水管理委員会
出典: Jinkawiki
水管理委員会(water board)とは、オランダの各地域で組織されている、水の全般に関して管理をする委員会である。 その土地に住んでいる全員が水管理委員と関係し、自治的に地域の水全体を管理する。水管理委員会は水に関する徴税権を持ち、役員メンバーは投票で選ばれる。
オランダの土地はポルダーの集合体である。ポルダーは堤防と水路で囲まれた干拓地だが、この堤防のメンテンナスや水路の水位は重要な管理項目である。泥炭地で排水された水は、水車やポンプでより高い所にある水路に、順次汲み上げられていく。そして、最終的には海につながる場所が一番高い水路となっており、大規模な排水機場があり膨大な水が排出されているのである。 この一連のシステムがうまくいかなければ、土地はすぐに水で溢れてしまうだけに、水管理の仕事と責任は重大と言える。それを、国ではなく地域の委員会が主導しているのである。
水管理委員会の出現
オランダの低地に最初の水管理委員会が出現したのは中世であり、既に存在していた自治会が水管理委員会の出現を促した。自治会は地域住民の関心を喚起するために統治者を抽出し、水管理を彼らの裁量の下に任せたのである。 農民地主には小さな堤防や運河、河道、道路の様な地域的な水管理を行わせた。つまり彼らは、最初の水管理者である。河口堰、測溝、運河等の沿った堤防の建設は全て人馬によって行われたので、巨額の請負金が必要であった。その為、築堤や排水溝の建設は自治会の境界を超えて行われた。これらの建設には、農業地帯での作業が必要であったため、地域的な協力体制の必要性から水管理委員会が生まれたのである。
1850年になると3,500もの水委員会が存在していたが、1950年には合併によってその数は2,500まで滅少した。その後統廃合を繰り返し、2000年には57、さらに2002年には45に集約されている。統合後の水管理委員会は、「連合水管理委員会」「ポルダー委員会」等とも呼ばれている。
しかしこれらの統合にもかかわらず、いくつかの水委員会では12~14世紀の形態を今日でも残している。
水管理委員会の役割
水管理委員会は、以下の役割を担っている。
1,水コントロール・・・堰や運河や砂丘を使って洪水を防御する。 2,水管理・・・水量の総量管理や、適正水位を維持する。あるいは表流水の水質を改善する。 3,内陸部の水路や道路の管理を行う、等。
ただし、飲料水は水管理委員会の範疇外で、水道会社が行なう。水道会社は、オランダの場合全て国営である。また、広域の地下水は自治体が管轄する。 とはいうものの、水は表流水、地下水、川岸、水底と一環した存在だ。従って、統合的な水管理を行なう為には、環境管理、地域計画、自然保全といった総合的な視野で臨むことが要求される。その結果、水管理委員会は市や州や農業者や自然保全組織等と協力していくことになる。つまり、水管理委員会は、水循環に応じた自治政府のような組織なのである。
事業コストは年間2500万ユーロ。これを、農民、住宅保持者、市民全員が負担する。農民ならば土地の大きさにより、1ヘクタール当たり45ユーロ。住宅保持者は家のランクによるが、年間19ユーロ。市民は一人年間16,5ユーロ。 水質保全には年間7500万ユーロかかり、1世帯につき年間120ユーロ。さらに工場もランク別に支払っている。政府からは一切資金を受けずに独立しているのである。
役員は直接選挙で選ばれる。 投票は手紙でも電話でもインターネットでもできる。初めの頃は市民には投票権が無く、農民のみに与えられていた。ところが、都市化が進むにつれて市民にも当事者として投票権が与えられたという経緯がある。その投票権も一人1票ではない。農業に従事し都市に居住した市民である場合は、2票の投票権を持つ。つまり、その人の立場に投票権が割り振られているのである。