メーガン法
出典: Jinkawiki
性犯罪者登録法。すべての州で、子どもに対する性犯罪者の登録と公表を義務付けた州法が制定されているため、同種の法律を、現在は一般に「メーガン法」と呼んでいる。
1994年、ニュージャージー州性犯罪者登録法は、性犯罪者に対し、有罪判決を受けた後、もしくは刑務所から出所してから15年間、犯罪を犯さず、他者の安全に脅威を与える恐れがないと証明できるまで、この登録義務を負わせている。このため、義務は一生に及ぶこともありうる。 さらにニュージャージー州議会は、法律施行後に性犯罪を犯した者だけでなく、法律施行前に性犯罪を犯して有罪判決を受けた者も、120日以内に登録することを求めた。また、保護観察やその他のコミュニティの監視のもとで釈放される者にも登録義務が及ぶ。他州で性犯罪を理由に有罪判決を受けた者が州に移転してきた場合も同様である。 この法律は、性犯罪者に、その氏名、社会保険番号、年齢、人種、性別、生年月日、身長、体重、髪及び目の色、住所、居住、雇用の日時及び場所、有罪判決の年月日及び場所、起訴番号、指紋、登録されている性犯罪の簡単な記述などの登録を求めている。変更があればもちろん届出が必要である。登録者には、登録情報の更新が義務が課される。危険度によって毎年1度で良い場合と、90日ごとに更新が義務付けられている場合がある。登録を怠れば、刑罰が科される。 これを受けて、検察官は、性犯罪者の再犯の危険性を評価し、登録情報の公表のため、低危険度(危険度1)、中危険度(危険度2)、高危険度(危険度3)の3ランクに区分する。 低危険度の性犯罪者については、性犯罪者の所轄の警察にのみ通報される。 中危険度の性犯罪者については所轄の警察に加え、学校、宗教団体や青少年のためのプログラムを実施する団体などの市民団体に情報が提供される。 高危険度の性犯罪者については、警察官が性犯罪者の暮らすコミュニティにその情報を配布する。 提供される情報は、氏名、特徴、写真、住所、雇用ないし通学の場所、自動車の種類とナンバープレートである。この公衆への情報告知こそが、メーガン法の最大の特徴である。
この法律が「メーガン法」と呼ばれるにはある事件が背景にある。 1994年7月29日、メーガン・ニコール・カンカちゃんはニュージャージー州の自宅を出て帰宅しなかった。母親は昼寝から覚めて、娘が帰宅していないことに気付いた。隣近所の住民にも聞いたが、見つからず、警察に届け出た。住民はメーガンちゃんの行方を捜した。 警察が疑いを持ったのは、カンカ家の向かいに住んでいたジミー・ティメンデカスという男性、33歳。その様子が不審で、説明も一貫していなかったため、警察は彼を警察署に連行し、尋問を行った。 娘が居ないことに母親が気付いてから24時間、ティメンデカス容疑者は、メーガンちゃんの遺体のありかを自供した。警察はその自供通り、近くの公園で遺体を発見した。 彼は何も知らないように装って、捜索に加わっていた。 ティメンデカス容疑者には、子犬を見せてあげるといってメーガンちゃんを自宅に誘い込み、レイプして殺害した容疑がもたれていた。メーガンちゃんは、皮のベルトで首を絞められた上、プラスティックバッグで頭を覆われて窒息死していた。 ティメンデカス容疑者は後に、殺人罪や誘拐罪で起訴され、陪審は、有罪の評決を下した。弁護人は裁判に先立って、裁判地の変更を申し立てたが認められなかった。この事件は、大きな社会的関心を呼び、マス・メディアで大きく取り上げられていたからである。 裁判所は最終的に被告人ティメンデカス容疑者に死刑を宣告した。 この事件が大きな社会的関心を呼んだのは、幼い少女が隣近所の住民によって殺害されたからだけではなかった。 実は、ティメンデカス死刑囚は、児童に対する性的虐待で二つの有罪判決を受けていた。しかしもちろん、彼にそのような前科があることはメーガン一家も含め、誰も知らなかった。さらに、彼は二人の男性と同居していたが、その二人とも実は性犯罪者であった。3人は、性犯罪者の収容施設に収容されていたときに知り合い、一緒に暮らすようになったようである。
事件後このことを知って、メーガンちゃんの母親は驚愕した。「もし近所にそんな幼児性愛者が住んでいることを知っていれば、娘はこんなことにはならなかったはずだ」と、彼女は言う。 もしそのことを知っていれば、娘が外出するときにもっと注意したであろうし、その人と接触しないように注意することもできた。ましてやその人の家についていくことなどしないよう、厳しく注意することもできたであろう。だが、今となってはすべて遅い。 この想いが、メーガン法制定の大きな動機となった。