高瀬舟
出典: Jinkawiki
1916年に森鴎外が中央公論に発表した作品。江戸時代の随筆集「翁草」の中の「流人の話」を元に書かれている。 財産の多少と欲望の関係性、及び安楽死をテーマに書かれている。高瀬舟とは徳川時代に罪人を京都から大阪まで護送するための船である。 その高瀬舟を舞台にした小説がこの「高瀬舟」である。
<あらすじ> 弟殺しの罪で高瀬舟に乗せられて島流しにされる喜助は、なぜか晴ればれとしている。護送の役目の同心・羽田庄兵衛はそれを不思議に思い、彼の気持ちを聞いてみる。喜助は、島送りになったら食べさせてもらえる上に鳥目200文を頂戴して有難いと言う。聞いてみると、彼が犯した弟殺しというのは、自殺を図って死にきれず苦しんでいる弟に手を貸し死なせてやったということだった。庄兵衛は、喜助の安心立命の境地に感嘆し、いわゆる”安楽死”の問題に大きな疑問を持つ。
森鴎外は自分の長女を安楽死させようとしたことがる。そのことから助からない命を楽に死なせてやることは医学の立場から見て間違いではないのでは、自分のしようのしたことは間違いではなかったとこの作品で言いたかったのであろう。
この作品の主人公は果たして罪人なのであろうか。近年安楽死や尊厳死が問題になっている中でこの小説のテーマが問われている。