ノンフォーマル教育

出典: Jinkawiki

2009年1月30日 (金) 03:19 の版; 最新版を表示
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ノンフォーマル教育とは、学校教育(フォーマルエデュケーション)の枠組みの外で、特定の集団に対して一定の様式の学習を用意する、組織化され、体系化された(この点でインフォーマルエデュケーションと区別される)教育活動を指す。

ノンフォーマル教育という語が注目されたのはP.H.クームスによる“World Educational Crisis”(1968年)においてであった。クームスは、いかなる場所で、いかなる方法で学ばれるか、またそれが学校教育のなかに見いだされるか否かにかかわらず、教育を学習と同義ととらえるとしたうえで、教育をフォーマル、ノンフォーマル、インフォーマルの3つの様式に分類した。
ノンフォーマルエデュケーション自体は1960年代に出現したものではなく、この形態の教育はむしろ学校教育よりも歴史は古い。現代においてこの語が持つ意味は、教育=学校という考えが一般的となっている状態で、学校教育の限界性を認識し、学校以外の組織的教育の重要性を指摘していることである。ただし、1960年代には、学校教育が十分に普及していなかったアジア、アフリカ、ラテン・アメリカ諸国で、農村開発に貢献するための、あるいは貧困層の基本的要求に対応する教育戦略として構想された。


概要

ノンフォーマル教育(NFE)とは「正規の学校教育以外に、ある目的をもって組織された教育活動」のことである。普通、対象となるのは現在学校教育を受けていない、または、過去に(十分な質の)教育が受けられなかった人々で、成人も子供も対象となる。NFE の最大の特徴は、その「教育・学習」内容・規模・対象者・実施方法などが多種多様であること。例えば教育内容には識字から職業訓練まであり、学習・教育方法もコミュニティの識字クラスから通信教育までとさまざまな領域にわたる。また、修了後の付与資格や実施機関等も一様ではない。それでも、大多数のNFE は基礎教育の核である識字能力(Literacy)と計算能力(Numeracy)の獲得と、実生活に根ざした、より実践的かつ有益なライフ・スキル(生活に必要な技能)の修得を中心に据えている。途上国の子どもを対象にしたNFE 活動の多くには、学校教育による基礎教育の普及を補完するという目的がある。一方、成人を対象にしたものでは、識字教育をはじめ、社会生活に必要な意志決定、問題解決、批判的思考、効果的なコミュニケーション等の能力、さらには簡単な職業訓練や衛生教育・環境教育・HIV/AIDS 教育など生活に必要なさまざまな知識や技術(ライフ・スキル)を伝えるために実施されている。さらには、学習内容に人権・平等・自由と責任・寛容と連帯といった概念の把握、民主化の方法論、住民参加の手法等の習得も含まれることがある。このようにNFE は教育分野のみならず、保健や環境など地域社会全体の開発課題に大きく貢献すると同時に、何らかの事情により就学断念や中退を余儀なくされた人々に基本的人権としての基礎教育の機会を提供するという重要な役割を担っているのである。


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