パーキンソン病
出典: Jinkawiki
黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変性疾患である。
症状
(1)安静時振戦(ふるえ)
(2) 筋強剛(筋固縮)(筋肉が強くなって体が固くなる)
(3)無動・寡動(動作が鈍くなって動きが少なくなる)
(4)姿勢反射障害
(5)同時に二つの動作をする能力の低下
(6)自由にリズムを作る能力の低下
近年では運動症状のみならず、精神症状などの非運動症状も注目されている。発症年齢は 50~65 歳に多いが、高齢になるほど発病率が増加する。40 歳以下で発症するものは若年性パーキンソン病と呼ばれる。この中には遺伝子異常が明らかにされた症例も含まれる。10万人あたり150人の割合で発症する。運動症状として、初発症状は振戦が最も多く、次に動作の拙劣さが続く。動作は全般的に遅く拙劣となり、動作自体が少なくなる。しかし、歩いていて急に止まることもできない。どんどん加速してしまうこともある。止まれと指示をしても数歩歩いてからしか止まれない(突進現象)。表情は変化に乏しく(仮面様顔貌)、言葉は単調で低くなり、なにげない自然な動作が減少する。歩行は前傾前屈姿勢で、前後にも横方向にも歩幅が狭く、歩行速度は遅くなる。進行例では、歩行時に足が地面に 張り付いて離れなくなり、いわゆるすくみ足が見られる。方向転換するときや狭い場所を通過するときに障害が目立つ。パーキンソン病では上記の運動症状に加えて、意欲の低下、認知機能障害、幻視、幻覚、妄想などの多彩な非運動症状が認められる。このほか睡眠障害(昼間の過眠、REM睡眠行動異常など)、自律神経障害(便秘、頻尿、発汗異常、起立性低血圧)、嗅覚の低下、痛みやしびれ、浮腫など様々な症状を伴うことが知られるようになり、パーキンソン病は単に錐体外路疾患ではなく、パーキンソン複合病態として認識すべきとの考えが提唱されている。
原因
現段階では不明。しかし、いくつかの仮説は提唱されている。
治療法
病勢の進行そのものを止める治療法は現在までのところ開発されていない。全ての治療は対症療法であるので、症状の程度によって適切な薬物療法や手術療法を選択する。
(1)薬物療法 現在大きく分けて8グループの治療薬が使われている。それぞれに特徴があり、必要に応じて組み合わせて服薬する。パーキンソン病治療の基本薬は L-dopa とドパミンアゴニストである。早期にはどちらも有効であるが、L-dopa による運動合併症が起こりやすい若年者は、ドパミンアゴニストで治療開始すべきである。一方高齢者(一つの目安として 70~75 歳以上)および認知症を合併している患者は、ドパミンアゴニストによって幻覚・妄想が誘発されやすく、運動合併症の発現は若年者ほど多くないので L-dopa で治療開始して良い。症状の出現の程度、治療効果、副作用などに応じて薬剤の選択を考慮する。
(2)手術療法 手術は定位脳手術によって行われる。定位脳手術とは頭蓋骨に固定したフレームと、脳深部の目 評点の位置関係を三次元化して、外から見ることのできない脳深部の目標点に正確に到達する技術である。手術療法も症状を緩和する対症療法であって、病勢の進行そのものを止める治療法ではないが、服薬とは異なり持続的に治療効果を発現させることができる。
(参考文献) 神経内科-頭痛からパーキンソン病まで- 小長谷正明