バイリンガル教育3
出典: Jinkawiki
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バイリンガルの分類
バイリンガルは一般的に、2つの言語ができることを指すが、その内容には以下のようなばらつきがある。 (1)聞くことはどちらの言葉もできるが、話すのは1つの言葉 (2)聞く、話すは両方できるが読み書きは1つの言葉 (3)日常会話はどちらの言葉でもこなせるが、考えをまとめて人前で発表するとなると1つの言葉 (4)2つの言葉で会話はできるが、思考するとなるとどちらも不十分 (5)両方使えることは使えるが混ぜないと話せない
・2言語の到達度から見るとバイリンガルは、大きく分けて3つに分類できる。
(1)「バランス・バイリンガル」年齢相応のレベルまで2言語が高度に発達している場合
(2)「ドミナント・バイリンガル」どちらかの言語のみが年齢相応のレベルまで高度に発達しているが、もう1つの言語は明らかに弱いという場合
(3)「ダブル・リミテッド・バイリンガル」どちらの言葉も年齢相応のレベルまで達していない場合
バイリンガルが育つメカニズム(カミンズの4原則)
相乗効果を生む加算的バイリンガリズム
「加算的バイリンガリズム」とは、社会の多数派言語を母語とする子供が、母語の上にもう1つの有用な言語を加えること可能とすることで、反対に、「減算的バイリンガリズム」とは、社会の少数派言語を母語とする子供が大事な母語を失って現地語しか使えなくなってしまうことを指す。 両言語が高度に発達するバイリンガリズムになると、認知力(IQを含む)が高まり母語の読解力がモノリンガル(言語を1つのみ習得している人)よりも高度に発達、思考力の柔軟性、言語分析力に優れる。また、言語そのものについての知識が増え、言語の学び方も体得するので、第3、4言語の習得が早まる。 話し相手の言語能力によって使い分けが必要となるため、相手のことばの力に敏感になり、ことばで人を判断、差別しなくなる。また、1つ以上の言語・文化を知ることによって、自分の言語・文化の特徴がより分析的に理解できるようになり、分析力、思考の柔軟性、想像力・創造力にプラスになる。
言語相互依存の原則
バイリンガルの2言語には共有面があって1つの言語による教科学習を通して習得したものが新しい言語による学習でも役立つという考え方。ルーツである自信・誇り・意欲などの心的態度が安定していれば、知識・学力・思考力が身につき2言語の高度な発達が可能である。一方、ルーツが不安定だとどちらの言語も共倒れという状況になりかねない。バイリンガルの力は2つの言語・文化、2つの社会集団ににまたがって育つので、ルーツが安定しなければ問題が発生する。
会話力・教科学習言語能力
会話面と学習言語面では習得にかかる時間が大きく異なるということ。場面の助けがあって言葉をあまり使わなくても意味が通じるし、高度の認知力が必要とされないサバイバルレベルの会話力(地図を見せて道を聞く、指さしだけで買い物をするなど)つまり、言葉を発さなくても意味が通じる状況の習得には1~2年かかる。 場面の助けはあるが認知力の必要度が高い言語活動(理科の実験、視覚教材をふんだんに活用した教科授業など)の習得には、2~4年かかる。 場面の助けがなく認知力の必要度が高い言語活動で、すべて言葉で伝えなければならない(本を読む、レポートを書く、口頭発表をするなど)状態の習得には、母国で学校経験のある8歳以降に入国した場合は5~7年だが8歳以前に入国した場合(現地生まれを含む)は7~10年かかる。
対人コミュニケーション活動充足の原則
十分な人とのインターアクションが言葉の発達には欠かせないということ。特に2~8歳の子供は人とのやりとりを通して話し言葉を身につけていく。この場合インターアクションの量が2言語の力と密接な関係があり、1つの言語の交流量が多すぎるともう1つの言語の力が目に見えて衰えるので、周囲の大人が積極的に介入しバランスをとる必要がある。質の高い交流とは、ただ聞いているだけというような受け身のインプットだけでなく、活発に会話に参加するアウトプットを含むものである。
参考資料
中島和子(2016)完全改訂版 バイリンガル教育の方法 株式会社アルク 中島和子(2010)マルチバイリンガル教育への招待~言語資源としての外国人・日本人年少者~ 株式会社ひつじ書房