南極条約

出典: Jinkawiki

2009年1月29日 (木) 20:03 の版; 最新版を表示
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1.南極条約 (1)1957年~58年の「国際地球観測年(IGY)」に南極において実施された国際的科学協力体制を維持、発展させるため、1959年、日、米、英、仏、ソ等12か国は南極条約を採択した。同条約は南緯60度以南の地域に適用されるもので、以下の点を主たる内容としている。

 南極地域の平和的利用(軍事基地の建設、軍事演習の実施等の禁止)(第1条)

 科学的調査の自由と国際協力の促進(第2、3条)

 南極地域における領土権主張の凍結(第4条)

 条約の遵守を確保するための監視員制度の設定(第7条)

南極地域に関する共通の利害関係のある事項について協議し、条約の原則及び目的を助長するための措置を立案する会合の開催(第9条)

(2)南極における領土権問題

 現在、南極地域で実質的な科学的研究活動を行っている国の中には、南極の一部に領土権を主張している7か国(クレイマント:英、ノルウェー、仏、豪、NZ、チリ、アルゼンチン)と領土権を主張しないと同時に他国の主張も否認する国(ノン・クレイマント:米、ロシア、我が国、ベルギー、南ア等)がある。また、ノン・クレイマントの中でも、米、ロは現状では領土権を主張しないが、過去の活動を特別の権益として留保している。南極条約においてはクレイマント、ノンクレイマント双方の立場が認められ、基本的立場の違いはあるものの、対立を表面化させずに共通の関心事項について対処するよう努めている。

(3)我が国は、1960年8月4日に南極条約を批准し、以後、南極条約協議国(Antarctic Treaty Consultative Parties)の一員としての責務を果たしており、同条約発効以前より実施している観測等科学的調査活動は国際的にも高い評価を受けている。

2.南極条約協議国会議及び南極条約体制 (1)南極条約締約国の中でも、南極に基地を設ける等、積極的に科学的調査活動を実施してきている国(28か国)は、南極条約協議国(Antarctic Treaty Consultative Parties)と称され、南極条約に基づき定期的に南極条約協議国会議(Antarctic Treaty Consultative Meeting、以下「協議国会議」という。)を持ち、情報の交換、国際協力の促進等について協議を行っている。

(2)協議国会議ではこれまで200以上の勧告(Recommendations)及び措置(Measures)を採択してきた。これらの多くは南極の環境保護に関するもの、特別保護区域として南極の一定地域を保護するもの、又は南極観測に関する技術的な事柄を定めたものの他、南極条約事務局の設置、南極観光規制措置等に関わるものである。さらに、特定問題に関し特別会合を開催し、「南極の海洋生物資源の保存に関する条約(CCAMLAR: Convention on the Conservation of Antarctic Marine Living Resources)」、「南極あざらし保存条約(CCAS: Convention for the Conservation of Antarctic Seals)」、「環境保護に関する南極条約議定書」等の条約を採択してきている。これら、南極条約の下で採択された勧告・措置及び条約を総称して「南極条約体制(Antarctic Treaty System)」という。

(3)協議国会議は協議国が持ち回りで主催しており、我が国もこれまで第6回(東京)及び第18回(京都)会合を開催している。2008年はウクライナで第31回会合が開催された。

3.近年の南極条約協議国会議における主な論点 (1)南極条約50周年

 南極条約は2009年に採択50周年を迎える。条約50周年を記念する第32回会合は「平和と科学の50年」を基本テーマとして2009年4月に米で開催される予定である。

(2)観光問題

 近年、南極への観光客数は上昇しており(1990年代後半までは6,000~7,000人、2007~2008年シーズンでは30,000人台を超えている)、1)観光が南極環境に与える影響、2)南極地域における適切な観光の管理、3)南極における観測活動等への障害等の観点から、より厳しい規制をかけるべきとの主張がある。

(3)バイオロジカル・プロスペクティング

 南極におけるバイオロジカル・プロスペクティング(生物探査活動)の現状や法的諸問題について議論が行われている。その現状をどのように把握し、対処していくかという問題につき、南極条約体制として検討を進めていく必要があるとの認識が高まっている。

4.南極条約締約国一覧(2008年12月、47か国) (1)南極条約協議国(28か国)

 アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、チリ、中国、エクアドル、フィンランド、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ペルー、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカ、ウルグアイ、ウクライナ

(2)その他の締約国(19か国)

 オーストリア、カナダ、コロンビア、キューバ、チェコ、デンマーク、エストニア、ギリシア、グアテマラ、ハンガリー、北朝鮮、パプアニューギニア、モナコ、ルーマニア、スロバキア、スイス、トルコ、ベネズエラ、ベラルーシ


参考文献 地理用語の基礎知識 古今書院       フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)


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