概念・考え方がキーワードになる。それぞれの「自立」を実現するためには、コミュニケーションの力を育て、自分の意思を伝える方法を確立することが重要である。話し言葉でコミュニケーションをすることが難しい幼児児童生徒にとっては、分かりやすい補助的手段を利用したり、エイド類を利用したりして意思を伝えることも今日的な課題となっている。

<自立活動の指導の充実>

自立活動の指導をより充実させるためには、「個別の指導計画」の適切な作成、自立をめざした主体的な取り組みを促す指導、評価と指導の改善、指導体制と専門性の向上の4項目を重視していく必要がある。

参考文献

西川公司、川間健之介編著『肢体不自由児の教育』放送大学教育振興会 2010

日本肢体不自由教育研究会監修『肢体不自由児教育の基本とその展開』慶応義塾大学出版会 2007

『自立活動』http://shigenobu-ss.esnet.ed.jp/jikatsu/jikatsu.htm


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