北大西洋条約機構
出典: Jinkawiki
North Atlantic Treaty Organization 略称ナトー(NATO),1949年4月4日,ワシントンで,ベルギー・カナダ・デンマーク・フランス・アイスランド・イタリア・ルクセンブルク・オランダ・ノルウェー・ポルトガル・イギリス・アメリカの12カ国が署名し,同年8月24日に発効した北大西洋条約にもとづいて設立された防衛機構の総称。その後1952年2月にギリシアとトルコ,1955年5月に西ドイツが加わり,現在の加盟国は15カ国。条約は前文と本文14カ条から成り立っているが,主要目的は,5条に〈ヨーロッパまたは北アメリカの加盟国に対する武力攻撃を全加盟国に対する攻撃とみなし,各加盟国は国連憲章第51条によって認められている個別的または集団的自衛権にもとづき,兵力の使用を含めた必要な援助を行う〉と規定されており,地域的安全保障機構のモデルとみなされている。
成立 アメリカ-ソ連対立は第二次世界大戦終結前後から顕在化していたが,戦後アメリカは冷戦に対応し,1947年6月,マーシャル=プランを発表してヨーロッパの共産化に対抗するため,大規模な経済援助に乗り出した。さらに,アメリカはソ連の脅威に対し,軍事的にも西ヨーロッパの結束をはかる必要を感じ,1948年6月11日,上院は「バンデンバーグ決議」を採択した。1948年2月,チェコスロヴァキアで共産勢力のクーデタが発生,この脅威に直面したイギリス・フランス・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの5カ国が同年3月,のちに西欧同盟WEU(Western European Union)と呼ばれるブリュッセル条約を締結したが,西ヨーロッパ諸国だけでは限界があった。そこで,1948年6月のベルリン封鎖を契機として,これにアメリカ・カナダおよび西ヨーロッパの他の周辺諸国が加入する形で成立したのがNATOであり,バンデンバーグ決議具体化の最初の成果であった。
機構 最高機関は加盟国の外相・国防相・蔵相クラスの閣僚代表で構成する理事会で,原則として年2回招集される。補助機関として1952年から各国大使で構成する常設理事会が設置され,本部と事務局はブリュッセルにある。最も重要な軍事協力機構として常設理事会のもとに,加盟国の参謀総長またはその代理で構成される軍事委員会が,さらにその下の欧州連合軍最高司令部SHAPE(Supreme Headquarters Allied Powers in Europe)の指揮のもとに,北欧軍・南欧軍・中欧軍・地中海軍・大西洋地域軍に分かれて管轄されるNATO軍が位置づけられる。条約の期限は20年で,経過後自動延長されたが,創設後35年の経過のなかで,1966年のフランスのNATOからの兵力引き揚げを始め,種々の動揺があった。今後ともこの機構のもとで大西洋を媒介とする西ヨーロッパ諸国とアメリカやカナダが,変動する国際環境に適切に対応し結束を維持しつづけることができるかが注目されている。