少子化

出典: Jinkawiki

2016年7月30日 (土) 20:17 の版; 最新版を表示
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目次

少子化とは

全人口に対して年少人口(15歳未満の人口)の比率が低くなることを指す。 現在の日本では年少人口率が13%前後であり、統計によると2055年には9%台まで減少すると言われている。 1人の女性が一生に産む子供の人数を平均化したものが合計出生率というが、第1次ベビーブーム期には合計出生率が4.3を超えていたが、1950(昭和25)年以降急激に低下した。

少子化の現状

日本社会の少子化は、人口学要因はもとより企業中心主義、政策・制度の実態や労働環境、家族の変化などの要素と関連が強いとみられる。これらの変数は、単独でというよりは相互に関連しあって、日本社会の諸相にみられる様々の変化をもたらしたと考える。また、変化の実態が制度・政策・理念などと整合性を保てない状態になってきたことが、結婚・出産意識や行動の変化をもたらしたと言える。したがって、本意での議論は、1つ1つの変数と少子化との関連を個別に分析するのではなく、各変数が相互に関連しあって性役割分業に基づく社会システムが強化され。強固に維持され、そしてそれが晩婚化と少子化の促進に特に影響を及ぼした論理とプロセスを明らかにすることを意図している。

企業中心主義と近代家族の定義

少子化問題の基底には出生率低下という人口減少があるが、これは戦後日本の復興と切り離せない政策努力の結果であった。言い換えると、それは企業中心主義の原理に基づく日本経済発展の中心であった。産児制限のキャンペーンは、農村のみならず企業単位でも全国的に展開された新生活運動の主要な柱であった。日本企業のとった経営家族主義の下で、企業という家のメンバーになった労働者本人のみならずその妻たちも、夫という労働者の労働力再生産のための福利厚生の一環として企業一家に内包され、仕事に専念できる夫のための家庭という環境づくりに専念する。という仕組みが作られた(目黒・柴田/1990)。子供の数を制限して雇う口を減らし、生活の質を向上させることが労働の質を高め、生産効率を高めるという観点からの企業による家族政策は、経済復興から更なる経済成長を実現するための国の政策と合致するものであった。受胎調節に失敗した際の処置として人工妊娠中絶が優勢思想を維持した状態で「合法化」され、妊娠中絶が産児制限の主要な手段となる結果となった。出生力の調整は、女性を中心的なターゲットとした。いわば女性の身体を生殖の道具とする発想に基づいて実施され、女性たちはそのような方針に応え、夫婦の平均子供数2人というレベルは10数年で達成された。 戦後初期の重工業を基幹産業として進められた産業化は、生産の場での労働力の再生産を家庭で行う仕組みとして「夫は稼ぎ手、妻は主婦」というペアで成り立つシステムとして生み出した。企業の忠誠を誓うとことで稼ぎ手の役割の担い手としての地位を保証される夫と、その夫に経済的に依存しつつ夫の労働力を再生産する妻、が中心となる近代家族は、軍国主義下で少年時代を過ごし、戦後復興期には民主主義教育の下で思想的混乱を体験しつつ青年期を迎えた出生コーホートと、それに続く急激な都市化の中でサラリーマンとなったコーホートがその担い手となり、当たり前の家族として定着していった。「夫は稼ぎ手、妻は主婦」という公的領域と私的領域とのジェンダー分業を基盤とする近代家族のもう1つの側面は、恋愛事情に基づいてデートを経て結婚に至る夫婦の情緒性である。情愛と配偶者の自己選択に基づく民主家族という名の下に、それぞれの役割の担い手が性別で固定化されるという仕組みが、都市化や職業構造の変化とともに日本社会の基盤となったのである。 近代家族形成の担い手たちは、民主主義教育による平等主義と産業化によって要請されたジェンダーの役割分業観を、矛盾することのない価値観とする時代の担い手であった。経済成長期の近代家族においては、主流となってきた恋愛結婚をした夫婦は「稼ぎ手」と「主婦」、つまり、家族を養うために働くのは夫=父親、軍事や平均2人となった子どもの育成は妻=母親が責任者として、家庭の中でのジェンダー分業と家庭と仕事のジェンダー分業が固定化した。女性の居場所は家庭であるというシステムの下で、女性が働くのは学校卒業後結婚までの一時期、というのが生き方のモデルであった。働く女性の既婚率や年齢の上昇がみられた1970年代には、主婦の就労は家計補助として社会的に認められるようになったが、その働き方は男性の場合とは異なる主として「非熟練、低賃金」でパートタイムが典型であった。このような働き方をする女性は、企業にとっては便利な調整弁的労働力であり、日本経済に大きく貢献したと言える。また、働く主婦の意識も、主婦としての役割や存在感を脅かすことのない就労を期待する傾向が一般的であったと言える。 晩婚化や出生率低下の傾向がみられ始めた1970年代半ばは、女性雇用者に占める晩婚者の割合が5割を超え、年齢別女性労働力率のM字の後ろの山が高くなるM字型就労パターンが定着し、女性雇用者中の短時間雇用者の割合が急増し始めた時期であった。出産期がやや遅くなり、子育て後はパート的就労をするパターンの始まりであり、近代家族を守りながら主婦として家庭外就労をする女性の生き方が最頻ケースとして表れるようになってきた。この時期に、女性の生き方を問い直すインパクトとなったのは、グローバルな男女平等・発展(開発)・平和への国際的な取り組みである。 1975年を国連婦人(女性)年と定めて以来、4回の世界女性会議や国連特別総会「女性2000年会議」に至る国連を中心とした国際的な女性の地位向上へのアプローチに対して日本政府は賛同し、第1回世界女性会議(1975年)後、総理府に「婦人問題対策室」(現内閣府 「男女共同参画局」)を国の担当機関として設置し、世界行動計画に基づく日本国内行動計画の策定、「女性差別撤廃条約(通称)」批准に基づく国内法の改正や「男女雇用機会均等法(通称)」の制度などの女性政策を展開してきた。このような対応は、女性が社会的に独立した存在であることを制度的に確認したという意味で重要である。この頃から、マスメディアを含め社会一般の視線にも変化の兆しが出てきたが、働く女性の増加や高学歴化とともに少子化の傾向が顕在化し、女性の個人としての存在性と家族の変化(揺らぎ)が注目されるようになったのである。 日本の近代家族とその揺らぎ 出生を抑制し、家庭で労働力を再生産するシステムとしての近代家族がようやく定着してきた頃には、そのシステムを揺るがすような条件が出現してきた。近代家族の出現は、戦前の家制度の原理とは異なる家族理念に基づく家族システムへの移行という意味で、戦後の第1家族変動であった。しかし、このシステムを支える諸条件の変化が、早くも1970年代後半に表れ始めたのである。その変化の中心は女性の職業観や結婚観などに関する意識の多様化と共に進んだ既婚女性の就業の一般化や晩婚化、そしてその結果としてライフコースの変化である。 その意味で、近代家族の揺らぎの分析には、ジェンダーの視点が不可欠となる。女性の生き方や意識の変化と家族の変化が連動しているのは、近代家族の成立を経験した社会には共通にみられる傾向である。そのような変動を分析する枠組みの1つとして、「家族の個人化」仮設(目黒、1991:1992)がある。これは、女性が「稼ぎ手役割の担い手」となることによって「稼ぎ手と主婦」システムとしての近代家族が終焉し、次に出現する新しい家族は、夫と妻の経済力が均等化し「稼ぎ手と主婦」というジェンダー役割が性別で固定されない代替性のある流動的な役割となる状態で自立的な個人が作る親密集団となる、というものである。男女のジェンダー分業の根幹となる近代家族システムと生産システムとの関係が根本的に変革されることがその前提条件となる。 女性の自立を通してのジェンダー役割の変化を促進する要因には、法的・制度的要件や教育の向上・多様化、個人の経済力につながる雇用労働化、文化的(規範)要件などの他に、人口学的要因が挙げられる。日本の場合、女性の自己決定権力をつける条件の1つである経済力を見てみると、例えばパ—トタイム就業者の確実な増加や男女の賃金格差にみられるように、女性が自立した稼ぎ手になりうる性格のものでないことが明らかである。その背景には子育て期には育児に専念し、働く場合はその期間の前後に、というライフサイクル型就労が望ましいという意識の強さ(厚生省 1996)や、雇用慣行、税制、年金制度などにみられるような専業主婦を強制的に保護し奨励する仕組みが存在する。

少子化の問題点

1行政サービスへの影響 税や社会保障に関する負担が増加することによって起こる。 今後は高齢者の割合が高くなることが予想され、それに伴って現世世代の私たちに、税金や年金等の負担が過度にかかる恐れがある。 さらに、限られていた税収で行政サービスを行わなくてはならず、現代のサービスの質が保てなくなる。 特に、高齢者増加の出費から、社会保障関係サービスへの影響が深刻になることが予想される。 2経済への影響 経済の影響は、労働人口の減少によって起こる。 国の生産力を支える15~64歳までの生産年齢人口が減少すると経済活動が低迷し、経済成長が鈍化または停滞する恐れがある。 また、年金減額などによって生活費や医療費が不足する高齢者が増えると、貯金を取り崩すことになる。 銀行などの金融機関に一斉に押しかけることで、充分な資金が不足し、積極的な投資が出来なくなる。 こうして金融関係に悪影響を与える恐れがある。 3社会への影響 家族や地域社会の形態が変化することによって起こる。 少子化が進むと、親の過干渉や過保護が増える一方で、同世代・異世代を含む子供たち同士の交流機会が減少する。 子供は多くの人と出会いながら、自他の存在を認めていくものだが、少子化に伴う交流機会の減少は、こうした社会性の育成を妨げる要因となる。 このように、少子化は様々な面でこれからの日本を支える世代の弱体化を引き起こす恐れのある深刻な問題と言える。

問題点の背景

 少子化の主な原因は、晩婚化や未婚化である。 その背景には、女性の社会進出の影響や若年層の人生設計の困難さである。 女性の社会進出は、高学歴化によって高度で専門的な能力を備えた女性が増えたことが大きな要因である。 一方、「男は仕事、女は家庭」と言った性別的な役割も減ってはいるが依然としてまだある。その結果として男性は長時間労働を行い、子育てを女性に依存する家庭も多い。 つまり、女性に出産・育児の負担が集中することになる。 こうした負担感から、女性が仕事と結婚を迫られた場合仕事を選ぶことが多く、結果的に未婚化や晩婚化につながり、出産できる機械が減少する。 一方、若年層の人生設計の困難さは、不景気やそれに伴う雇用状態の悪化が大きな要因である。 日本のほとんどの企業は新卒採用を主体とした採用を行っているが、昨今の経済状態の悪化の影響で採用自体を控える影響にある。よって非正規雇用で働くことになる。 収入が低くなりがちの非正規雇用者は、子育て費用をはじめとして生活費を確保することが難しくなる。 こうした状態では、将来にわたっての収入の見通しが予測しにくく、人生設計や家族計画が立てづらくなる。 以上のことから、子供を受けることを先送りしたり懸念したりする過程が生まれやすいのである。 つまり、少子化の問題の背景には社会の在り方が大いに関係している。

対応策・改善策

 少子化対策の主なものは、子育てのしやすい環境づくりと若年層への雇用対策である。 子育てのしやすい環境づくりについては、育児休業制度の整備、看護休暇制度の促進、保育所の充実化である。また、女性の出産や育児に対しての過度の負担から、晩婚化や未婚化が生じるという指摘から、男性が子育てに参加しやすい環境を作る必要がある。 例えば、育児休養を取りやすい環境作りの促進やイクメンを増やすプロジェクトの推進等である。 若年層への雇用対策では、非正規社員化が主体となる。具体的には、カウンセリングや職業訓練の実施、新卒採用偏重からの脱却を企業に呼びかけることなどが挙げられる。




参考文献

大学入試小論文の完全ネタ本 神崎史彦 文英堂

少子化とジェンダー分析 目黒依子・西岡八郎編 勁草書房


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