アダム・スミス
出典: Jinkawiki
アダムスミスは、イギリスの古典派経済学者、道徳哲学者である。国が個人の経済活動に干渉しない自由という考え方や、富の源を労働に求めるという考え方をし、経済学の創始者と言われている。主な著書には『諸国民の富(国富論)』、『道徳情操論』があげられる。
スミスの生涯
スミス(1723~90)は、1723年にスコットランドで生まれ、14歳の時にグラスゴー大学に入学する。そこで人間は生まれながらに道徳感情を持つという主張のスコットランド派の倫理学の影響を受けた。その後、今度はオックスフォード大学で学ぶことになるが、そこでは大学に失望し、23歳の時に、スコットランドに戻った。後の1751年28歳の時に、グラスゴー大学の教授となって、十数年間それを続けた。そんな講義の中心は道徳哲学で、1759年にその内容を『道徳情操論』として、世に出版した。ここでの良い評判はヨーロッパに広がることになった。1763年から1766年の三年間までで、スミスはフランス、スイスを旅行し、ヴォルテール、ディドロ、ダランベールなどといったフランスの啓蒙思想家と交流をした。帰国すると10年ほどたって、主著である『諸国民の富(国富論)』を出版した。ここで、個人の自由な経済活動こそが、社会の繁栄をもたらすという考えを表して、資本主義経済の原理を示した。さらに1787年にはグラスゴー大学の総長に選ばれた。
道徳感情について
スミスは、人間は根本的に自分の利益だけを追求する(利己的)ものではあるけど、それと同時に道徳的感情を持つものと考えた。例えば、人は他人の悲しみや辛さなどを自分の悲しみや辛さとして感じることができるというように、他人に立場を変えて共感できる心が存在するということを主張した。
「人間をいかに利己的なものとして想像してみるも、なおあきらかにその本性のうちには、他人の好運について興じ……(米林富男訳 『道徳情操論』 未来社)」
見えざる手
スミスは、各人が個人的な利益だけを追求したとしても、結局は神の「見えざる手」によって経済が自動的に調節されて、社会全体の利益がもたらされるという考え方をした。見えざる手についてもう少し説明すると、スミスは、人の行為の善し悪しの決め手は、利害関係のない第三者(スミスは「公平な観察者」と言っている)の同感が得られるかどうかにあるとした。人は他人の同感を得て、非難をされたくないと考えるので、結局利己的な衝動が強かったとしても、社会的に認められる範囲内で行為をしようとする。つまり自制心というものが働くのである。これが「見えざる手」ということになる。よって経済活動にしても、同じように自制的に行われると考え、個人が自分の利益を求めて活動しても、「見えざる手」に導かれて、自然と社会の秩序が維持されて、さらには社会全体の利益は増進すると考えたのである。
参考文献
現代 政治・経済 改訂版 清水書院
資料 政・経 東学
アプローチ 倫理資料 東京法令
http://www.soka.ac.jp/Library/SCL3/SCL08-3.htm